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 不公平な日本型糖尿病
 日本人は欧米人に比べて、それほど肥満体の人は多くない。それにもかかわらず、日本では欧米に比べて、糖尿病が激増している。どうしてこのような不公平なことが起きているのだろうか?

 

 これは日本人の遺伝的性質、つまり飢餓に強い遺伝的素因に起因していると思われている。日本人の場合は、食べたものを出来るだけ脂肪として、蓄積する遺伝子が発達している。また、長年粗食に耐えてきたことによって、肥満に対する耐性が無いにもかかわらず、食事が欧米化して、カロリーが高くなったが、血糖値を下げるインシュリンの量が欧米人と比較して日本人は少ない...などが理由としてあげられている。

 メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)
 この結果、日本人はすぐに内臓脂肪をためやすい体質になった。内臓脂肪が増加すると、腹部がふくらみ、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、脳疾患など、さまざまな病気を引き起こす要因になる。これが「メタボリック症候群」である。

 メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)は、女性よりも男性に多く、中高年や高齢者に多いというデータが出ている。運動不足、カロリーの取りすぎなどが原因で、生活習慣を見直さなければ重大な病気にもなりかねない。だが、内臓脂肪は皮下脂肪と異なり減らしやすいので、心がけひとつでメタボリックシンドロームを解消することが可能である。

 それでは、内臓脂肪はどのようにしてたまっていくのだろうか?

 脂肪細胞の肥大化と増加
 内臓脂肪がたまる原因として、脂肪細胞の増加がある。摂取したエネルギーのうち余った分を中性脂肪として蓄積する働きがある脂肪細胞。通常、脂肪細胞には、0.5〜0.9マイクログラムの脂肪が含まれているのが、経度の肥満になると個々の脂肪細胞の脂肪含有量が増加し、細胞が肥大化する。

 脂肪細胞脂肪細胞の大きさには限界があり、不規則が生活習慣や食事が原因で、その限界を超えると脂肪細胞が増加し、エネルギーを蓄積していく。脂肪細胞の数は通常300億個とされているが、過剰のエネルギー摂取や運動不足によって、脂肪細胞の数は増え、肥満者では、600億個にも増加することが分かっている。

 細胞が肥大化しているだけなら、エネルギーの摂取を制限することで細胞の大きさは元にもどり、やせられる。しかし、一旦脂肪細胞の数が増えると、やせにくくなる。内臓脂肪が増える前に、生活や食事を見直すことが必要である。

 免疫細胞とメタボリック症候群
 今回、東京大の真鍋一郎特任准教授と西村智特任助教ら循環器内科のグループは、この脂肪細胞がつくり出す内臓脂肪に、免疫細胞が集まることで炎症状態を起こし、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、脳疾患などの原因である「メタボリック症候群」を引き起こすことを発見、免疫細胞とメタボリック症候群が直接関係することを明らかにした。

 研究グループは、蛍光色素を注射して内臓の脂肪組織の細胞をそのまま観察できる方法を開発、高脂肪のエサを与えたマウスの内臓の状態を調べた。 すると、マウスが太って脂肪細胞が大きくなるにつれ、病原体を攻撃する「CD8T細胞」というリンパ球の一種が出現し、さらに各種の免疫細胞が集まり、炎症状態になっていることが確認できた。

 メタボの原因はアレルギー反応?
 免疫細胞「CD8T細胞」を働かなくしたり、なくしたりしたマウスでは、高脂肪のエサを与えても、内臓脂肪に免疫細胞が集まる炎症の状態は起こらなかった。さらに、CD8T細胞がないマウスに、この細胞を入れると、脂肪組織に炎症が起きた。

 また、脂肪組織の炎症が起きているマウスに、この細胞への抗体を与えると、インスリンが効きやすくなり、血糖値が下がった。

 肥満した人の脂肪組織でも同じようなことが起きているのかはまだ不明だが、グループの永井良三・東京大教授(循環器内科)は「CD8T細胞を抑える薬などでメタボリック症候群による生活習慣病を治療できる可能性が出てきた」としている。(asahi.com 2009年7月27日)

 免疫細胞は体を守るためにあるから、確かに体に不要な内臓脂肪を攻撃することは理にかなっているが、そのために炎症を起こすのではたまらない。そういえば花粉症などの「アレルギー」も免疫細胞のはたらきが炎症を起こすという。内臓脂肪という物質によるアレルギー?それがメタボリック症候群なのかもしれない。

参考HP Wikipedia「メタボリック症候群」「脂肪細胞」・朝日新聞・星薬科大学・岡山大学医学部 

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