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 奇跡の飛行
 小惑星探査機「はやぶさ」がもどってきた。姿勢制御装置の故障や化学エンジンの燃料漏れによる全損、姿勢の乱れ、電池切れ、通信途絶、イオンエンジンの停止など、数々のアクシデントに見舞われながら、ようやく地球にたどり着いた。

 6月13日には大気圏突入し、オーストラリアのウーメラという砂漠の地に落下、翌14日にはカプセルの回収に成功した。2003年打ち上げ、5年後の2007年帰還の予定だったが、大幅に変更され 7年間もかけた長い長い旅がついに終わった。

 この旅路をサポートしたJAXAの「はやぶさ」プロジェクトチームの人達にエールを送りたい。数々のアクシデントもその大半は想定の範囲内であり、相互バックアップや自動復旧できるよう、設計されていたというからすごい。

 小惑星「イトカワ」のサンプルが、もし入手できていれば世界初の快挙である。今回、次のような成果が認められる。

 1.イオンエンジンによる推進実験 2.イオンエンジンの長期連続稼動実験 3.イオンエンジンを併用しての地球スイングバイ 4.微小な重力しか発生しない小惑星への自律的な接近飛行制御 5.小惑星の科学観測 6.小惑星からのサンプル採取 7.小惑星への突入、および離脱 8.大気圏再突入・回収 9.小惑星のサンプル入手...など、素晴らしい技術成果が得られた。

 さて、今回打ち上げから帰還まで、どんなドラマがあったか、調べてみよう。

 打ち上げ
 2003年(平成15年)5月9日(金)13時29分25秒にM-Vロケットで「はやぶさ(第20号科学衛星MUSES-C)」打ち上げ。

 2003年10月末〜11月 観測史上最大規模の太陽フレアに遭遇。搭載メモリのシングルイベントアップセットや太陽光電池の出力低下が発生したものの、幸いミッション遂行への影響は軽微で済んだ。  

 2004年5月19日、イオンエンジンを併用した地球スイングバイに世界で初めて成功。
 2005年9月12日、イトカワに接近、イトカワとのランデブーに成功した。
 
 2005年11月12日、リハーサル降下を行い、高度55メートルまで接近。探査機ミネルヴァを投下。ミネルヴァは搭載機器は順調に機能したものの、重力補償のためのスラスタ噴射の最中、上昇速度を持った時点で分離してしまったため、イトカワへの着陸には失敗した。

 タッチダウン
 イトカワは地球からの距離が月の約800倍、重力は地球の10万分の1以下。往復の航行と着陸には、高度で繊細な技術が要求される。岩石試料の採取は、長さ1メートルの筒を降ろし、金属弾を衝突させて舞い上がった岩石の粉を取り込むというユニークな方法であった。

 2005年11月20日イトカワに1回目のタッチダウン。はやぶさは降下途中に何らかの障害物を検出し、自律的にタッチダウン中止を決定し上昇したものの、再び秒速10cmで降下を始めた。はやぶさは2回のバウンド(接地)を経て、約30分間イトカワ表面に着陸した。

 2005年11月26日 2回目のタッチダウンに挑戦。降下中に前回投下した署名入りターゲットマーカーをイトカワ表面上に確認。新たにマーカーを投下すると2つの目印を見て混乱すると判断し、急遽マーカーの投下を止め、前回のものを用いた。日本時間午前7時7分、イトカワに予定通り1秒間着陸し、即座にイトカワから離脱した。地球の管制室には「WCT」の表示。これは弾丸発射を含めた着陸シーケンスが全て正常に動作したことを示している。

 交信途絶
 「あれっ、切れた…」平成17年12月8日、小惑星探査機「はやぶさ」の管制業務を行っていた大島武は思わず声を上げた。電波の受信レベルが急に低下し、10秒ほどで途絶えてしまったのだ。

 2005年11月26日に小惑星「イトカワ」へ2回目の着陸をした後、姿勢制御用の化学エンジンから燃料が漏れ、姿勢が乱れていたのだ。

 2005年12月8日 再度の燃料漏れが発生。機体はみそすり運動を始めた。キセノンガスを使っても姿勢を制御することは出来ず、9日以降通信が途絶した。姿勢が変わってアンテナがずれたためである。ここまでひどい状況になってもミッションを継続した例は世界でもあまりなかった。
 
 2006年 1月23日途絶えていた、はやぶさからの信号が受信される。「はやぶさに違いない」管制室は明るさを取り戻した。次にするべきことは、7週間にわたる通信途絶の原因となった姿勢の乱れを立て直すことだ。

 そのために、イオンエンジンで航行するはやぶさの燃料に相当するキセノンガスを噴射した。自動車に例えると、ガソリンを捨てて車体の傾きを修正するようなものだ。非常手段は功を奏したが、19年夏に予定していた帰還は、大幅に延期しなければならなかった。

 満身創痍
 予備を含めて4台あったイオンエンジンのうち、1台は打ち上げ直後に故障。姿勢制御用のリアクション・ホイール(はずみ車)も3台中2台が往路で壊れ、交信復旧後の19年4月にも、新たなトラブルでイオンエンジン1台がダウンした。

 2009年11月4日、残されたイオンエンジン2台のうち1台が異常停止した。残り1台では推進力が足りず、地球への帰還は絶望的だ。「ついに来たか。何とかして復活させないと」

 イオンエンジンの開発を担当したJAXA教授、国中均が思いついたのは、故障したエンジン2台の生き残った部分を組み合わせ、1台のエンジンとして活用する方法だった。

 この方法は、設計段階で想定済みだった。イオンエンジンを製造したNECのマネージャー、堀内康男は「限られた重量でトラブルをしのぐために可能性を模索した」と話す。

 つなぎ合わせたエンジンの起動は、ぶっつけ本番。東大で堀内の先輩だった国中は「想定通りに動いたときは、これで正月が送れると思った」と笑う。

 絶望的な状況をその都度乗り越えて、はやぶさは不死鳥のように飛び続けた。「運用継続をあきらめたことは一度もない」と、チームを率いる川口は力を込めた。

 着地成功
 地球まで約4万キロに近づく6月13日夜、カプセルを分離し大気圏に再突入。はやぶさの本体は大気圏で燃え尽きるが、オーストラリアの砂漠にカプセルを落下させ、無事に回収できれば“着地成功”だ。

 カプセルは直径約40センチで、外見は「ふた付きの中華鍋」。米スペースシャトルの1.5倍に相当する秒速12キロで大気圏に飛び込む。

 このとき、3千度の高温にさらされ、急激な減速によって受ける力は重力の50倍に達する。製造した宇宙機器メーカー「IHIエアロスペース」の担当部長、松田聖路は「要求される性能が高く、何度も試験を繰り返した」と語る。

 2010年6月13日、カプセルの切り離し成功(19:54JST)。最後の力を振り絞って、地球を撮影(22:02JST)。地球の陰に入り通信途絶(22:28JST)。大気圏再突入(22:51JST)。 ヘリコプターから目視でカプセル発見(23:56JST)。

 6月14日 カプセル回収作業開始(12:40JST)、約4時間後に回収完了(16:38JST)。回収されたカプセルは18日、JAXAの相模原キャンパスに到着する予定。


 

参考HP Wikipedia「はやぶさ(探査機)」・ 産経ニュース「50億キロの旅路“はやぶさ”帰還へ」

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