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 サリドマイドの催奇性
 サリドマイド (thalidomide) とは1957年にグリュネンタール社から発売された睡眠薬の名称である。副作用により多くの奇形児が誕生し、一時的に販売中止となった。現在はアメリカ合衆国等でハンセン病治療薬として市販されている。

 市販のサリドマイドには光学異性体があり、等量のR体とS体が混ざったラセミ体として合成される。開発された当時の技術では分離が難しく、ラセミ体のまま発売された。後にR体は無害であるがS体は非常に高い催奇性をもっており高い頻度で胎児に異常をひき起こすこと、さらに流産防止作用もあるとの報告があった。四肢の発育不全を引き起こし手足が極端に未発達な状態で出産、発育する(アザラシ肢症)のが主な症状であるが知覚や意識、知能に影響はほとんど見られない。

 光学異性体が原因?
 現在の技術ではR体・S体の分離(光学分割)、および一方のみを選択的に合成(不斉合成)することも可能である。2001年、不斉合成の研究で野依良治氏がノーベル化学賞を受賞している。しかし、R体のみを投与しても比較的速やかに(半減期566分)生体内でラセミ化することが解っている。このため単純にR体が催眠作用のみを持ち、S体が催奇性だけを現すという当初の報告は疑問視されている。

 もともとはてんかん患者の抗てんかん薬として開発されたが、効果は認められなかった。その代わりに催眠性が認められたため、睡眠薬として発売された。当初、副作用も少なく安全な薬と宣伝されたことから妊婦のつわりや不眠症の改善のために多用されたことが後の被害者増加につながった。

 サリドマイドの毒性が確認された後、薬に対しての副作用、安全性、妊婦および胎児への影響の調査が強化された。しかし、深刻な薬害の発生はその後も続いている。また製剤の中には鏡像異性体を持つものも多いため、これについても注意が払われるようになった。

 血管新生阻害作用? 
 かくして当初の用途で用いられることがなくなったサリドマイドだが、1965年にイスラエルの医師がハンセン病患者に鎮痛剤としてサリドマイドを処方したところハンセン病特有の皮膚症状の改善がみられた。

 さらに、1989年にがん患者の体力消耗や食欲不振の原因である腫瘍壊死因子α(TNF-α)の阻害作用が発見された。また、サリドマイドには「血管新生阻害作用」があることがわかった。

 これは胎児に対しては手足の毛細血管の成長をさまたげ奇形を発生させる原因となっている可能性がある。一方、癌組織への毛細血管の成長を阻害し結果、多発性骨髄腫などの癌への治療効果があることがわかってきた。特に鎮痛効果が期待されているようである。

 セレブロンの阻害を解明
 催眠鎮静剤サリドマイドが胎児の手足に重い障害を引き起こす仕組みを、東京工業大学の半田宏教授などの研究チームが突き止めた。

 副作用のない新薬開発への応用が期待される。12日付の米科学誌サイエンスに発表される。

 研究チームは小型熱帯魚の受精卵にサリドマイドを投与し、胸びれの発達異常が起きることを確認した上で、細胞内のサリドマイドを磁性を帯びた微粒子で取り出した。その結果、サリドマイドにはセレブロンというたんぱく質が結合していることが分かった。

 セレブロンがサリドマイドと結合しないよう遺伝子を操作したところ、サリドマイドを投与しても胸びれは生えた。鶏卵を使った実験でも同じ結果を得ており、サリドマイドが胎児期の手足の形成に不可欠なセレブロンの働きを阻害していると結論づけた。(2010年3月12日  読売新聞)

 

参考HP 体内汚染研究部会「あなたは胎児汚染の怖さを知っていますか?」 

学問と創造―ノーベル賞化学者・野依良治博士

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