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 地球と金星
 金星は、太陽から約1億820kmの距離(地球−太陽間の0.72倍)のところを公転する地球型惑星、つまり岩石の地面をもつ惑星である。大きさや密度が地球と同じくらいであるため、金星は地球と似た過程で作られた双子のような惑星であると考えられているが、その環境は地球とはかなり違っている。海はなく、大気は地球に比べて乾燥している。

 地球で見られるプレートテクトニクス(大陸移動)は今の金星では起こっていないようであるが、地表面は比較的新しく、数億年前に大規模な火成活動が起こったと考えられている。大気は主に二酸化炭素からなり、その量がとても多いために地表気圧は90気圧にもなる。高度60kmあたりには硫酸の雲があり、この雲は地球の雲と違って惑星全体をすき間なくおおっている。雲は時速400kmという速さで東から西へと流れている。

 この大気の動きは「スーパーローテーション」と呼ばれている。

 金星の謎
 地表気温は460℃にも達するが、この高温は金星が太陽に近いことが直接的な原因ではない。金星に届く太陽光は厚い雲によりほとんどがさえぎられて、地表まで届く量は地球の10分の1である。

 金星の地表から空を見上げれば、いつも曇り空で、どんよりと暗いだろう。それにもかかわらず、大気中の大量の二酸化炭素が温室効果によって熱を閉じ込めるために、わずかな太陽光エネルギーをもとにして効果的に暖まっているのである。金星は温暖化の究極の姿を見せていると言える。

 スーパーローテーション
 日本が送り出すプラネットCは、金星の風の謎「スーパーローテーション」に迫る世界初の惑星気象衛星である。金星は243地球日もかけてゆっくりと自転しているが、大気はその60倍(時速400km)もの猛スピードで西向きに流れ、4地球日で金星を1周している。このような風が金星では生じ、地球では生じないのはなぜなのか? 

 金星の風の不思議は地球の風の不思議でもある。この風のメカニズムや、雲が作られるしくみを解明するために、プラネットCは雲の上から下までの大気の運動を3次元的な動画として描き出す。地球の常識を超えた金星大気の謎が解けるとき、私たちは地球大気を見る新たな視点を獲得していることだろう。(JAXA:金星探査機 あかつき)

 金星探査衛星の名は「あかつき」
 日本初の金星探査衛星「プラネットC」の名称が「あかつき」に決まった。夜明けの空が白んで金星が美しく輝く時間帯から命名し、宇宙航空研究開発機構が発表した。あかつきは来春ごろにH2Aロケットで打ち上げられ、半年かけて金星に到着。金星を回りながら約2年観測する予定だ。また、あかつきに載せるメッセージの募集も始まった。

 あかつきは、ハレー彗星(すいせい)に接近した「すいせい」、火星に行った「のぞみ」に続く惑星探査機。金星は、ほとんど自転していないのに強い東風が吹いているのが謎で、世界初の惑星気象衛星として、この解明に挑む。

 あかつきに載せられるメッセージや応募者の名前は、12月25日必着で、宇宙機構のウェブサイトで受け付けている。(asahi.com 2009年10月24日)

 金星探査の歴史
 かってのソビエト連邦は金星に多数の探査機を着陸させました。ベネラ(ロシア語でのヴィーナス)シリーズと呼ばれる探査機は大気中をパラシュートで降下する間にその大気の成分や量を調べ、地表面の写真を送って きました。これらのデータにより、金星の表層や大気の大まかな事は判っています。

 金星はほとんど自転していないけれども、その周りの大気は地 球時間の4日で金星の周りを回っている事もこれらのデータが裏付けています。その後、しばらく金星への探査は滞っていました。アメリカがマジェランと名付けられたレーダー探査機を送り込み金星地表の精密な地図を送ってきたのは最近のことです。

 この様に金星はある程度判っているけれど、まだまだ未知のことが多い惑星です。そこで、日本で我々が金星探査機の計画を立てるにあたって、まだ判っていないけれども、調べれば大きく科学に貢献できることは何かを議論しました。

 2000年のことです。 結論は、金星の気象学を確立するということでした。

 比較惑星学
 皆さんは地球の気象学についてはよくご存じだと思います。日本で言え ば気象庁の方々が苦労して取得されデータをもとに、精密な気象モデルが構築され、それに基づいて例えば天候の予測が数日間の単位で可能になっています。

 金星の気候は地球とは大きく異なってはいますが、しかし、やはり濃密な大気があり、それが運動していると言うことでは地球と変わりありません。そこで、金星で衛星“ひまわり”のように大気の運動を精密に測ることが出来れば、地球とは異なった気象学、つまり金星気象学が構築される事になります。

 地球気象学と金星気象学は恐らく大きく異なった部分もあるでしょうが、しかし、同じ流体力学に基づいて大気は運動しているはずですから、共通する部分もあるでしょう。金星と地球を比べて、その同じ所、異なるところを比較すると、今度は地球の気象学で欠けているところが見えてくるはずです。

 この様な考え方を比較惑星学と言いますが、そのようにして、地球、金星の両者を含む惑星気象学を創設することが我々の願いです。そして、そのうちには火星や、遠く離れた木星や土星 本体、その衛星などの上の気象現象も人類は理解するようになるでしょう。

 日本から世界に発信する惑星気象学というものが出来るならば、日本人は 将来世界の人々から尊敬されるようになれるかもしれません。我々はそれを目指してがんばっています。(JAXA)

参考HP JAXA「金星探査機プラネットC」・「金星大気の謎に挑む」 

めざせ!スペースマスター 宇宙検定100〈4〉月・惑星探査―人類の宇宙活動事典
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