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 ハイチ地震被害鮮明
 2010年1月12日21時53分(現地時間 16時53分)にハイチ共和国で起こったマグニチュード(M)7.0の地震は時間がたつとともにその被害の大きさが明らかになってきた。

 16日現在、ハイチのビアンエメ内相は、既に5万人の遺体を収容しており、死者は20万人に達する可能性があるとの見方を示した。近年では22万人以上の死者・行方不明者を出した2004年12月のスマトラ沖地震による大津波被害に匹敵する大規模災害となる恐れが出てきた。

 国連の潘基文バン・キムン事務総長も同日、300万人が被災しており、100万人に緊急支援が必要だと述べた。また、国連の専門家の推計値として首都ポルトープランスを中心とする被災地域のおよそ半分の建物が損壊したとみられることを明らかにした。

「支援物資を送るのが思った以上に難しく、遅れているが、我々は可能な限り早く動かしている」また、現地では道路などの交通網が遮断されているところがあるため、空港に到着した支援物資を被災者の手元に届けることが非常に難しくなっているとし、かなりの被災者がまだ食料や水などを手にすることができていないと述べている。

 建物崩壊の原因は、コンクリートに入れる鉄筋がなかったり少なかったりで、耐震構造がもろいことにある。現在でも多くの人が建物の下敷きになっており、「生存の限界」とされる72時間を経過した。

 阪神大震災後の耐震性強化
 日本でも、1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災から、15年になろうとしている。そんな折りに起きた、カリブ海のハイチで大地震。15年前、24万棟の家屋が全半壊し、6400人に上る死者の8割は建物倒壊による圧死だった。せめてもの救いは、得られた教訓が国内の防災対策を前進させる力になったことだ。

 同じ年の12月には、耐震改修促進法が早速施行され、新耐震基準(1981年施行)を満たさない古い建物の診断や改修を進める機運が高まった。2006年には法改正され、病院や学校などの改修を加速させるため、自治体に耐震改修促進計画の策定を義務付けた。

 新潟県中越地震や岩手・宮城内陸地震、中国・四川大地震など国内外で大きな震災があるたび、備えの大切さが叫ばれ、耐震化は徐々に進んだ。

 しかし、決して十分ではない。厚生労働省の集計で病院の耐震化率の低さが明らかになった。全国8600の病院中、全建物が震度6強以上の地震に耐え得る基準を満たした施設は全体の56.2%だった。このうち、震災時の医療拠点となる災害拠点病院と救命救急センター(598施設)に限ると62.4%。10年度の目標値71.5%の達成は危うい。(河北新報 1月16日)

 ハイチの過酷な歴史・政変・災害
 中米ハイチを直撃した大地震は西半球最悪とされる貧困状態から抜けだそうともがく同国を、どん底に突き落とした。首都ポルトープランスでは、十四日も救助活動はなかなか進まず、路上には多くの死傷者が放置されたまま。衛生状況や治安の悪化は深刻で、復興の見通しは立っていない。

 19世紀初頭、中南米諸国で最初に独立を遂げたハイチは世界初の黒人共和国として脚光を浴びた。ところが、相次ぐクーデターや武力衝突で政情不安が常態化。20世紀半ば以降のデュバリエ父子による独裁政権では、約30年にわたる強権政治と腐敗により経済活動が停滞、インフラ整備も放置された。

 1990年に初の民主選挙が実施された後も政権は安定せず、2004年からは国連平和維持活動(PKO)の国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留している。

 カリブ海に浮かぶハイチは山がちな地形で、かつては緑豊かな国だった。しかし、燃料用の違法伐採が横行し、現在では森林は国土のわずか2%に減少。丸裸になった山の急斜面にぜい弱な構造の住居が密集、大雨が降るたびに洪水や地滑りで甚大な被害が出る悪循環となっている。

 2004年のハリケーン「ジーン」では2000人以上が死亡。2008年にも、計4回のハリケーン被害で1000人以上が死亡した。

 一人当たりの国民総所得は560ドル(2007年)で、国民の7割以上が1日2ドル未満、半数以上が1ドル未満で暮らす。貧しい国民の多くが栄養失調にあり、2008年の食料危機では暴動が発生した。

 警察組織は貧弱で、誘拐や強盗などの凶悪犯罪がはびこる中、治安維持は国連に頼らざるを得ないが今回の地震で国連施設も崩壊。各国の支援が遅れれば、無政府状態に陥る恐れもある。(東京新聞 2010年1月15日)

 各国の支援
 米国は3500人の部隊、および300人の医療チームを派遣する。このうち第1陣は14日に現地入りした。米国防総省はまた、航空母艦と3隻の輸送艦艇を派遣する。

 オバマ米大統領は「米国はハイチとともにある。世界はハイチとともにある」と述べ、ハイチへの支援を約束した。

 大統領府やその他の政府機関の建物も倒壊。クリントン米国務長官はCNNに対し「地震発生前に存在した政府は、完全な状態で機能することはできなくなっている。米国は政府が再度機能し始められるよう支援する」と述べた。

 米国の他、中国や欧州各国も先遣隊や救助隊をハイチに派遣。その他の国や支援団体もテント、浄水装置、食料などを現地に送っている。ただ現地では道路や通信網なども大きく被害を受けているため、援助物資の配布も円滑に行えなていない。(中国新聞 1月16日)

 日本政府も14日、大地震に見舞われたハイチに復興費用として、500万ドル(約4億5900万円)の緊急支援を行うと発表。外務省の声明によると、政府は国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)や世界食糧計画(World Food Programme、WFP)などの国連各機関と協力し、早急に支援を実施する。

 また資金援助に加え、3000万円相当の緊急援助物資の供与も行うほか、医療分野でのニーズを把握するために調査チームを編成し、14日中にも現地に派遣する。(AFPBB news 1月14日) 

 

ハイチ目覚めたカリブの黒人共和国
佐藤 文則
凱風社

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連動して発生する巨大地震―“そのとき”は確実にやってくる (ニュートンムック)

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