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 細胞内共生による遺伝子の組込み
 生物の細胞の中には、核、ミトコンドリア、葉緑体、ゴルジ体など、様々な細胞内小器官(オルガネラ)があるが、このうちミトコンドリアと葉緑体は、それぞれ十億年以上前にバクテリアが真核細胞の中に入り込み、細胞内共生を続けた結果、細胞の一部であるミトコンドリアや葉緑体になったものだと考えられている。

 その証拠としてミトコンドリアと葉緑体は核とは別にDNAを持っていることが分かっている。ミトコンドリアDNA、葉緑体DNAは極端に短く、大部分の遺伝子は核DNAに取り込まれたものと考えられている。

 遺伝子組換え技術による遺伝子の組込み
 その他に細胞内に別の遺伝子が組込まれる例として、遺伝子組換え技術というものがある。これは、人にとって有用な、ある生物の遺伝子の一部を意図的に切り取って、別の種類の生物の遺伝子に組み入れる技術である。

 有名なものが2008年ノーベル化学賞を受賞した、GFP遺伝子で、この遺伝子をもつ細胞は緑色蛍光を発するタンパク質をつくる。この遺伝子を様々な細胞に組み込むと、マーカーとしてはたらくので、様々な細胞実験に利用されている。

 細胞に有用な遺伝子を組み込むのために、よく使われるのがウイルスやプラスミドなどである。

 ボルナウイルスによる遺伝子の組込み
 ところで、私たち動物は長い歴史の中で、細胞内共生を受け入れ、何度もウイルスに感染してきた。細胞のDNAに、これまでどの程度、外来遺伝子が組み込まれてきたのであろうか?
 
 今回、大阪大学微生物病研究所の朝長(ともなが)啓造准教授(ウイルス学)らが、ヒトやサルなど動物のDNAが、少なくとも4000万年前までに感染したとみられる「ボルナウイルス」の遺伝子を取り込んでいることを発見した。遺伝子治療で体内に有用な遺伝子を入れるための運び屋として使うなど、ウイルスの新しい利用法開発につながる可能性もあるという。7日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 レトロウイルスによる遺伝子の組込み
 生物のDNAには、進化の途中で感染したウイルスの遺伝子の一部がとりこまれ、残っていることが知られている。ヒトのDNAの全遺伝情報(ゲノム)の約8%は、DNAに入り込む性質を持つ「レトロウイルス」のものだとされている。

 そのためウイルスの感染と生物進化の関係が研究されているが、これまでレトロウイルス以外のウイルスの遺伝子がゲノムに侵入するかどうかはわかっていなかった。

 朝長さんらは、ボルナウイルスに注目した。このウイルスは、はしかウイルスなどに近縁で、動物の細胞の核の中で持続感染する。DNAを分析したところ、サルや象、マウスなど様々な動物のDNAからボルナウイルスの遺伝子が見つかった。

 とりこまれた遺伝子は今もたんぱく質を作り出していることもわかり、何らかのはたらきをしているはずだという。今後役割を突きとめていくそうだ。(asahi.com 2010年1月7日1)


参考HP Wikipedia「細胞内共生」「ウイルス」

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