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 250万年前の地球
 今から300〜250万年前頃は、北半球に氷河が広がり、グローバルに寒冷化や乾燥化が進んだ時代である。この時代、アフリカに草原が広がるようになり、複数の種類が生息していた猿人の中の1種が原人に進化していく。  

 猿人と原人の大きな違いは脳の大型化である。脳を維持するには大きなエネルギーが必要である。大きな脳を支えるのは高カロリーで栄養に富んだ食糧、それは肉であった。肉を食べるようになった猿人が原人になった。

 人類が最初に石器を使って動物(牛)の肉をはぎ取って食したのは約250万年前。「アウストラロ・ガルヒ」という猿人。初期の原人の一歩手前で、石器を使って肉を食べた最初の人類といえる。石器の登場は肉食の質を格段に高めた。皮を剥ぎ取りやすくし、骨を砕いて骨髄を取り出すのも容易になった。

 それまでは人類は植物の根や木の実、果実、虫などを食べていたが、哺乳類の肉が加わることになった。食生活の革命である。石器を使うようになってほどなくの約240万年前、脳の大型化への道を歩み出した初期の原人「ホモ・ハビリス」が見つかる。石器による肉食の効率化が、大きな脳を支えるエネルギーになったと言える。

 この時代の日本、神奈川県あたりでは、ではどんなことが起きていたのだろう?

 250万年前の巨大噴火
 250万年前の地球は、寒冷期から温暖期へ移行していた。大陸をおおっていた氷河が溶け、このため海水面は前進、関東は広く海におおわれていた。陸地では、ミエゾウから進化した、アケボノゾウ(Stegodon aurorae)が、日本列島を歩いていた時代だ。

 早稲田大と首都大学東京の研究チームは7月30日、約250万年前に神奈川県・丹沢山地で巨大噴火が起きたことが分かったと発表した。1707年の富士山・宝永噴火に匹敵する大噴火で、当時は海だった関東平野一帯に火山灰が降り積もり、関東平野の土台を形成する厚い地層の一部をつくったという。

 チームは、神奈川県愛川町と同県鎌倉市で見つかっていた、ざくろ石(ガーネット)を大量に含む特徴的な火山灰層に着目。この地層の広がりを調べるため、東京都江東区と千葉県銚子市で地層を調べた。

 その結果、江東区と銚子市で神奈川県の2カ所の地層とほぼ成分が一致する火山灰層を発見。できた年代は、4カ所いずれも約250万年前であることも判明した。

 愛川町から銚子市へと東になるほどざくろ石の粒が細かく、細かい火山灰ほど遠くまで飛ぶことから、火山灰は愛川町より西側で噴出して東へ流れたと推定。噴火口の候補地として、ざくろ石の地層が知られている丹沢山地の谷沿いの岩脈を分析したところ、関東4カ所のざくろ石と組成が一致。この地層をつくったのは丹沢山地の大噴火だったと結論付けた。(毎日新聞 2010年7月31日)

 ざくろ石(ガーネット)とは?
 ざくろ石(柘榴石:garnet)は鉱物の1つ、ケイ酸塩鉱物(ネソ珪酸塩鉱物)のなかま。硬度は 6.5〜7.5と固い。他の鉱物が風化して、流出してしまうところ、固いので地層に残りやすい。宝石としてはガーネット、または紅榴石の名前でよばれる。1月の誕生石である。

 ざくろ石、ガーネットには宝石としての価値以外にもうひとつ興味深い話がある。

 アリゾナ州、ナバホ族居住区。ここにはアントヒルガーネット(蟻塚)と呼ばれる面白い名前のガーネットが存在する。

 風化した岩と砂が延々と広がるこの地域のある種の蟻は蟻塚を作る。彼らは地中を掘り進み土を地上に運んで巣を作るが、このときに邪魔になった地中のガーネットを巣の入り口に捨てる。当然蟻が運べるものなので豆粒より小さなものだ。これがアントヒルガーネットとして売られている。

 ガーネットは超高温、超高圧の条件下で生成される鉱物である。これと同じような条件で生成される鉱物がある。宝石の王、ダイヤモンドである。ダイヤモンド鉱床の中でガーネットはよくダイヤモンドといっしょに見つかる。時にはダイヤモンド結晶の中に含まれていることもある。

 したがってダイヤモンド鉱脈を探す時にガーネットはしばしばその指標として利用されることがある。アフリカのボツワナの砂漠で、ダイヤモンド鉱脈を調査していたデ・ビアス社はダイヤモンド探索の有効な調査方法として闇雲に地面を掘り返すのではなく、蟻塚に目をつけた。

 蟻たちは地中深くに穴を掘り、地下の土を地上まで運んでくる。巣作りに邪魔な鉱物は巣の周りに捨てるため、蟻塚の土にもしガーネットが含まれていれば、そこはダイヤモンド鉱脈の可能性があると考えたのだ。この推測を元に蟻塚の土壌を丹念に調べ続け、見事砂漠の中の眠っていたダイヤモンド鉱脈を発見したそうだ。(CROMAGNON「深紅の結晶」)

 丹沢山地とは何か?
 丹沢山地は、神奈川県北西部に広がる山地。東西約40キロメートル、南北約20キロメートルに及び、神奈川県の面積の約6分の1を占める。秩父山地等と合わせて関東山地とも呼ばれる。丹沢山地の大部分は山岳公園として丹沢大山国定公園と神奈川県立丹沢大山自然公園に指定されている。

 丹沢山地を構成する岩体の多くは南の海で1700〜1200万年前に活発だった海底火山の噴出物からできており、1000万年前にはこの岩体の中心に上昇してきたマグマが貫入し、少しずつ冷えて固まり西丹沢山地の多くを構成する石英閃緑岩体などとなった。

 また、このマグマの貫入により岩体が大きく盛り上がり、太平洋に浮かぶ火山島(火山島といっても海上に少し頭を出すくらいの島であった)となった。この火山島が載っていたフィリピン海プレートが徐々に北上し、500万年前には日本列島と衝突して本州と一体化した。その後、追うように北上してきた伊豆半島の岩体が100〜70万年前にかけて本州と衝突、この圧力によって丹沢山地の岩体が隆起し、山地が形成された。

 現在でも徐々に隆起を続けている。1923年の関東地震(関東大震災)やその余震の丹沢地震 (M 7.3) では1m前後の隆起や沈降が起き、山肌も崩壊し荒廃した。(Wikipedia)

 

参考HP Wikipedia「ざくろ石」「丹沢山地」「日本列島」 ・フォッサマグナミュージアム

最初のヒト
アン ギボンズ
新書館

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日本列島の生い立ちを読む (新装ワイド版 自然景観の読み方)
斎藤 靖二
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