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 「AIM」タンパク質とは何か?
 体の脂肪を減らす効果のあるたんぱく質を、東京大の宮崎徹教授(代謝遺伝学)のチームがマウスで見つけた。肥満を抑える薬に応用できる可能性がある。

 減量効果が確認されたのはたんぱく質「AIM」。血液中の免疫細胞が、動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールを取り込む際に作られる。脂肪細胞の中に入れると、血糖から脂肪を作る働きを抑える。このたんぱく質は脂肪細胞に対し、ため込んだ脂肪を使わせることも分かった。

 さらに、高カロリー食を食べさせて太らせたマウスに週2回、注射すると、体重の増え方が半分以下になった。人間にあてはめると、5週間で約20キロの減量効果があった計算になるという。培養した脂肪細胞にこのたんぱく質を加える実験でも、3日後に脂肪が4分の1ほどになった。

 このたんぱく質は、免疫細胞を培養すれば、大量に生産できる。薬として使うには、やせたい場所に直接注射する方法が有効だという。人間の体内でも作られるため、副作用が少ない。犬猫など多くの哺乳(ほにゅう)類で作られている。

 太りやすい人は、遺伝的にこのたんぱく質を作る働きが弱い可能性があるため、宮崎教授らは、健康診断を受けた人の遺伝子で関連がないか調べている。

 ただ、肥満が進行すれば、このたんぱく質は動脈硬化を進める可能性があるので注意が必要だという。9日付米科学誌セル・メタボリズムに掲載された。(asahi.com 2010年6月10日)

 糖が中性脂肪に変わるしくみ
 私たちが糖質(炭水化物)を食べると、唾液や膵液による消化吸収の過程で、ブドウ糖に分解される。その後、血液中にブドウ糖が増えてくると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌される。インスリンは、ブドウ糖をエネルギーに変換して、肝臓・筋肉・血液中にグリコーゲンとして溜め込む。

 私たちの体は、このようにして溜め込まれたグリコーゲンを、日々の活動に応じてエネルギーとして活用している。しかし、活用されないまま、余ってしまったエネルギーは、すべて中性脂肪に変換される。脂肪よりも糖質(炭水化物)の方がエネルギー源としては、先に使用され、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されてしまうしくみがある。

 インスリンには、血液中の糖が増加すると、分泌増加し、肝臓や筋肉に送りこんで血糖を下げる働きと、さらに余分な糖を中性脂肪として脂肪細胞に蓄えるのを促進するはたらきがある。

 皮下脂肪と内臓脂肪
 皮下脂肪とは、皮膚の下にあって、摘むことができる脂肪。一方、腹部の内臓の周りにあるのが内臓脂肪。皮下脂肪と内臓脂肪は別ものだが、構造的な差はない。

 代謝を見ると、内臓脂肪は皮下脂肪と比べて、より機能的に活発な細胞。活発というのは、脂肪を溜めやすく出し易いという意味と、生理的活性物質を多く作るという両方の意味がある。

 内臓脂肪は脂肪酸の出し入れが容易。筋肉が体重に対して女性より10%増しの男性は、筋肉を動かすための熱源となる内臓脂肪を、女性よりも多く持ちやすい傾向にある。

 男性ホルモンは筋肉を増加させると共に、その熱源の内臓脂肪を増加させる作用がある。男性は内臓脂肪がつきやすく太っ腹になりやすい。一方、女性ホルモンは内臓脂肪よりも皮下脂肪を蓄える傾向がある。

 

参考 東京大学プレスリリース「肥満抑制タンパク質AIM発見!」 

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