科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる! 
オンラインショッピング フジ・コーポレーション  成長ホルモンでお肌いきいき 衣食住を楽しみ家族の絆『R+house』住宅

 家族承諾による臓器提供
 日本臓器移植ネットワークは8月9日、本人の書面による臓器提供の意思表示がない20代男性について、家族が脳死判定と臓器提供を承諾し、法的に脳死と判定されたと発表した。本人意思が不明でも家族の承諾で脳死後の臓器提供を可能にする改正臓器移植法が7月17日に全面施行された後、改正法に基づいて脳死後の臓器提供が実施されるのは国内初の事例となった。

 改正前は、書面で意思表示をしていた一部の人だけが対象だったが、今回のケースにより、臓器移植が多くの国民にとってより身近な問題になり、臓器提供を家族が判断する機会も増える新たな段階に入ったといえる。

 改正法の主目的には、臓器移植を希望する人に比べ臓器提供者が圧倒的に少ない状況の解消があった。改正前の7月の時点で、移植を希望し日本臓器移植ネットワークに登録した患者は1万2234人に上るが、最近の脳死からの臓器提供数は年10件前後にとどまっていた。

 旧法は、本人が臓器提供意思表示カードなどの書面で脳死臓器提供の意思を示していることが、提供の必須条件だった。日本臓器移植ネットワークによると、これまでは家族から「本人が提供したいと言っていた」との申し出があっても、書面がなく提供に至らない例もあったという。改正法は、そのハードルを下げ、生前に本人が拒否していない限り、家族が承諾すれば提供できるようにしたため、移植機会は増える可能性が高い。

 今回は、本人が生前に家族へ提供の意思を伝えていたが、今後は本人の生前の意思が不明な状態の中で、身内の死に向き合いながら、家族が決断を迫られることも起きるだろう。事前に家族で話し合っておくことは、提供を巡る心の負担を少しでも軽減することにつながるはずだ。

 今回の経過
 日本臓器移植ネットワークによると、男性は関東甲信越地方の病院に交通事故による外傷で入院していた。病院名や所在地などは「家族の意向」として発表していない。

 8月5日午後2時45分、病院から同ネットワークに連絡があった。同ネットワークのコーディネーターが同日、男性の家族に面会し、臓器提供の意向について確認したところ、男性は臓器提供意思表示カードは持っておらず、健康保険証や運転免許証などにも提供意思や提供を拒否する記載はなかった。

 だが、生前の会話の中で「万が一のときは臓器提供をしてもいい」という意向を家族に伝えており、家族の総意として提供を決めた。男性が意思を伝えた時期や頻度については、同ネットワークは「現段階で把握していない」としている。

 8月8日午後7時41分に男性の家族は、脳死判定と臓器摘出を承諾する書類を提出し、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓(すいぞう)・小腸・眼球の提供を承諾。

 8日午後9時半から午後11時12分、1回目の脳死判定。
 9日午前10時26分に始まり、午前11時55分に2回目の脳死判定は終了した。その後、臓器の摘出手術
が同病院で行われた。移植ネットは、移植希望を登録して待機している患者の中から、血液型や緊急度に応じて移植を受ける患者を選定。

 10日午前9時10分ごろ、愛知県豊明市の藤田保健衛生大病院病院に腎臓、と膵臓が到着し、午後0時20分過ぎに手術が始まった。50代女性に腎臓、続いて膵臓が移植され、約10時間40分後に終了した。手術を担当した杉谷篤・同大教授は「法律が変わったからといって技術や気持ちが変わったことはない。今まで通り、決められた通り粛々と進んでいった」と話した。

 10日、他の全国の4病院でも患者に移植された。心臓は国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)で20代男性に、両肺は岡山大病院(岡山市)で20代男性に、、肝臓は東京大病院(東京都文京区)で60代女性に、他の1つの腎臓は群馬大病院(前橋市)で10代男性に提供された。(2010年8月10日  読売新聞)

 改正・臓器移植法のポイント
 臓器移植法の改正点は2つ。1つは改正前、臓器提供にはドナーカードによる意思表示が必要であったが、改正後は、本人の同意がなくても、家族の同意があれば臓器提供できることになった。

 また、改正前、15最未満の子供の臓器提供は禁止されていたが、改正後は年齢制限はなく、生まれて間もない乳幼児も臓器提供が可能になった。

 ただし生後12週〜6歳未満の子の場合、第1回法的脳死判定から、最低24時間あけて第2回法的脳死判定を行うことになった。その後、コーディネーターにより臓器提供を受ける患者への連絡、家族へ最終の意思確認後、臓器摘出となる。

 臓器移植法の問題点
 医師により「脳死」と判定されれば、家族の同意で臓器移植が可能になった。つまり、生きている人から臓器は取れないので、法律上は「脳死」を人の「死」と認めたことになる。そして、その判定をするのが医師である事も問題だ。

 これには当然、反対の意見を持つ人達も多い。例えば植物状態で寝たきりの患者を持つ家庭では、家族を「死人」とは認めたくないであろう。医師の間でも意見が分かれている。脳死とされた人でも、体の一部分が動いていたり、温かかったりする。「あいまいな判定で、生きることを断念させられることは絶対にあってはいけない」と話す医師もいる。 

 改正により臓器移植の可能性が増えて良かったように思える。しかし、医師による「脳死」の判定が、何をもって「脳死」とするかはっきりしていないこと、また「脳死」=「人の死」であることは、科学的に証明されていないこと(法律で決められたに過ぎない)、そして、他人の臓器である以上どうしても拒否反応は避けられないということなどの問題がある。

 もともと、死後の世界は宗教の分野であったが、我が国の宗教は終戦後、表舞台から姿を消してしまったため、公教育でも正しい宗教教育が行われず、家庭に信仰がなければ、何を持って死とするかが、わからない状態が続いている。「宗教の不在」これも我が国の問題である。 

 

参考HP アイラブサイエンス「臓器移植法改正・脳死は人の死?」 ・日本臓器移植・ネットワーク

臓器移植と脳死―日本法の特色と背景 (成分堂新書)
中山 研一
成文堂

このアイテムの詳細を見る
脳死論議ふたたび?改正案が投げかけるもの

社会評論社

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ ランキング ←One Click please