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 薬剤耐性菌とは?
 薬剤耐性菌(耐性菌)とは、病原体が、自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなること。 

 9月3日、帝京大病院(東京都板橋区)で、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニ(MRAB)に患者46人が院内感染し、死亡者を出したと思ったら、獨協医大病院(栃木県壬生町)は6日、ほとんどの抗生物質が効かない新しい耐性菌が入院患者から検出されたと発表した。

 こちらの方は、インドや欧州で感染が広がっている「NDM1」と呼ばれる遺伝子を持つ大腸菌で、国内初の感染確認となる。患者は退院して現在は保菌しておらず、他の患者への感染もないという。

 「NDM1」感染ルート
 感染者はインド渡航歴がある50代の日本人男性で、帰国後の昨年4月、別の病気で入院した。5月中旬に約38度の発熱があり、血液検査で抗生物質が効かない多剤耐性大腸菌が検出された。

 同病院は今年8月、厚生労働省のNDM1への注意喚起や、英医学誌の論文から、大腸菌がNDM1遺伝子を持つ可能性があると推測し、保存菌の遺伝子を検査した。その結果、8月27日にPCR法で陽性が確認され、30日に遺伝子配列がNDM1遺伝子と100%一致した。検査結果は、27日と30日に栃木県県南健康福祉センターに連絡し、県は30日、国立感染症研究所に報告したという。

 男性は個室に入院し、医師らも耐性菌が検出されてから手袋やマスクなどで院内感染対策を強化した。男性は多剤耐性大腸菌検出は1回だけで、昨年10月の退院時には自然治癒していたという。

 同病院の菱沼昭准教授によると、男性はインドで医療機関を受診しており、同国で感染した可能性が高いという。菱沼准教授は「毒性が高い菌ではない。健康な方なら菌を持っていても症状は出ないと思う」と話し、北島敏光病院長は「症例は初のケースだが感染拡大を防止できた」としている。
(毎日新聞 2010年9月6日)

 「多剤耐性菌」厚労省の対応
 こうした状況に対し、厚生労働省は6日、帝京大学病院(東京都板橋区)で院内感染を起こした多剤耐性菌の全国調査に乗り出す方針を決めた。独協医科大学病院(栃木県)で見つかった別の新タイプの多剤耐性菌への対応も検討し始めた。いずれも海外で先行して感染が広がっており、国内での拡大に危機感を強めている。

 帝京大学病院で発生したのは複数の抗生剤が効かない細菌アシネトバクターだ。健康な人なら感染しても自分の免疫力で抑えられるほどの毒性だ。福岡大学病院や藤田保健衛生大学などで一昨年から今年にかけ、20人以上の患者が院内感染しており、集団感染事例が増えている。

 一方、6日に獨協医科大学病院がインドから帰国した患者から見つかったと発表したのは「NDM1」という新型の多剤耐性の遺伝子を持つ大腸菌だ。インドやパキスタンで広まっているとみられている。欧州では、多くの人が医療費が安い現地へ美容外科手術などを受けに行く。治療の際に感染し帰国する例が問題になっていた。

 国立感染症研究所の荒川宜親・細菌第二部長は「大腸菌は誰もが持っている。必要以上に怖がることはないが、(健康な人でも)膀胱(ぼうこう)炎などの症状がある場合、原因の可能性もあるので早めに医療機関を受診して欲しい」と呼びかける。

 WHO警告「NDM1」
 英医学誌ランセットの姉妹誌に8月に掲載された論文ではインドやパキスタン、英国などで見つかった180例を分析。「NDM1は他の菌にうつりやすく、他の菌が多剤耐性化する危険性がある」と警告している。すでに海外では、毒性は強くない菌だが、肺炎桿(かん)菌でも広まっている。食中毒を起こすサルモネラなど毒性の強い菌にうつる恐れも指摘されている。

 世界保健機関(WHO)は論文を受けて「各国政府は耐性菌の発生をきちんと監視すると同時に、抗生剤の誤った使い方を是正し、医療従事者らに手洗いなどの感染対策を徹底するよう改めて周知して欲しい」という声明を出した。

 アシネトバクターは集団感染例が複数出始め本格的な拡大が心配される。NDM1は集団感染ではないが1例目だ。厚労省や研究者は警戒を強めている。(asahi.com 2010年9月7日)

 「NDM1」とは何か?
 今回、獨協医科大学病院で発見された「NDM1」とは何だろう?

 NDM1とはニューデリー・メタロベータラクタマーゼ1(New Delhi metallo-beta-lactamase-1)のことで、2007年に発見され、2008年1月に同定された細菌の新型酵素である。強力な新型多剤耐性菌を作るので恐れられている。この酵素を持つ細菌の総称としても用いられている。

 欧米での幅広い報道は、ランセット感染症誌オンライン版2010年8月11日号にイギリス・インドで感染が広がっている状況と、ほとんどの抗生物質に耐性を持つことが報道されてから始まった。その後パキスタンでの交通事故後帰国したベルギー人が、この病気に効くと言われるコリスチンの投与にもかかわらず6月に死亡したことが判明し、日本でも大きく報道された。

 NDM1遺伝子があらゆる細菌を耐性化する?
 この酵素を持つほとんどの細菌では、各種の抗生物質による治療が効かないばかりでなく、多剤耐性菌の治療の切り札だったカルバペネム系抗生物質に対する耐性を持たせる。そのため、これが広がると「抗生物質が存在しない(細菌治療が困難な戦前の)時代」に戻るのではないかと恐れられている。

 ペニシリンやセフェム系薬のみならず、カルバペネムなどほぼ全てのβ-ラクタム系抗生物質や、フルオロキノロン系、アミノ配糖体(アミノグルシド)系など広範囲の抗生物質に耐性を持つ。チゲサイクリン(日本未承認)やコリスチンには、感受性を示す株が多い(効かない株もある)とされている。

 酵素であるので細菌の種類によらず耐性化させる。この酵素の遺伝子は染色体DNAとは別に存在するDNAプラスミド上にあるので、細菌の種の壁を飛び越しやすい。大腸菌、クレブシェラ菌、肺炎桿(かん)菌などでの感染報告がある。

 現在院内感染で耐性菌問題の中心はアシネトバクターや緑膿菌などである。常在大腸菌に感染すると症状を見せない(不顕性感染)感染者が自覚のないまま行動し、院内感染のみならず市中感染の制御も困難になる。また院内感染などで他の病原性の強い菌や感染力の強い菌がNDM-1を持つ(水平伝播)と、新型インフルエンザ以上の社会問題になる可能性が考えられる。(Wikipedia)

 

医療環境における多剤耐性菌管理のためのCDCガイドライン〈2006〉
満田 年宏
ヴァンメディカル

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もう抗生物質では治らない―猛威をふるう薬剤耐性菌
マイケル シュナイアソン,マーク プロトキン
日本放送出版協会

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