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 可視光を利用する
 植物の光合成と同様な反応を促進する光触媒の新しい材料としてリン酸銀が有望であることを、物質・材料研究機構の研究チームが発見した。

 光触媒としては藤嶋昭・東京大学特別栄誉教授が発見した酸化チタンが有名。強力な酸化能力や超親水性による殺菌効果や洗浄効果を利用した応用が広がっている。ただ、酸化チタンは太陽光の中の紫外線にしか反応しない弱点を持つ。低炭素社会実現に対する期待の高まりとともに、紫外線だけでなく太陽光の約43%を占める可視光も利用できる高光触媒開発への期待が高まっている。

 物質・材料研究機構の葉金花(ヨウ・キンカ)光触媒材料センター長らが着目したのは、これまでだれも関心を持たなかったリン酸銀。可視光を照射した場合の水を分解する性能や塗料の分解性能などを調べた実験の結果、光酸化性能がこれまで知られている光触媒の数十倍に上ることが確かめられた。

 ただし、リン酸銀は水を水素に還元することはできない。適切な還元材料と組み合わせることで水を分解して水素をつくったり、二酸化炭素(CO2)を還元して燃料や資源を合成する人工光合成システムなどへの応用が可能になる、と研究チームは今後の研究開発の進展に期待している。(サイエンスポータル 2010年6月10日)

 光触媒とは何か?
 光触媒(photocatalyst)は、光を照射することにより触媒作用を示す物質の総称である。また、光触媒作用は光化学反応の一種と定義される。

 通常の触媒プロセスでは困難な化学反応を常温で引き起こしたり、また化学物質の自由エネルギーを増加させる反応を起こす場合がある。天然の光触媒反応として光合成が挙げられるが、一般に人工の化学物質を指すことが多い。

 代表的な光触媒活性物質として、酸化チタン (TiO2) が知られている。ただ酸化チタンが利用する光は紫外光だけということで、いろいろな波長の光を利用する物質が探求されている。酸化チタンには次のような利用方法がある。

 酸化チタン (TiO2)
 酸化チタンの価電子帯の電子が紫外光で伝導帯に励起されると、比較的還元力の強い電子と非常に酸化力の強い正孔が生成する。これにより、水を酸素と水素イオンに酸化、また同時に水を水素と水酸化物イオンに還元するほどの酸化還元能を示す。つまり、水を酸素と水素に分解できる。

 酸化チタンには超親水性を示す作用があり、ガラスの防曇加工技術として既に応用されている。自動車のバックミラーや道路のミラー等を酸化チタンでコーティングしておけば、水がはねついても表面で水滴とはならず、そのまま流れ落ちる。そのため雨天時の視認性が大幅に向上する。

 また油性の汚れが全く定着せず、雨などで定期的にこのような水が流れることにより、表面が洗浄され、いわゆるセルフクリーニング作用をもつ。このセルフクリーニング作用は、既にビル外壁やテントシートおよび住宅用窓ガラスなどへ応用されている。

 リン酸銀(Ag3PO4)
 物質・材料研究機構の光触媒材料センターは、リン酸銀が高い酸化力を持つ光触媒材料であることを発見した。吸収した光がどれくらい光触媒反応に利用されたかを示す「量子収率」で90%を示した。従来の材料では20%程度が最高だったという。高性能材料の発見で、リン酸銀による光触媒の実用化にはずみがつきそうだ。

 リン酸銀の酸化力を調べるために、青色染料のメチレンブルーの分解実験を行い脱色までの時間を計った。これまで有望とされていたバナジウム酸ビスマスが120分かかったのに対して、リン酸銀は4分で脱色した。可視光照射下での水分解の酸素発生量の測定からも、バナジウム酸ビスマスや酸化タングステンよりも酸化力が高いことがわかった。

 しかし還元力は弱いことが分かっており、水を直接水素にすることはできない。

 今回の研究成果は、日本時間6月7日(月)午前2時(ロンドン現地時間6月6日18時)に、ネイチャー姉妹誌のNature Materials誌電子版に先行掲載された。

 

参考HP Wikipeia「光触媒」「二酸化チタン」・物質・材料研究機構「人工光合成の実現に大きく一歩前進  

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