レアアースの供給源

 マンガン団塊(manganese nodule)は、成分が海水中から沈澱して生じた球状のかたまりで、主にマンガンや鉄を成分とし、銅やニッケルなどを含んでいる。マンガンバクテリアによって形成されたとの考えもある。ハワイ諸島の南から東にかけての海域に多くみられる。 水深4,000~6,000mの深海底に分布しており、埋蔵量は1兆7,000億トンにのぼると推測されている。レアアースやレアメタルの供給源としても期待されているが、分布が深海底である上に、薄く広く存在しているため、商業的な採掘へは課題が多い。

 これと同様に海底の露岩などの表面に殻(クラスト)のように成長する、鉄マンガンクラストという鉱物がある。1 mm程度の薄いものから最大で厚さ40 cmのものまで存在する。成長は極めて遅く、厚いものは数千万年かけて成長する。陸起源物質の影響が少ないため、過去の海洋環境変動や気候変動の長期にわたる記録が残されていると期待され、隕石など地球外物質の痕跡も残っている可能性がある。

 今回、産業技術総合研究所のグループと高知大学、米国マサチューセッツ工科大学・米国ヴァンダービルド大学と共同で、海底の鉄マンガンクラストに残された過去の地球磁場の痕跡から、地磁気逆転現象と磁場の形成年代、成長速度を推定する研究が発表された。いったいどうやって、地球の歴史を調べたのだろうか?

FeMn

 地球の化石“鉄マンガンクラスト”
 鉄マンガンクラストには数千万年にわたる海洋環境や気候変動の記録が残されており、鉄マンガンクラストの正確な形成年代を決めることで、長期にわたる過去の地球環境情報の精密な復元が期待される。これまで鉄マンガンクラストの形成年代を推定する方法は、化学分離と加速器質量分析装置によるベリリウムなどの同位体分析しかなかったが、分析に手間や時間がかかるという問題があった。そのため、迅速かつ正確な物理計測による形成年代と成長速度の推定方法が待ち望まれていた。

 この研究は超伝導量子干渉素子(SQUID)を利用したSQUID顕微鏡を用いて鉄マンガンクラストの薄片表面の磁場を読み取って、世界で初めて0.1 mm単位の高分解能で過去の地球磁場逆転の記録を復元し、標準地球磁場逆転年代軸との比較によって形成年代と成長速度を推定することができた。その結果「鉄・マンガンクラスト」には確かに、過去数百年もの間に、何回も地磁気逆転現象が起きているのが、観察できた。その結果は、これまで行われていた、ベリリウムなどの同位体分析を使う方法とほぼ一致した。

 今後は産総研においてSQUID顕微鏡の導入・開発を進めることにより、鉄マンガンクラストの成長過程の解明を迅速かつ詳細に行いたい。これによって、長期間にわたる地球環境情報の精密な復元を行う。研究成果の詳細は、2011年3月1日に米国の学術誌Geologyにて発表された。

 地軸逆転現象とは何か?
 地球は大きな磁石である。現在は北極部にS極、南極部にN極に相当する磁極がある。地球の双極子磁場は自転軸に対して約 10.2 度(2006年)傾いているため、地理上の極と磁極の位置にはずれがある。

 地表で観測される磁場は、その大部分は、地球内部の外核といわれる部分で発生している。ここでは鉄が主成分となっており、巨大な圧力と高温のため溶融状態にある。地球内部磁場はこの導電性の高い鉄の流体運動により生じる電流により発生するものと考えられ、盛んにその研究が行われてきた。地球は大きな電磁石と言える。

 地磁気逆転とは、地球の地磁気の向きが、かつては現在と南北逆であったとすること。地球の磁場の歴史の中では、いつも磁石のN極が北極方面を指していたわけではなかった。磁極が入れ替わる地球磁場の逆転が最近360万年の間に11回もあったことがわかっている。最も新しい逆転がおこったのは、78万年前である。なぜこのようなことが分かったのだろうか?

地磁気逆転の発見者は日本人
 1600年に、ウィリアム・ギルバートが地球は一つの大きな磁石であると主張した。1828年には、ガウスが地磁気の研究を開始した。さらに1906年には、現在の地磁気の向きとは逆向きに磁化された岩石が発見された。

 1926年、京都帝国大学(現在の京都大学)教授の松山基範が、兵庫県の玄武洞の岩石が、逆向きに磁化されていることを発見した。松山はその後、国内外36か所で火成岩の時期の調査を行い、他にも逆向きに磁化された岩石を発見した。松山は1929年、地磁気逆転の可能性を示す論文を発表した。当時の常識に反する考え方だったため、当時の評判はよくなかった。

 その後、古地磁気学が盛んになり、年代測定の技術も進歩した。古地磁気学とは、岩石などに残留磁化として記録されている過去の地球磁場(地磁気)を分析する地質学の一分野。火山岩や堆積岩には、それができた時のできた場所の磁場が記録されており、それを分析することで、地磁気の逆転や大陸移動の様子などを調べることができる。その結果、地磁気が逆転を繰り返していることがはっきりしてきた。

 1964年には、アメリカの研究グループが地磁気極性の年代表を発表した。このとき、アラン・コックスは2つの「逆磁極期」(反対は「正磁極期」)のうちの1つに、松山の名前を選んだ。

 現在では、2つの逆磁極期があったことが判明している。約500万年前から約400万年前の逆転期は、「ギルバート」と名づけられ、258万年前から78万年前の逆転期は「松山」と名づけられている。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia「マンガン団塊」「古地磁気学」・産業技術総合研究所「海底の鉄マンガンクラストの形成年代

地磁気逆転X年 (岩波ジュニア新書)
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岩波書店
海底鉱物資源?未利用レアメタルの探査と開発?
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