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 現代人の祖先、「デニソワ人」と交雑
 現代人の祖先が、別の人類とされるデニソワ人と交雑していたことが、独マックス・プランク進化人類学研究所などの国際チームの研究でわかった。

 現代人の祖先が、世界各地で先住の人類を絶滅させつつ広がったとする従来の説を、覆す可能性がある。12月23日付の科学誌ネイチャーに発表された。

Denisova hominin

 シベリアのアルタイ山脈の遺跡で発見されたデニソワ人の骨を使い、細胞核のゲノム(全遺伝情報)の一部を解読した。世界各地の現代人のゲノムと比較したところ、オーストラリア北東の島々に住むメラネシア人は、ゲノムの4~6%がデニソワ人固有のものと一致していた。

 研究チームによると、人類の祖先は40万~30万年前にアフリカを出て、ヨーロッパに移動した集団がネアンデルタール人に、アジアに広がった集団がデニソワ人になった。それに遅れて6万~5万年前にアフリカを出た現代人の祖先が先住者と交雑し、今に至ったらしい。欧州やアジアなどの現代人の祖先とネアンデルタール人との交雑を示す研究成果は、今年5月に発表されている。異なる人類どうしの交雑、共存が一般的だった可能性が出てきた。(2010年12月23日12時20分  読売新聞)

 デニソワ人とは何か?
 デニソワ人(Denisova hominin)は、ロシア・アルタイ地方のデニソワ(Denisova)洞窟に約4万1千年前に住んでいたとされるヒト属の一種の個体および同種のヒト属である。

 2010年12月現在の最新研究では、ネアンデルタール人と並んで、我々現生人類であるホモ・サピエンス (Homo sapiens) に最も近い化石人類である。また現生人類の一部(メラネシア人)と遺伝子情報を部分的に共有する可能性が高いとしている。

 2008年、ロシア西シベリアアルタイ山脈のデニソワ(Denisova)洞窟で子どもの骨の断片が発見され、放射線炭素の年代測定により約41,000年前のものと推定された。また、同じ場所で、大人の臼歯も発見されている。

 2010年3月25日付のイギリスの科学雑誌『ネイチャー』(Nature)において、マックス・プランク進化人類学研究所の研究チームは、発見された骨のミトコンドリアDNAの解析結果から、デニソワ人は100万年ほど前に現生人類から分岐した未知の新系統の人類と発表した。

 今回、2010年12月23日、マックス・プランク進化人類学研究所などの国際研究チームにより、見つかった骨の一部は5~7歳の少女の小指の骨であり、細胞核DNAの解析の結果、デニソワ人類はネアンデルタール人類と近縁なグループで、80万4千年前に現生人類であるホモ・サピエンスとの共通祖先からネアンデルタール・デニソワ人類の祖先が分岐し、64万年前にネアンデルタール人類から分岐した人類であることが推定された。

 ジョージ・ワシントン大学の古人類学者のブライアン・リッチモンドは、デニソワ洞窟で見つかった大人の臼歯からデニソワ人類は体格はネアンデルタール人類と同じか、それよりも大きいとみている。

 謎の多いデニソワ人
 現生人類との関連などは、2010年12月現在のところ仮説を科学的に検証している段階であり、これからの発見により変更される可能性もある。デニソワ人類の体格などの外形、生活様式、人口などはこれからの研究が待たれる。

概略のところは、現在、人類の起源はアフリカと考えられている。約190万年前、猿人から進化した原人がアジアへ移動。原人は、約47万年前にネアンデルタール人の祖先と現生人類の祖先にそれぞれ進化したとされている。

アフリカを出、中東を経てヨーロッパに拡がった集団がネアンデルタール人類に、中東を経てアジアに移動した集団がデニソワ人類になった。それに遅れて6万~5万年前にアフリカを出た我々現生人類の祖先は、中東や中央アジアで先住者のネアンデルタール人類やデニソワ人類と交雑しながら全世界に拡がり、現在に至った。

ネアンデルタール人類やデニソワ人類はその後絶滅してしまったが、現在の人類遺伝子のうち数%は彼ら由来である。 中東での現生人類祖先とネアンデルタール人類との交雑を示す研究成果は2010年5月に発表されているが、アジア中央部におけるデニソワ人類とも現生人類祖先は交雑したとする研究結果が出たことから、過去には異なる人類どうしの交雑・共存も一般的だった可能性が出てきた。

なお、アジア中央部でデニソワ人類と交雑した現生人類祖先は、そののち長い期間をかけてメラニシアなどに南下していったと考えられる。

 ホモ・サピエンス、ネアンデルタール人とも交流  
 一方、2010年5月、ドイツのマックスプランク進化人類学研究所などの国際研究チームが、現生人類(ヒト)の一部はネアンデルタール人と交雑し、その遺伝子を受け継いでいたことを発見している。ネアンデルタール人のゲノム(全遺伝情報)配列を解析し、突き止めた。5月7日付の米科学誌サイエンスでその概要版を発表された。

 ネアンデルタール人はヒトに最も近い種の人類。約40万年前に現れ、欧州を中心に西アジアで生存、約3万年前に絶滅したとされる。約20万年前にアフリカで現れたヒトと同じ地域で生きていたが、両者の間に交雑はない、との考えが有力だった。

 研究チームは、クロアチアの洞穴から発掘された4万年ほど前の3人のネアンデルタール人女性の骨片を使い、ゲノム配列を調べ、ネアンデルタール人のゲノム全体の約6割を解明した。

 この情報とフランス、中国、パプアニューギニア、アフリカ南部と同西部の5人のヒトゲノムとを比べた。すると、アフリカ以外のヒトはゲノムの1~4%がネアンデルタール人由来と推測できた。子孫を残せるほど近い関係だったことになる。

 同チームはヒトの移動時期を踏まえ、アフリカを出た初期のヒトは10万~5万年前の間に中東でネアンデルタール人に遭って限定的に交雑し、その後、欧州やアジアに広がったと考えられるとした。また、認知機能や頭の骨の発達にかかわるとされる遺伝子は両者の間で大きな違いがあることもわかったとしている。

 国立科学博物館人類史研究グループの篠田謙一グループ長(分子人類学)は「人類の本質を探るための第一歩となる研究成果だ。未知の部分の多いヒトの遺伝子の働きについてさらに理解が深まれば、ネアンデルタール人についても同時にわかるようになるだろう。両者は分岐して数十万年しかたっておらず生物学的には交雑は可能と思っていたが、その考えがより強まった。ただ、交雑したと確定させるには、より古い時期のネアンデルタール人のゲノムを調べたり、ヒトがアフリカを出た時期を再検討したりするなどもう一段階必要だ」と話している。(asahi.com 2010年5月7日)
 

参考HP Wikipedia「ネアンデルタール人」・アイラブサイエンス「ロシアで発見!デニソワ人とは何か?

出アフリカ記 人類の起源
クリス ストリンガー,ロビン マッキー
岩波書店
人類の起源 (「知の再発見」双書)
エルベール トマ
創元社

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