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 熱水噴出口とは何か?
 熱水噴出孔は地熱で熱せられた水が噴出する割れ目である。熱水噴出孔がよく見られる場所は、火山活動が活発なところ、発散的プレート境界、海盆、ホットスポットである。

 熱水噴出孔は地球ではふんだんにみられるが、その理由は地質学的活動が活発であることと、表面に水が大量にあることである。陸上にある熱水噴出孔には温泉・噴気孔・間欠泉があるが、これらには地下に含まれる有用な鉱物が溶けており、スカンジウムなどの希少価値の高い金属を温泉から取り出す技術はすでに実用段階にある。

 深海の熱水噴出口
 深海によく見られる熱水噴出孔は、光もなく高温高圧の世界でありながら、生物活動が活発で、噴出する液体中に溶解した各種の化学物質を目当てにした複雑な生物社会が成立していることがわかっている。有機物合成をする古細菌類が食物連鎖の最底辺を支え、そのほかにジャイアントチューブワーム・二枚貝・エビ・カニなどがみられる。

 2005年にはある鉱物資源調査会社が、ケルマディック島弧で3万5,000km2の調査を許可され、熱水噴出孔により形成された鉛・亜鉛・銅の硫化物の新しい鉱脈たりうる海底硫黄鉱床を探査した。2007年4月には中米コスタリカ沖合の太平洋における新しい熱水噴出孔海域の発見が発表された。

 これら深海の熱水鉱床には、比較的融点が低い、金、銀、鉛、水銀など工業的に有用な金属が取り込まれていることが多く、貴重な鉱物資源として、鉱山開発が進められてきた。ただ問題は1,000mを越える深海に誰がどうやって取りに行くかという問題があった。

 海水に溶けた稀少金属とは?
 四方を海に囲まれた日本、熱水鉱床まで行かなくても、濃度は薄くなるが、海水にはウランやチタン、バナジウムなど有用希少金属を含め七十七の元素が溶け込んでいる。この海水からこれらの希少な物質を取り出そうという研究も進んでいる。

 ウランは、海水1t中に3.3mg。全世界の海水には鉱山ウランの推定可採埋蔵量の1,000倍、約45億トンが溶存するとされる。黒潮で日本に運ばれるウランは年間520万トンあると推定され、0.2%程度回収するだけで国内原発の年間需要量約8000tをまかなえる。

 1960年代には海水からウランを取り出す研究が、英国で始まった。当時は、海水をポンプでくみ上げ、ウランを捕集する方法だったため、ポンプ動力の電気代や設備費が膨大。日本でも試みたが、コスト高で実用化できなかった。

 海水から宝は取り出せるか?
 1980年代に入り、開発されたのが「放射線グラフト重合法」。日本原子力研究開発機構の高崎量子応用研究所(群馬県高崎市)が研究を続けている。

 「アミドキシムという吸着基を使う技術です。これが人間の手のようにウランをつかまえてくれる」。同研究所金属捕集・生分解性高分子研究グループ研究副主幹の瀬古典明さんはそう説明する。

 ポリエチレン製のフェルト状の生地に放射線を当てると、そのエネルギーで今まで結合していたC(炭素)とH(水素)が切れる。切れたところは、さまざまな新たな機能を接ぎ木のように付けることができるので、そこに化学薬品を注ぐと、ウランをつかまえる機能(アミドキシム基)が付き、吸着材が出来上がる。

 「グラフトは『接ぎ木』の意味。植木屋さんが丈夫な原木に接ぎ木し、美しい花が咲く木にするように、電気特性のいい材料に放射線を当て、科学的に接ぎ木することでさまざまな機能を持った材料にする」(瀬古さん)

 吸着材に付いたウランは、硝酸溶液などで溶かし出して精製する。

 問題はコスト
 実用化の最大のハードルはコストだ。吸着材を布状にした捕集材を青森県むつ市の関根浜沖合で、モール状にした捕集材を沖縄県恩納村沖合でそれぞれ使って、性能評価試験をした。

 青森では、8m四方のフレームを組み、中に材料の寝床(吸着床)を作って捕集材を設置。沖縄はいかりを付けた長さ六十メートルの捕集材を沈め、コンブのように立ち上げてウランを捕集した。その結果、温暖な沖縄の海の方が捕集効率がよく、コストも抑えられることが分かった。

 このため、沖縄で年間1,200tのウランを捕集した場合のコストを試算。捕集材1kg当たりのウラン回収量は四グラム、捕集材を8回繰り返し利用すると、1kg当たり3,2000円になった。

 ウラン価格は1kg当たり約13,000円、3倍弱の開きがある。1,200tのウランを採るにはモール捕集材をいっぺんに187万本沈めることになり、コストだけでなく広い海域も必要になる。

 だが、瀬古さんは「研究開発を進め、捕集材の改良で4gの回収量を10gにし、60回ぐらい繰り返し使えるようにすればコストを下げることは可能」と話す。バナジウムなど他の資源金属も捕集できるようにすれば、さらにコストダウンにつながるという。(2008.10.8 産経ニュース)

参考HP Wikipedia「熱水噴出口」・アイラブサイエンス「温泉は鉱山だ」 

熱水の地球化学 (ポピュラー・サイエンス)
松葉谷 治
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