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 多才なダイヤモンド
 ダイヤモンドの特徴は何だろう?実は光、硬度、熱、電気などについて、さまざまな特徴がある。

 まずあの美しいきらめきだ。この光は「シンチレーション(表面反射によるチカチカとした輝き)」「ブリリアンシー(内部全反射による白く強いきらめき)「ディスパーション(プリズム効果による虹色の輝き)」によるもの。

 ダイヤモンドの屈折率は2.42と高く、外部からダイヤモンドに入った光は内部全反射して外に出て行く。最近はこの特性を活かした、光制御デバイスとしての研究もさかんだ。

 ダイヤモンドは硬くてもろい?
 その他の特徴はどうだろう?そう、ダイアモンドは炭素 (C) の同素体の一つであり、天然で最も硬い物質である。

 ダイヤモンドの硬さは、炭素原子同士が作る共有結合に由来する。ダイヤモンドでは1つの炭素原子が正四面体の中心にあるとすると、最近接の炭素原子はその四面体の頂点上に存在し、それぞれが sp3 混成軌道によって結合しており、幾何的に理想的な角度であるため全く歪みが無い。その結合長は1.54Åである。この結晶構造を持つダイヤを立方晶ダイヤとよぶ。

 一方で、炭素の同素体であるグラファイト(石墨)は、層状の六方晶構造で、層内の炭素同士の結合は sp2 混成軌道を形成している。この層内では共有結合を有し結合力は比較的強いが、層間はファンデルワールス結合であるため弱い。

 劈開性・熱伝導性・伝導率
 その他の性質としては、劈開性、熱伝導性、電気伝導率などがある。

 劈開性とは、壊れやすさのことで、意外にもダイヤモンドには一定の面に沿って割れやすい性質がある(4方向に完全)。ダイヤモンドは、普通の物質や道具では傷つけられないと思われているが、「結晶方向に対する角度を考慮し、瞬間的に大きな力を加える」、「燃焼などの化学反応を人為的に促進する」などの方法で壊すことができる。

 熱伝導性は高温側から低温側へ熱がよく伝わる性質で、通常は金属では電子がよく熱を伝えるはたらきをする。電気を通す金属は熱も通しやすいわけだ。ところがダイヤモンドの場合は電気は通さないのに、フォノン(格子振動)という原子の振動がよく熱を伝える。この原子の振動は、金属でも当然起きているのに、ダイアモンドの方が熱伝導性が高いのは不思議だ。

 電気伝導率は、電気の通りやすさのことで、ダイヤモンドは絶縁体である。ところが、不純物を添加することにより、不純物半導体化ができる。すなわち、ホウ素添加によりp形、リン添加によりn形の半導体になる。これにより、現在よりもはるかに高周波・高出力で動作する半導体素子や、バンドギャップを反映した深紫外線LEDが実現できるのではないかと期待されている。

 世界一硬いダイヤモンド
 兵庫教育大学の庭瀬敬右教授らの研究グループが、結晶粒を極限まで小さくした「アモルファス(非結晶)ダイヤモンド」を、黒鉛から作ることに成功したと発表した。アモルファスダイヤは通常のダイヤより硬く、ダイヤは結晶が小さいほど硬いとされることから、庭瀬教授は「世界一硬いダイヤの可能性もある」としている。

 黒鉛に中性子を照射して構造にダメージを与えた後、秒速1.7キロの速度で金属をぶつけて瞬間的に温度を約3500度まで上昇させた(ウィグナー欠陥による発熱)。その後に1000度以下まで急激に冷やす(衝撃圧縮超急冷法)と、極小の結晶が集まったアモルファスダイヤモンドができた。

 この研究は東大、東工大との共同研究。結晶の大きさは1ナノメートル(ナノは10億分の1)未満で非常に小さい。成果は今年3月発行の米物理学専門誌「フィジカル・レビュー・レターズ」で紹介された。

 アモルファスダイヤモンド
 アモルファスダイヤモンドは結晶の最小の単位である単位格子程度の短距離秩序はダイヤモンドであるが、広い範囲での長距離秩序が無いダイヤモンドのことを示す。アモルファスダイヤは通常のダイヤより硬く、ダイヤは結晶が小さいほど硬いとされる。また、光の3次元閉じ込めを実現する非周期構造のフォトニック結晶であり、将来の光制御デバイスとしても期待されている。

 ウィグナー欠陥 
 黒鉛に放射線を照射した場合に、照射によって蓄積された欠陥が回復するときにエネルギーが放出されることをウィグナーが予言した。実際、1957年の英国ウインズケール原子炉で、蓄積したエネルギー放出が原因で事故が起こり、この蓄積エネルギーのことはウィグナーエネルギーとよばれ、照射によって黒鉛中に形成される欠陥を総称してウィグナー欠陥とよばれている。

 衝撃圧縮超急冷法 
 衝撃圧縮とは100グラム(g)程度までの飛翔体を約2km/sまでの速度に加速し、試料に衝突させ、50GPa程度までの衝撃圧力を約百万分の1秒発生させて、物質の相変化などを引き起こす方法。特に、試料を金薄膜などによって挟み込むことによって、衝撃圧縮によって上昇した試料の温度を急冷する方法が衝撃圧縮超急冷法である。


参考HP 兵庫教育大学「黒鉛からアモルファスダイヤモンドの生成に成功
東京大学「フォトニック・アモルファス・ダイヤモンド
毎日新聞 「ダイヤモンド:世界一硬い?(2009年10月10日)」

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