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 ツキノワグマが人を襲う
 ツキノワグマは絶滅危惧種である。特にニホンツキノワグマは、環境省のレッドリストではCR(Critically Endangered)であり、「絶滅寸全種」とされている。この次のレベルはEWで、「野生絶滅種」とされる段階しか残されていない。つまり近い将来、動物園でしか見られなくなってしまうかもしれない動物である。

 2009年9月19日、その貴重なツキノワグマが人を襲った。岐阜県高山市丹生川町の乗鞍スカイラインの畳平駐車場(標高2,702メートル)で19日午後2時20分ごろ、山から下りてきた野生のツキノワグマがバスを待っていた観光客ら9人を次々と襲った。

 この時のようすを、近くで録画した人がいて、この映像は全国ネットで放送され、多くの人に衝撃を与えた。襲われた人は、もはや手の施しようがなくうずくまって、熊が去るのを待つしかなかった。それは、近くにいた人も同じで、手の出しようがなく距離を置いて見守るしかなかった。

 映像では、まわりに集まった多くの登山者に驚いたのだろう、クマはますます興奮して、その後、次々に近くに居合わせた人達を襲った。高山警察署の話によると、男性7人、女性2人の合わせて9人がけがをし、このうち岐阜県の49歳の男性が右足を骨折するなど、4人が重傷となった。

 駐車場にあるバスターミナル内に入り込んだクマは土産店付近に閉じ込められ、午後6時前に駆けつけた地元の猟友会員が建物に入り熊を射殺した。

 近年増加するクマの目撃情報
 現場となったバスターミナルは魔王岳(標高約2764メートル)近くの平地にあり、魔王岳を含む北アルプス地域では今年度8件の目撃情報があった。負傷者が出たのは今年度、県内で初めてだった。

 2007〜2008年に県地球環境課が行った調査では、県内には約1200〜1400頭のツキノワグマが生息していると予測される。今年度は、県内で181頭の目撃情報があり、うち148頭が飛騨地方で、57頭が高山市内から寄せられた。

 2006年度は、突出して多い739件の目撃情報があり、計6人が襲われた。主要なエサとなるドングリなど木の実の凶作だった年で、クマが山から人里に下りてきたためと言われている。

 県には例年、6〜10月に目撃情報の多くが寄せられており、同課野生生物担当の武藤茂課長補佐は「多くの人が山に登る時期にクマもエサを求めて移動するため、目撃件数も増えている」と話す。

 クマ対策に何が必要か?
 本来、クマは人間が苦手といい、NPO法人「信州ツキノワグマ研究会」(長野県松本市)の林秀剛代表は19日の被害を「偶然クマと人間が出合い、お互いパニックになったためだろう」と分析する。現場周辺には、クマのエサとなる花や、ハチがおり、「エサを求めて人家を襲う事例とは別だ」という。

 また、人に馬乗りになったとの目撃情報もあったが、「人間に敵対心を抱いているわけではなく、錯乱状態での行動ではないか」と説明する。クマに遭わない対策として林代表は、山林に入る時は鈴やラジオなど音のするものを携帯し、「自分の存在を示してクマに遠ざかってもらうことが重要」と訴える。

 県も2006年から、インターネットを使ってクマ目撃情報の地点を示した「クママップ」を公開し、目撃情報のほか、鈴の携帯などの対策を求めている。「クママップ」は、県のホームページから見ることができる。

 一方、現場のターミナル内の店舗は20日も平常通り営業し、高山市がトイレや店舗内など5カ所に、「クマ出没注意」の看板を立てた。また、同日午前3時半から通行止めになっていた乗鞍スカイラインは、「他にクマがいないことが確認された」として、管理事務所が午前10時半に通行止を解除した。(毎日新聞 2009年9月21日)

 出没数増加の原因と対策
 「今年は夏前から、乗鞍スカイラインの全域で、昨年までにないほどクマを見る」と乗鞍岳山頂付近で頂上小屋を管理する町野親生さん(57)。「注意が必要だと思ったが、こんな事故が起きるとは」と声を落とした。

 出没の背景には、過疎化で森林や耕作地が放棄され、クマの生息に適した土地が広がっていることや、狩猟者の減少により、人への警戒感が少なくなったことなどが考えられるという。

 現地では20日、パトロールや「クマ出没注意」の看板を立てるなどの対策が講じられた。だが、県内では年々、クマの目撃件数が増えており、冬眠前の秋からはさらなる増加も予想される。山林に入る際には、鈴を鳴らすなどの対策が必要だ。

 人間が襲われるときは、クマも恐れている。不意に遭遇した場合は、クマは背中を見せて逃げるものを追う習性があるため、静かに後ずさりすべきである。 なお、熊にあったときに死んだふりをするというのは、あまり意味はない。

 もはや逃げられなくなった場合には最低限、人の急所である首と頭を保護することが大切だ。 

参考HP Wikipedia「ツキノワグマ」・毎日新聞 (2009年9月21日)

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