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 日本の真下で何が起きているか?
 去年、2009年の6月、太平洋プレートが日本の真下地下約300kmに沈み込んだところで、真っ二つに分裂していることが海洋研究開発機構の調査で明らかになった。地震がおきるしくみや、地球内部のしくみにはまだわかっていないことが多いが、その謎の1つが解明された。

 日本海溝と伊豆小笠原海溝は両者の接合部でくの字に曲がっている。潜り込む方向が同じでないためプレートが堅さを保っている限り、どこかで2つに割れることは予想できたが、これまで確かめられていなかった。高温高圧下でも海洋プレートが割れたり避けたりする性質を保っていることを示した点で今回の発見は意義がある。

 同機構地球内部ダイナミクス領域地球深部構造研究チームの大林政行主任研究員らは、地震波の到達時間や波形から地球内部の3次元速度構造を求める地震波トモグラフィーを用いて、地下の構造を調べた。

 日本列島周辺の地下は、深さ約410キロまでが上部マントル層で、その下に遷移マントル層、さらにその下に下部マントル層があることが分かっている。潜り込んだ太平洋プレートは下部マントルの部分で潜り込みをやめて水平方向に向きを変え遷移マントル層内に滞留することを、大林主任研究員らはこれまでの研究で突き止めている。

 今回初めて確認されたプレートの亀裂が見られる深さ約350キロ付近の応力を地震波の波形から調べたところ、水平方向の張力がかかっていることが分かった。これはプレートの亀裂が現在でも進行していることを示している、と研究者たちは言っている。(サイエンスポータル 2009年6月1日)

 地震波トモグラフィーとは何か?
 それにしても地下300〜600kmの世界を調べた「地震波トモグラフィー」とはどんな方法だろう?

 地震波トモグラフィーとは、地震波の伝播時間を用いて地球内部の3次元速度構造を求める手法のことである。

 具体的には、ある地点で地震が発生したとした場合、震源については、地球上に設置された各地震計が測定したデータを解析することによって震源域がある程度の精度(地震の規模によって、震源域が拡がるため)で同定される。この地震波をコンピュータを用いて解析することによって、地球の断層写真を構成する技術のことである。現在のところ、地球内部を数十キロメートルから数百キロメートル(300km)の格子で撮影したのと同じ程度の精度である。

 地震波の伝わる速度は、地球内部の温度差や物質の成分の違いによって変化する。P波の伝わる速度が1%違えば、約100度の温度差があると考えられ、P波の伝わるのが遅い部分は高温で、早い部分は低温であると考えられ、それらを画像化することによって地球内部の構造を明らかにしようと試みられている。

 プルームテクトニクスの発見
 日本付近では、太平洋プレートの沈み込みによって上部マントルと下部マントルの間にスラブが発生していること、また沈み込んだプレートが「メガリス」となって下部マントル内に沈み込んで、コールドプルームになる一方、太平洋にスーパーホットプルームが発生し、タヒチやハワイがホットスポットになっていることなどはプルームテクトニクスの「証拠写真」として注目されている。

 マントルに沈み込んだスラブは、深く沈み込む前に、上部・下部マントル遷移層内に一旦滞留する(スタグナントスラブ)傾向があることは知られていた。日本海溝や伊豆小笠原海溝から沈み込んだスラブもこうした傾向にあり深さ660kmの上部−下部マントル境界の上でほぼ水平に滞留している。

 スラブの滞留とそれに続く下部マントルへの崩落の過程は表層プレートの運動史を理解する鍵であると考えられているが、スタグナントスラブ自体の力学的性質やスラブが滞留するときどんなことが起こるのかはこれまで分かっていなかった。

 スタグナントスラブとは何か?
 西太平洋域の地震観測網のデータを解析する等で地震波トモグラフィーの分解能を向上させたところ、日本海溝−伊豆小笠原海溝会合点下でスラブを示す地震波高速異常に鮮明な間隙があることを見出した。

 間隙は近畿地方下深さおよそ300kmから黄海下深さおよそ700kmにわたり見られた。この間隙はスラブの中で発生するはずの深発地震の空白域と一致し、スラブの裂け目を意味している。

 日本海溝と伊豆小笠原海溝は「く」の字型に曲がってつながっており、スラブもまた「く」の字型に沈み込んでいる。そのようなスラブがマントル遷移層に突入して水平に曲がるためには、会合点でスラブは裂けて隙間を作るか、液体のように流れて遷移層に溜まるかのどちらかである。

 今回のスラブの亀裂の発見は、マントル遷移層内でスラブは流れたりせず、地表のプレートと同じように割れたり裂けたりすることを示したもので、スタグナントスラブの力学的性質を観測から明らかにしたものである。

 また地震波形の解析から、深さ350km亀裂の先端付近ではスラブ内の応力場が沈み込む方向に平行な圧縮場である周囲と異なり、水平方向の張力場であることが示され、これは現在でもスラブの亀裂が進行していることを表している。

参考HP 海洋研究開発機構 「世界初!太平洋海洋プレートに亀裂を発見!」  ・Wikipedia「プレートテクトニクス」「プルームテクトニクス」

プルームテクトニクスと全地球史解読

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