メタボリックは過剰免疫反応
2009年7月27日の朝日新聞で、東京大の真鍋一郎特任准教授と西村智特任助教ら循環器内科のグループが、脂肪細胞がつくり出す内臓脂肪に、免疫細胞が集まることで炎症状態を起こし、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、脳疾患などの原因である「メタボリック症候群」を引き起こすことを発見、免疫細胞とメタボリック症候群が直接関係することを明らかにした。
研究グループは、蛍光色素を注射して内臓の脂肪組織の細胞をそのまま観察できる方法を開発、高脂肪のエサを与えたマウスの内臓の状態を調べた。 すると、マウスが太って脂肪細胞が大きくなるにつれ、病原体を攻撃する「CD8T細胞」というリンパ球の一種が出現し、さらに各種の免疫細胞が集まり、炎症状態になっていることが確認できた。
この研究では、メタボリック症候群の原因が、免疫細胞「CD8T細胞」の起こすアレルギー反応(過剰免疫反応)であることがわかり、驚かされた。
日本人型メタボリック症候群
メタボリック症候群は、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態をいう。
内臓脂肪が増加すると腹部がふくらみ、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、脳疾患など、さまざまな病気を引き起こす要因になることが恐れられている。ただし、日本の基準と欧米の基準には違いがある。
最近は西洋型の生活に慣れてきた日本人も多く、個人差もある。日本人の体型だけでメタボリック症候群とするのはどうか?という意見も出てきたが、日本では特に内臓脂肪の蓄積による肥満が共通の基盤として着目され、高血糖・高血圧・高脂血症などの症状を伴う人が多いのも事実であり、私にもよく当てはまる。
免疫細胞を呼ぶタンパク質発見!
2009年9月2日の読売新聞では、熊本大学の尾池雄一教授らが、メタボリック症候群を引き起こす、原因たんぱく質を特定した旨を発表した。
このたんぱく質が脂肪組織で慢性的な炎症を起こし、最終的に糖尿病が発症することも確かめた。新たな治療薬開発につながる成果で、9月2日付の米科学誌「セル・メタボリズム」に発表した。
尾池教授らは、肥満や糖尿病、動脈硬化症の患者の血液中で、Angptl2というたんぱく質の濃度が高いことを発見。このたんぱく質をヒトの血管の細胞に作用させると、免疫細胞(白血球)を呼び寄せて炎症につながることがわかった。
慢性的な炎症があると様々な生体物質が作られ、インスリンの働きが悪くなって血糖値が高まるなど病気の引き金になることが知られている。
前回、東京大の免疫細胞「CD8T細胞」の起こすアレルギー反応が、メタボリック症候群の原因であることを発見したが、今回、この免疫細胞を呼び寄せる原因が、タンパク質「Angptl2」であることがわかった。
このタンパク質「Angptl2」は、血液中に糖分や中性脂肪などの濃度が高くなると、体内でつくられるようだ。いったいどこでどうやってつくられるのだろうか?今後の研究に期待したい。
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尾池教授らは、肥満や糖尿病、動脈硬化症の患者の血液中で、Angptl2というたんぱく質の濃度が高いことを発見。このたんぱく質をヒトの血管の細胞に作用させると、白血球を呼び寄せて炎症につながることがわかった。
慢性的な炎症があると様々な生体物質が作られ、インスリンの働きが悪くなって血糖値が高まるなど病気の引き金になることが知られている。
Angptl2を働かないように遺伝子操作したマウスに、脂肪の多い餌を与えても、通常のマウスよりも血糖値が低く抑えられ糖尿病を発症しなかった。逆に遺伝子を過剰に働かせたマウスは太っていなくても脂肪組織で炎症を起こし血糖値が高くなった。(2009年9月2日03時14分 読売新聞)
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