十種雲形「類」

 世界気象機関は、雲を10の基本形に分類している。これを十種雲形(十種雲級)と呼ぶ。雲には多くの俗称があるが、混乱を避けるために、学術分野では「呼称」が統一されているのである。さて、雲の基本の10種類とは何だろうか?

 そう、巻雲、巻層雲、巻積雲、高積雲、高層雲、層雲、層積雲、乱層雲、積雲、積乱雲である。このうち縦方向に発達する雲が積雲、積乱雲で「対流雲」という。あとはすべて、横に広がりながら発達する雲で「層状雲」という。

 特殊な雲

 実際はこれ以外にもできる特殊な雲もある。例えばどんな雲だろう?そう、飛行機雲も水滴(氷晶)でできている雲である。飛行機雲も立派な雲で、2001年9月11日、アメリカは同時多発テロの直後、飛行機の運航を全面停止した。そのときには太陽光をさえぎる、飛行機雲がなかったために気温が1℃上昇したという。

 その他には中間圏にできる夜光雲、成層圏にできる真珠雲、地震の時に現れる地震雲など、まだ原因のよくわかっていない雲も存在する。

 雲形

 雲は自由に形を変えるので、一見すると、基本の10種のうちどれにあてはまるのかわからない雲も多い。例えば笠雲やレンズ雲、うろこ雲、ちぎれ雲などは、雲の形に名前がついたものであるが、必ず基本の10種類に分類されるはずだ。

 このような、雲をその形状により分類したものを雲形(雲級)という。

 世界気象機関発行の「国際雲図帳」では、十種雲形(十種雲級)を「類」とし、それぞれ形の特徴や、雲塊の組成などから「種」に分類する。また、雲塊の配列、雲の透明度による細分類は「変種」と呼ばれる。さらに、部分的な特徴や、付随する雲がある場合には「副変種」として記される。

 
 雲形「種」の分類

 ここでは雲形の「種」に着目して、分類してみる。

 毛状雲:毛状雲(fibratus、略号fib.) は、細い筋状の雲の中で、先端がまっすぐなものをいう。巻雲、巻層雲に現れる。

 鉤状雲:鉤状雲(uncinus、略号unc.) は、細い筋状の雲の中で、先端が釣り針状に曲がっているものをいう。巻雲に現れる。

 房状雲:房状雲(floccus、略号flo.) は、巻雲・巻積雲・高積雲に現れる種で、巻雲では雲の先が丸くなっているもの、巻積雲・高積雲では雲片が丸いものをいう。

 濃密雲:濃密雲(spissatus、略号spi.) は、厚く濃密な巻雲のこと。

 塔状雲:塔状雲(castellanus、略号cas.) は、上方へ塔のように伸びた雲をいう。巻雲、巻積雲、高積雲、層積雲に現れる。上昇気流が生じていることを示す雲種で、雨の前触れであることが多い。

 層状雲:層状雲(stratiformis、略号str.) は、空の大部分を層状に覆う雲をいう。巻積雲、高積雲、層積雲に現れる。

 レンズ雲:レンズ雲 (左上の雲)レンズ雲(lenticularis、略号len.) は、輪郭がレンズ型にはっきりしている雲をいう。巻積雲、層積雲に現れる。山の近くや風の影響でできる雲で、風が吹きはじめる前兆であることも多い。シェイクスピアは「定まらないような雲、それは風に吹かれ飛雲増大する」と評している。

 霧状雲:霧状雲(nebulosus、略号neb.) は、霧のようにかすんでいて輪郭の定まらない雲をいう。巻層雲、層雲に現れる。

 断片雲:断片雲(fractus、略号fra.) は、積雲・層雲がちぎれてできた切れ端をいう。 ひつじ雲などと呼ばれる。

 扁平雲・並雲・雄大雲:入道雲積雲はその発達具合により名前がつけられている。扁平雲(humilis、略号hum.) は、まだ発達しておらず雲頂の平らなもの、並雲(mediocris、略号med.) は通常の積雲、雄大雲(congestus、略号con.) は、雲頂が大きく盛り上がったいわゆる「入道雲」をいう。

 無毛雲・多毛雲:積乱雲もまた発達の度合いにより分類される。雲頂が毛羽立っていないものを無毛雲(calvus、略号cal.)、発達して雲頂から毛状の雲が広がるものを多毛雲(capilatus、略号cap.)という。

 雲形「変種」「副変種」の分類  さらに、雲形の「変種」や「副変種」の分類には次のようなものがある。

 「変種」
 雲塊の配列による分: もつれ雲(in.) 、肋骨雲(ve.)、 放射状雲(ra.)は、二重雲(du.)、波状雲(un.)、蜂の巣状雲(la.) 

 雲の透明度による分類:半透明雲(tr.)、不透明雲(op.)、 隙間雲(pe.)

 「副変種」
 部分的に特徴のある雲:
かなとこ雲(inc.)、アーチ雲(arc.)、乳房雲(mam.)、尾流雲(vir.)、漏斗雲(tuv.) 

 付随して現れる雲:ちぎれ雲(pan.)、頭巾雲・ベール雲(pil.)
 

参考HP Wikipedia「雲形」・石川県教育センター「雲の種と変種 

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