科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 空前の「sushi」ブーム
 世界的な日本食「sushi」ブームによってマグロの消費量が増大し、マグロの価格が高くなった。日本も輸入マグロの割合が増え、価格の影響を受けやすくなっている。

 90年代後半から2000年代初めにかけて、台湾漁船の大量漁獲によって、日本での水揚げが減少したため、日本は減少分を台湾から輸入して維持したがさらに、中国都市部での日本食ブームによってマグロ需要が急増し、日本の漁獲減少の隙を突いて、中国漁船による活動が拡大し、競争が激化している。また、乱獲防止と資源保護のため漁獲量が2割減が決まりさらに高騰するといわれる。

 相対的な個体数が少ない上に需要増加・価格高騰が拍車をかける形で、世界中でマグロが乱獲され、国際的な資源保護が叫ばれている。絶滅が危惧される生物を記載したIUCNレッドリストには、マグロ8種のうち5種が記載されている。過激な保護運動を行う環境団体には、クジラ並みにマグロ漁禁止を求める強硬派もいる。

 マグロの種類とレッドリスト
 クロマグロ(黒鮪) :全長3m・体重400kgを超える。日本近海を含む太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布する。マグロ属で最も美味で、最上等種とされる。魚体の色と希少価値から「黒いダイヤ」とも呼ばれる。

 タイセイヨウクロマグロ(大西洋黒鮪):全長4.5m・体重680kgに達し、マグロ属で最大種である。地中海・黒海を含む大西洋の熱帯・温帯海域に分布する。IUCNレッドリストで絶滅危惧種のDD(情報不足)に記載。
 
 ミナミマグロ(南鮪):別名インドマグロ。全長2.5mに達する。南半球の南緯60度までの亜熱帯・温帯海域に分布する。身の脂が豊富で、寿司ねたに好んで用いられるが、IUCNレッドリストではCR(絶滅危惧IA類 : 最も絶滅が危惧される動物のランク)に記載。

 メバチ:全長2mほどの中型種。他種より太いずんぐりした体型、大きな目、長い胸鰭を持つ。和名「メバチ」は、大きな目に由来する。日中は他のマグロより深い層を泳ぐが、夜は表層に上がってくる。IUCNレッドリストVU(絶滅危惧II類)。
 
 ビンナガ:体長1m程の小型種。「ビンナガ」の称は長大な胸鰭を鬢(もみあげ)に見立てたもの。すし屋では「ビントロ」という名前で販売されている。IUCNレッドリストDD(情報不足)。
 
 キハダ(キハダマグロ/黄肌・黄鰭):日本近海では全長1-1.5mほどのものが多いが、インド洋産は全長3mに達するものもいる。漁獲量は8種の中で最多で、缶詰などの材料として重要である。IUCNレッドリストLC(軽度懸念)。
 
 コシナガ(腰長):全長1mを超えるものもいるが、60cmほどのものが多く、マグロとしては小型種である。

 モナコの提案とワシントン条約
 現在、大西洋クロマグロを欧州で保護する動きがあり、モナコが「ワシントン条約」に2010年3月の会議で、登録を提案する予定。会議で参加国の3分の2以上の賛成があると、絶滅が心配されるシーラカンスやジャイアントパンダなどと同じレベルのリストに登録され、学術研究の目的をのぞいて取引が禁止される。今のところフランスやドイツなどが賛成するとみられている。

 もしモナコの案が通ると大西洋クロマグロはとれなくなるので約2万トンに影響が出るとみられている。しかし、日本に供給されるマグロ5種の量は約40万トンだから、すぐに食べられなくなるわけではない。

 みんながマグロと呼んで食べている魚はおもにクロマグロやミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガなどで、ほかにもいろいろな種類がいる。このうちクロマグロは大西洋クロマグロと、太平洋クロマグロに分けられる。  

 ワシントン条約とIUCNレッドリスト
 ワシントン条約とは、正式名は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」という国どうしの約束で、175か国が参加。野生動植物の国際取引が乱獲を招き、種の存続が脅かされることがないよう、取引の規制を図る条約である。

 絶滅のおそれのある動植物の野生種を、希少性に応じて3ランクに分類、これらを条約の附属書I、IIおよびIIIに分けてリストアップし、合計約30,000種の動物を取引制限の対象としている。、

 ワシントン条約の附属書リストに登録されている生物種は、いわゆる「レッドデータブック」に登録されている種と必ずしも一致するわけではない。これは、国際自然保護連合(IUCN)とは直接的な関係がなく、あくまでも経済活動としての国際取引によって種の存続が脅かされる生物の種の保全を目的とするものであるためだからだ。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)
 大西洋クロマグロはすごく数が減ってしいる。水産庁などによると、親魚は1970年代半ばに東大西洋に30万トン以上いると推定されていたけれど、2006年には10万トンを割ったとみられ、近年は最も多かった時期の40%にまで減ってしまった。同庁はこのままとり続けると、まったくとらなかった時に比べて6%にまで減ってしまう危険性があると心配している。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が、クロマグロについては2009年に 22,000トン、10年に19,950トン、11年に18、500トン、必要ならさらに削減する、という漁獲枠を定めている。

 クロマグロ以外のマグロも減っているとみられ、規制の動きがある。メバチは「中西部太平洋まぐろ類委員会」(日本、カナダなど25の国や地域・機関が参加)が漁獲を2009年から3年で3割減らすことにした。ミナミマグロは「みなみまぐろ保存委員会」(日本、オーストラリアなど四か国が参加)が2006年に漁獲枠を二割減らすことを決めた。

 今回のクロマグロのワシントン条約の規制に対して、日本は反対している。クロマグロをとる量を減らすことを2008年11月「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(日本、アメリカなど47か国と一機関が参加)で決めたので、それを守ろうという立場だ。

 それでも規制を強めようというのは、ルールに違反してとる「違法操業」などが後を絶たないからだ。

 中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)
 9月10日、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会は、沿岸の零細漁業((ひき縄など)を除き、2010年のクロマグロ漁獲量を2002-04年水準にとどめ、3歳までの若齢魚の漁獲を減らすという勧告をまとめた。韓国の排他的経済水域(EEZ)は規制の対象外とした。12月のWCPFC年次会合で採択される見込み。

 WCPFCは中西部太平洋の公海域のマグロ類漁業を管理する機関として2004年に設立された。日本は翌05年に加盟している。WCPFC北小委員会は、北緯20度以北の中西部太平洋におけるマグロ・カツオ資源の管理を担っている。これまで05年12月にメバチの漁獲量を現状に凍結、06年12月にもキハダについて同様の凍結案が採択されている。メバチについては昨年12月、30%の漁獲量削減というより厳しい案が採択された。


参考HP Wikipedia「マグロ」・asahi.com 2009年9月9日「本マグロを絶滅危惧種に」・毎日新聞 2009年9月11日「クロマグロ:漁業規制 太平洋中西部 02〜04年より増やさず」・朝日新聞 2009年9月1日「マグロ食べられなくなるの?」
 

マグロのDHA

緑応科学研究所

このアイテムの詳細を見る
日本の食卓からマグロが消える日―世界の魚争奪戦
星野 真澄
日本放送出版協会

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ  ランキング ←One Click please