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 ワクチン接種の順番は?
 この10月下旬から、いよいよ新型インフルエンザワクチンの接種が開始になる。まず医療従事者に接種し、それから妊婦や持病のある人、小児、1歳未満の子の両親、小学生、中・高生、高齢者へと広げていく予定だ。新型インフルエンザの感染は拡大の一途をたどっており、今後最大で国民の5人に1人が発症するという予測もある。はたしてワクチンによって感染拡大は阻止できるのだろうか?

 新型インフルワクチンでもっとも議論の的となったのは、接種の順番をどうするかだ。十分なワクチンがあるわけではないので、当然、必要性の高い人々から接種することになる。人工透析患者の団体は、透析患者に優先して接種するように厚生労働省に要求した。日本で最初に新型インフルで死亡した沖縄の男性が、人工透析を受けていた患者だったからだ。また、日本小児科学会は、小児がんなどの基礎疾患のある子どもを優先させるように申し入れた。

 これらの要求を突きつけられた厚生労働省は9月8日、新型ワクチンの接種開始時期や接種方法などについて実施案を公表した。それによると、まず10月下旬から、インフルエンザの診療にかかわる「医療従事者」から接種を始める。その数は全部で約100万人。次に11月から「妊婦」約100万人と、「持病があって重症化しやすい人」約100万人に接種。さらに11月下旬から「1歳〜小学校入学前の小児」約600万人、12月から「1歳未満の小児の両親」約200万人の順となっている。その後は、「小学生」約700万人、「中・高生」約700万人、「高齢者」約2100万人の順となる。

 新型インフルエンザもやがて「季節性」に
 新型インフルエンザは、今後患者発生のピークを迎えると予測されているが、それ以降は、季節性インフルエンザの一つとして定着する可能性が高い。なぜなら、過去に大流行したインフルエンザが、現在の季節性インフルエンザになっているからだ。1968年に流行し、日本で2000人、世界では56000人が死亡したといわれる「香港インフルエンザ」は、現在のA香港型になって定着した。また1977年に流行した「ソ連インフルエンザ」は、現在のAソ連型になっている。

 今回の新型インフルエンザも、新たな「季節性インフル」となって定着し、毎年患者を発生されることになると予想される。今後も、このウイルスと人類との長い戦いが続くことになりそうである。

 せっかくつくったワクチンだが、効かない場合もある。仮に1つのワクチンをつくっても、ウイルスが突然変異を起こして姿を変えてしまうため、ワクチンの効果も短期間で無になってしまうからだ。季節性インフルエンザの場合、ワクチン接種によって、健常者(65歳未満)の発病は70〜90%減少するものの、小児(1〜6歳)の発熱は20〜30%しか減らない。また、老人施設入所者(65歳以上)の発病も30%しか減らないという。新型インフルエンザの場合も、ワクチンの効果は同程度か、むしろ低いと見ておいたほうが賢明だろう。(出典:日本経済新聞 2009.9.15「ワクチンで感染拡大は防げるのか?渡辺雄二氏」)

 「ヘマグルチニン」とは何か?
 インフルエンザウイルスは、どうやって人に感染し、どうやって増えるのだろうか?

 実はかなりくわしく感染するしくみがわかっている。ポイントとなるのは糖タンパク質「ヘマグルチニン」である。インフルエンザのH5N1型、H1N1型などでいう「H」はこの「ヘマグルチニン」のことである。

ヘマグルチニンは、インフルエンザウイルス、およびその他多くの細菌、ウイルスの表面上に存在する抗原性糖タンパク質である。ウイルスはこのヘマグルチニンの働きによって細胞に感染する。
 
 ヘマグルチニン(以下HA)は少なくとも16種類が存在する。これらのサブタイプはH1からH16の種類に分けられる。インフルエンザウイルスの亜型名(例:H5N1など)のHはこのHAの種類を表している(Nはノイラミニダーゼの種類を表す)。最後に発見されたH16は、最近スウェーデンとノルウェーからのユリカモメから分離された例のみである。H1、H2、H3の3種類はヒトインフルエンザウイルスに存在する。

 H5N1(トリインフルエンザ)は極まれにヒトにも感染する可能性がある。ヒトの患者から発見されたトリインフルエンザウイルスのH5はアミノ酸配列が1つ変異していた。そのため、H5N1ウイルスのレセプター特性が変化してヒトにも感染するようになったということが発表された。この発見は通常ヒトには感染しないH5N1ウイルスがどのようにしてヒトの細胞に感染するのかを的確に説明できる。

 インフルエンザ感染のしくみ
 インフルエンザウイルス表面のHAが標的細胞膜のシアル酸に結合し、細胞内に取り込まれる。HAには重要な機能が2つある。目標の動物細胞表面にあるシアル酸を認識して結合することにより細胞に感染する。

 宿主細胞のエンドソーム膜とウイルス膜を融合させることにより、ウイルスのゲノムを細胞内に挿入する。

 HAが標的細胞膜に結合する様子HAは標的細胞表面のシアル酸に結合する。そのため、ウイルスが細胞表面から離れなくなる。ウイルスはそのまま細胞膜に包み込まれ、ウイルスを入れたままエンドソームの形で細胞内に取り込まれる。

 次に細胞はエンドソーム内部を酸化させ、ウイルスをリソソームに送り込んで消化しようとする。しかし、エンドソームのpHが6.0まで低下するとHAの構造は不安定になり、折りたたまれたペプチド構造が部分的に展開する。するとタンパク質で隠されていた強疎水性の部位が開放される。

 この融合ペプチドを、あたかも鉤のようにエンドソーム膜に挿入して固定する。さらに、HA分子の残りの部分は新しい構造(より低いpHでも安定な構造)に折りたたみ直され、融合ペプチドを引き寄せる。するとウイルス自身もエンドソーム膜に引き寄せられ、膜と融合する。その後、ウイルスのRNAは細胞質に挿入されて増殖を開始する。


参考HP Wikipedia「ヘマグルチニン」・日本経済新聞 「2009.9.15 ニュース解説」

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