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 新・臓器移植法の改正点
 「脳死は人の死」とする改正臓器移植法が13日、成立した。海外渡航に頼っていた小児の心臓移植に道が開け、臓器提供が増えるとの期待の一方で、負担が増える小児医療や救急医療の体制整備の道筋はついていない。脳死判定による「患者の切り捨て」を懸念する声も強い。

 今回の改正点は2つ。1つは現行法では、臓器提供にはドナーカードによる意思表示が必要であったが、今回の改正では、本人の同意がなくても、家族の同意があれば臓器提供できることになった。

 また、現行法ではこれまで、15最未満の子供の臓器提供は禁止されていたが、改正後は年齢制限はなく、生まれて間もない乳幼児も臓器提供が可能になった。ただし生後12週〜6歳未満の子の場合、第1回法的脳死判定から、最低24時間あけて第2回法的脳死判定を行うことになった。その後、コーディネーターにより臓器提供を受ける患者への連絡、家族へ最終の意思確認後、臓器摘出となる。

 「脳死」は人の死?
 今回の改正のポイントは、医師により「脳死」と判定されれば、家族の同意で臓器移植が可能になったこと。つまり、生きている人から臓器は取れないので、法律上は「脳死」を人の「死」と認めたことになるのだ。

 これには当然、反対の意見を持つ人達も多い。例えば植物状態で寝たきりの患者を持つ家庭では、家族を「死人」とは認めたくないであろう。医師の間でも意見が分かれている。脳死とされた人でも、体の一部分が動いていたり、温かかったりする。「あいまいな判定で、生きることを断念させられることは絶対にあってはいけない」と話す医師もいる。 

 改正賛成意見
 「心臓病の子どもを守る京都父母の会」の杉本寿一会長(53)は「衆院での可決から一カ月間、本当に長く感じた。衆院解散とならないよう、ずっと祈っていた」と法成立を喜んだ。「これからが本当のスタート。15歳未満の臓器提供が本当に進むのかはまだ分からない。子どもの命を救うために臓器提供の年齢制限の撤廃が不可欠であることを広く社会に認知してもらうことが大切だ」と話した。

 京都大医学部付属病院(京都市左京区)は今月、改正法の下での脳死判定や増加が見込まれる脳死移植手術への対応を検討する「移植医療体制委員会」を立ち上げた。上本伸二教授(肝胆膵(すい)・移植外科)は「臓器提供は家族の判断に委ねたいという人の善意を生かす道ができた。移植を待ち続ける患者が希望を持てるようになる」と期待した。

「本人や家族の意志を確認し、尊重することがますます重要。子どもの脳死判定は、虐待の有無も含め慎重な判断が求められる。法が施行される1年後までに病院の体制整備と医師の教育をきちんと行いたい」と気を引き締める。

 改正反対意見
 一方、「頭部外傷や病気による後遺症をもつ若者と家族の会」京都府支部の牧圭子支部長(61)は「脳死判定と臓器提供を義務付けるような風潮になるのが怖い」と危ぶむ。「子どもをはじめとする脳死判定については、医師の間でも意見が分かれている。脳死とされた人でも、体の一部分が動いていたり、温かかったりする。あいまいな判定で、大きな病気やけがを乗り越えて生きることを断念させられることは絶対にあってはいけない」と話した。 

 1984年、愛知県豊橋市のタクシー運転手、吉川隆三さん(60)は、長男忠孝君が急病で脳死状態となり、心停止後に腎臓を提供した。「他人の体を借りてでも息子を生かしたい」との親心からだったが、「これで良かったのか」と悩む日々が何年も続いている。

 吉川さんは臓器提供者(ドナー)の家族同士が思いを分かち合う集いを呼びかけ、「日本ドナー家族クラブ」の2000年発足に尽力。家族の心の痛みをケアし支える「ドナー・コーディネーター」の公的組織の設立を訴えてきた。国会審議にも注目してきたが、改正法には期待したドナー家族への配慮は何も盛り込まれなかったという。

参考HP 毎日新聞・朝日新聞 

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