「力」と名のつくもの

 力と名のつくものにはどんなものがあるか列挙してみよう。

 重力、浮力、摩擦力、体力、知力、行動力、筋力、抵抗力、腕力、脚力、判断力、忍耐力、気力、火力、水力、風力、原子力、磁力、電気力、感化力、説得力、鈍感力、胆力、想像力、活力、推進力、電気の力、弾性力、統率力、引力、反発力、圧力...思いつくままあげてみた。ずいぶんあるものである。

 これらの力、どれにも共通している性質は何だろうか?

 それは、どれも直接見ることができないものである。何かの現象を見ることによって間接的にはじめて気づく。例えば、水に何かが浮くことでもって、浮力に気がつく。

 ヒトが運動する姿を見て、筋力、脚力、腕力などに気がつくし、ヒトが努力してする行為を見て、説得力、気力、統率力、判断力、忍耐力などに気がつく。

 こうしてみると、力という言葉自体に別の意味での「力」を感じる。

 科学でいう「力」とは?

 さて、科学で扱う力では「筋力」などのように生物の力もあるが、火力、水力、風力、原子力などの「エネルギー」に関する力と、重力、電磁気力、摩擦力など、物理で扱う「物」に関する力が多いようだ。

 ここでは「物」に関する力を分析していく。物と物にはたらく力にはどんなものがあるか?

 ここではじめて、重力、摩擦力、弾性力、磁石の力、電気の力など、おなじみの言葉が出てくる。その他には圧力、浮力などもある。

 それぞれ説明できるだろうか?

 重力は地球と物体や、物体と物体の間にはたらく引きつけあう力である。
 摩擦力は、物と物が接しているときにはたらく、運動を妨げる力である。
 弾性力は、物が変形したときに、もとに戻ろうとする力である。
 磁力は、磁石が鉄を引き寄せる力、そして、N極とS極が引き合う力、同極で反発する力である。
 電気の力は、+の電気と−の電気が引き合う力、同極で反発する力である。

 圧力は、物体の表面 1cm2の面を押す力のこと。
 浮力は液体中に入った物体が、その押しのけた液体の体積に、はたらく重力の大きさだけ受ける、上向きの力のことである。

 物理学でいう「4つの力」とは?
 この中で、弾性力や摩擦力、圧力、浮力は、外から重力など別の力が加わることによって生じる、特殊な力と言える。例えばゴムやばねは、外から力を加えることで生じる反発力である。また、自動車は、タイヤと地面の間に重力がはたらくから、接触面ができ、摩擦力が生じるのである。

 こうしてみると、「物」自体が本来持っている力となると「重力」や「電気の力」、「磁力」の3つに限られてくる。そしてさらに、素粒子の世界まで、拡大して見ていくと、「強い力」というものと「弱い力」というものが存在することがわかった。

 ところで、1868年にジェームズ・クラーク・マクスウェルは「電気の力」と「磁力」は別の物でなく、関連した「電磁気力」として統一した理論を発表している。

 現在、自然界の「物」自体が持っている、基本的な力というと「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4つの力にまとめられる。

 統一理論(統一場理論)
 一見別ものに見える、4つの力を、現在の最新物理学では、最終的にはすべて統一しようと試みている。この全ての力を統一した理論のことを「万物の理論」と呼ぶ。現在「万物の理論」候補は、「超弦理論」のみであると考えられている。

 自然物理学の歴史は力の統一の歴史といってもよい。アイザック・ニュートンは天体の力と地上の力を万有引力として統一した。つまり天体の重力も地上の重力も同様なニュートンポテンシャルをもつ運動方程式で表せる。

 ジェームズ・クラーク・マクスウェルは電気力と磁気力を電磁気力として統一した。つまり、電流や時間変動する電場は磁場を生じ、時間変動する磁場は電場を生じる。

 アルベルト・アインシュタインは一般相対論の論文を発表した後、重力と電磁気力の統一を試みたが、当時は完成させることはできなかった(現在では、超弦理論に重力と電磁気力は含まれている)。

 さらにスティーヴン・ワインバーグ、アブドゥス・サラムは電磁気力(電磁力とも呼ぶ)と弱い力を電弱統一理論として統一した。この意味は、「電荷をもつ素粒子は必ず弱超電荷もあわせもつ」理論形式になっている。この研究は、1979年ノーベル物理学賞を受賞した。

 超弦理論
 超弦理論は物理学の理論、仮説のひとつ。 物質の基本的単位を大きさが無限に小さなゼロ次元の点粒子ではなく1次元の拡がりをもつ弦であると考える弦理論に超対称性という考えを加え拡張したもの。 超ひも理論とも呼ばれる。

 超弦理論以前の理論のなかで最も小さなスケールを記述する理論は場の量子論であるが、そこでは粒子を点、すなわち点粒子として扱ってきた。 一方、超弦理論では粒子を弦の振動として表わす。

 1960年代、イタリアの物理学者、ガブリエーレ・ヴェネツィアーノが核子の内部で働く「強い力」の性質をベータ関数で表わし、その式の示す構造が「弦(string)」により記述されることに南部陽一郎らが気づき、1970年に論文を発表した。

 この「強い力」をあらわす弦には「閉じた弦」と「開いた弦」の2種類を考えることができ、開いた弦はスピン1のゲージ粒子(光子、ウィークボソン、グルーオンなどに相当)を含み、閉じた弦はスピン2の重力子を含む。 開いた弦の相互作用を考えるとどうしても閉じた弦、すなわち重力子を含まざるを得ない。そのため「強い力」を重力子なしで記述することは難しいことがわかった。

 逆に言えば、弦を基本要素と考えることで、自然に重力を量子化したものが得られると考えられる。そのため、超弦理論は万物の理論となりうる可能性がある。超弦理論は素粒子の標準模型の様々な粒子を導出しうる大きな自由度を持ち、それを元に現在までに様々なモデルが提案されている。

 このように極めて小さい弦を宇宙の最小基本要素と考え、自然界のすべての力を数学的に表現しようというのが、いわゆる弦理論(超弦理論、M理論を含む)の目指すところである。


参考HP Wikipedia「超弦理論」「統一場理論」 「クオーク」「核力」「強い力」「弱い力」

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