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 月に水は存在するのか?
 水の星「地球」に住む私たちはふだん意識しないが、宇宙空間に出たとたん、何もない空間にいることを思い知らされる。空気も食糧も温度も、すべてコントロールしなければ一瞬たりとも、生きていけない空間なのだ。若田さんは国際宇宙ステーションで、尿から再生した水を飲用した。

 私たちは恵まれた環境に生きている。さて、宇宙に出てまず必要な水をどうやって確保するかは重要な問題である。水を電気分解すれば、酸素も得ることができる。将来基地の建設が予定されている、月で水が得られればそれに越したことはない。地球からもって行くには水は重すぎるのだ。

 シャックルトンクレータ
 2008年10月24日、地球にもっとも近い天体である月に、「水」が存在するかどうかの最新調査結果が、JAXA(宇宙航空研究開発機構)より報告された。日本の月探査機「かぐや」が、月の南極点近くにあり、氷があると有望視されていた「シャックルトン・クレーター」内部の撮影に昨年11月、世界で初めて成功。その後、JAXAなどの画像分析の結果、クレーターの表面には氷になった「水」の層を確認できなかった。

 シャックルトンクレータは、南緯89.9度、東経0.0度の月の南極近くに存在する直径21kmのクレータ。南極点近くに存在するため、ほとんど日光が当たらず、内部には永久影が存在する。永久影は、極低温となるため、水氷の存在の可能性が示唆されていた。

 今回の調査では、シャックルトンクレータの内部には、水氷と見られる高い反射率の場所は存在しなかった。このため、クレータ底部の表面付近には、水氷は露出した形で大量に存在する可能性はなかった。

 どうやら、湖のように大量の水がある可能性は月にはないようだ。では月の石の中に化合物の形で水は存在しないのだろうか?

 月の石
 「Nature」誌2008年7月10日号に掲載された論文の中で、ブラウン大学の地質学者Alberto Saal氏が率いる研究者たちは、米航空宇宙局(NASA)が「アポロ」ミッションの際に採取した小石の中を分析して、月に水の分子が存在する証拠を得たと述べている。

 今回研究対象になった小石は、30億年前に月面で起こった複数の噴火によって形成された。月はもともと、約45億5000年前に火星程度の大きさの天体が地球に衝突したことによって軌道に投げ出されたマグマだと考えられている[ジャイアント・インパクト説で、現在最も有力とされる]が、30億年前というのは、そのマグマの温度が下がりつつある時だ。

 記事によると、月の石に46ppmの水を確認したという。噴火当時は最良値で745ppm、最小で260ppm(95%の信頼水準の場合)の割合で水を含んでいたとの推測結果が得られた。この発見は、現在でも月の地中深くに水が存在することを示唆している。

 太陽風
 今回、2009年9月24日「Science」誌に、米メリーランド大などが、「月の表面に微量の水が存在する証拠を発見した」という論文が掲載された。

 月面は乾燥した世界だと考えられていたが、実は、砂の表面に結合する形で水が広い範囲にわたり存在しているとみられる。これは月の表面の光を分析した、インド・チャンドラヤーン1号など三つの探査機の観測結果から初めて確認された。

 観測したのはチャンドラヤーンのほか、土星探査機カッシーニ、彗星(すいせい)探査機ディープインパクト。いずれも月の表面から、水(H2O)か、水のもとにもなるヒドロキシ基(OH)の存在を示す波長の光を検出していた。
 
 水およびヒドロキシ基は、太陽に向いた月面の昼側で主に観測された。砂の表面の酸素原子(O)が、太陽風に含まれる高速の水素イオン(H+)と結びつくことで、水やヒドロキシ基になったらしい。水は、現在も月の表面の太陽側で作られ続けているとみられる。

 砂に結合した形の水は、加熱すれば取り出すことができる。将来の有人探査などに役立つ可能性はあるが、ディープインパクトの観測データでは含有率は0.5%未満。研究者はAP通信に「水を1杯飲むには、野球場のダイヤモンドほどの面積の砂を集める必要がある」と語っている。 (asahi.com 2009年9月24日)

参考HP アイラブサイエンス「月に水は存在するか? 2008年10月29日」 

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