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 心臓弁膜症
 2010年4月13日の朝日放送「たけしのみんなの家庭医学」は面白かった。命にかかわる心臓の疾患。その中で心臓弁膜症とは、心臓にある弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態をいう。

 番組では、治療不可能と言われた心臓弁膜症を、患者自身の心膜を弁の形に整形して移植し、治してしまう名医が登場した。自分の細胞で作った弁なので拒否反応も出ない。再手術の必要もない。素晴らしい治療技術であった。

 心臓には、血液の流れを一方向に維持するための「4つの弁」がある。左心室と全身をめぐる大動脈の間にあるのが「大動脈弁」、左心房と左心室の間にあるのが「僧帽弁」、右心房と右心室の間の弁が「三尖弁」、右心室と肺動脈の間の弁が「肺動脈弁」。

 これらの弁の開きが悪くなって、血液がうまく流れない病気を「狭窄症」、弁の閉じ方が悪くなって、血液が逆流してしまう病気を「閉鎖不全症」といい、この2つを合わせて「心臓弁膜症」という。「心臓弁膜症」はほぼ大動脈弁、僧帽弁、三尖弁の三つの弁で起こっている。

 生体弁と機械弁
 心臓弁膜症に対しどんな治療法があるのだろう?

 心臓弁が悪い場合には、外科手術で取り替えるしか方法はなく、これまでは、生体弁や機械弁と取り替える手術が行われてきた。生体弁では何とウシやブタの弁が移植された。生体弁は血栓の恐れはないが、耐用年数は10年〜20年である。

 また生体弁は、年月とともに弁に劣化や石灰化という変化が生じるため、将来的に再手術を行う可能性が高い。しかし、これらの変化は一般的にゆっくりと進むため、再手術は計画的に行うことが可能である。

 一方、機械弁は弁の劣化や破損が生じることはきわめて少なく、再手術になることは少ないとされる。ただし、抗血液凝固療法が生涯必要になる。これを怠ると弁の周りに血栓が付きやすく、弁の動きが悪くなってしまうと再手術を行うことがある。

 これまでの手術では、生体弁、機械弁に関わらず、体にとって異物であり拒否反応のため、将来的に再手術が必要になる場合がある。また1個約100万円と高価なことも問題であった。

 息苦しさとむくみ
 
千葉県に住むK・Tさん(88歳・女性)は、3年前に畑仕事をしていた時、突然息苦しくなり、その後も度々同じ症状が起きるようになった。さらには、むくみや寝苦しさなど様々な身体の変調も始まりだした。「これはきっと年のせい」とさして気にもせず過ごしていたが、ある日、息苦しさのあまり、立つことすら出来なくなってしまう。

 病院に行ってみてびっくり!K・Tさんは病気で、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)という診断。

 「大動脈弁狭窄症」とは、心臓の出口にあたる部分に付いている血液の逆流を防ぐための弁の働きが、何らの理由で悪くなり、全身に十分な血液を送り出すことが出来なくなってしまう病。

 K・Tさんの場合、大動脈弁の機能が約90%も失われていたために、脳や臓器に血液が十分に行き渡らず、失神や意識障害などが起こり、最悪の場合、心不全で突然死する可能性もあった。原因は先天的な場合もありますが、殆どは加齢や高血圧、脂ものや塩辛いものをよく食べる食生活など。これによって通常は血管の動脈硬化が進行しますが、実は心臓の弁も同じように硬くなり、きちんと開閉することができなくなってしまうのだ。

 余命は2、3年
 
この病の推定患者数は約70万人。外科手術を行い、動脈弁を取り替えれば、再び健康を取り戻すことが可能な病気だ。大動脈弁狭窄症の手術には、通常2つの方法があります。一つは牛や豚の生体組織から作り出された弁に取り替える手術。

 もう一つは特殊なカーボンを使った機械弁に取り替える手術。いずれも効果的な手術法ですが、異物を身体に入れると、拒絶反応が起きるケースがある。すると、血栓ができやすくなり、脳梗塞につながる可能性もある。K・Tさんは、当時86歳という高齢者。万が一脳梗塞を発症してしまった場合、命に関わる危険性が高いと判断されたため、この手術法が出来なかった。医師からは余命は2、3年と告げられた。

 なすすべもなく2年が経過し、去年の暮れ、彼女は突然意識不明に陥ってしまった。そんな彼女を救ったのは、大動脈弁狭窄症の手術で今、世界中から注目を集める心臓外科の名医、尾崎重之先生(東邦大学医療センター大橋病院 心臓血管外科学講座教授)だった。  (朝日放送 | たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学)

 心膜を整形して弁に
 東邦大医療センター大橋病院の尾崎重之教授は、この大動脈弁狭窄症への外科手術において画期的な技術を編み出し、現在その技術を臨床応用する日本でただ1人の心臓血管外科医。

 従来は、機械弁や豚の大動脈弁を加工した生体弁を患者の弁に置き換える手術が一般的だ。しかし、いずれも患者の体から見れば“異物”であり、相応の合併症のリスクはあった。

 そこで尾崎医師が編み出したのが、患者自身の心臓を包む心膜を利用して新たな弁を作り、それを石灰化した弁と置き換える技術だ。2007年から臨床導入し、これまで86の症例を持つが、この技術を原因とする合併症は1件もない。

 「従来の方法では、術後も血栓防止のため薬を継続的に服用しなければならないだけでなく、“異物”への生体反応も捨てきれなかった。この方法ならそれらの問題がクリアされ、ほぼ元通りに復元できる上、ひとつ100万円もする人工弁を使わないで済む経済的メリットもある」と尾崎医師。(ZAKZAK 2009/05/07)

 自分の体内で弁を再生
 心臓の弁については、自分の弁を体内で再生させる方法も研究されている。
  
 国立循環器病センターと日本大のグループは、自分の細胞だけからなる心臓の弁を体内で作り出させる方法を開発した。体内で再生させた弁を自分に再移植すれば、拒絶反応が起きない。心臓の弁障害のある犬で臨床研究を重ね、人への応用を目指すという。

 グループは、心臓の弁をかたどった直径約2センチのシリコーン製の「鋳型」を犬の背中の皮下組織に埋め込んだ。二つの円柱を組み合わせた形をしており、接続部が弁の形になるように設計されている。

 埋めた鋳型の周囲を犬の皮下組織の細胞が覆うようになった1カ月後に摘出。シリコーンの円柱を抜くと、血管状の筒の中に弁の構造を持った組織ができていた。弁を再生させた2頭の犬自らに移植して、正常に働くことも確認した。国立循環器病センターの中山泰秀研究機器開発試験室長は、「体が培養器になることにより、安全で確実に作ることができる」と話す。

 日本大学の上地正実教授(獣医循環器学)は「肺動脈に異常がある犬で、臨床応用の長期成績を確かめてから、人への応用も考えたい」と話している。(asahi.com 2010年3月28日)

参考HP Wikipeia「心臓」「心臓弁膜症」・朝日放送「たけしのみんなの家庭医学」・東邦大学医療センター「自己心膜による大動脈弁形成術」 ・弁膜症サイト

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