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 遺伝性筋疾患
 筋ジストロフィーとは、筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称である。様々な病型に分類されるが、最も頻度の高いのはデュシェンヌ型である。

 デュシェンヌ型は進行性筋ジストロフィーの大部分を占め、重症な型である。2〜5歳頃から歩き方がおかしい、転びやすいなどの症状で発症する。おおよそ小学校5年生くらいの10歳代で車椅子生活となる人が多い。昔は20歳前後で心不全・呼吸不全のため死亡するといわれていたが、

 最近では医療技術の進歩により、5年から10年は生命予後が延びている。しかし、未だ根本的な治療法が確立していない難病である。このデュシェンヌ型は、伴性劣性遺伝(X染色体短腕のジストロフィン遺伝子欠損)で基本的に男性のみに発病する。

 遺伝子修復iPS細胞
 今回、全身の筋肉が徐々に弱くなるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者の細胞から、異常な遺伝子を修復したiPS細胞を作ることに、鳥取大の香月康宏助教らが成功した。

この病気は、筋肉の構造を保つジストロフィンというたんぱく質を作る遺伝子が欠損し、10歳ごろから歩行が困難になる。ジストロフィンは、筋肉の種類ごとに計18種類ものたんぱく質を作り分ける大きな遺伝子で、修復が難しかった。

 香月助教は、人の染色体から作製した人工染色体を利用。ジストロフィンを組み込んだ人工染色体を患者の皮膚細胞に入れ、ジストロフィンが正常に機能することに成功。さらにこの細胞から作ったiPS細胞で、正常なジストロフィンを持つ筋肉細胞ができることを確認した。

 筋ジストロフィーの治療法開発を巡っては、京都大が今年3月、正常なマウスのiPS細胞から作った筋肉細胞を、筋ジストロフィーのマウスに移植して症状を改善することに成功している。(2009年12月9日11時14分  読売新聞)

 人工染色体とは?
 人工染色体とは、細胞内で人工的に構築した極小の染色体で、染色体の維持・継承に関わる機能を持つために宿主の細胞染色体とは独立に存在できる。

染色体の維持、継承に関わる機能は、
(1)染色体DNAの複製を開始させる、「複製起点」
(2)細胞分裂期における染色体の均等分配に重要である、「セントロメア」
(3)染色体の末端構造の維持に必要な、「テロメア」
の三領域が必要とされる。
 
 染色体の機能領域の研究はまず出芽酵母を用いて行われ、上記の三領域の配列情報を基に人工的に構築したDNA分子を酵母内に導入し、酵母人工染色体(yeast artificial chromosome ; YAC)が形成された。また原核生物では、Fプラスミドの複製分配に関与する遺伝子を組み込んだ大腸菌プラスミドベクター、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome ; BAC)が作製された。

 このように染色体の機能領域を解明する研究過程において、染色体の次世代に伝達される機構を細胞内で再構築する「人工染色体技術」は確立した。YACやBACは大きなゲノム断片をクローニングできる遺伝子導入ベクターとして、ゲノム解析や遺伝子改変動物の作製など遺伝子工学の基礎技術として1990年代から広く利用されている。

 一方、哺乳類などの高等真核細胞では複製起点とセントロメアのDNA配列は解明されていなかったが、株式会社クロモサーチの研究者である岡崎等は、哺乳類細胞の複製起点やセントロメア機能を担うDNA 配列の限定や機能構造の研究を進め、ヒト染色体のセントロメア領域に由来するI型アルフォイド配列を基にヒトや哺乳類細胞中で安定に分配・維持されるヒト人工染色体(human artificial chromosome ; HAC)を構築する方法を世界に先駆け確立した。

 HACは宿主細胞中で宿主細胞染色体に取り込まれることなく独立に存在し、宿主細胞染色体と同調して倍化・分裂し、次世代細胞に安定に受け継がれてゆく。
(出典:株式会社クロモサーチ)

 

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