5月は土星が観望の好機
土星は現在、おとめ座にあり、明るさは0.6~0.7等。5月中旬の21時頃には、ほぼ真南の空に見え、観望の好機である。土星は木星と同じように主に水素とヘリウムで構成されている。その体積は地球の755倍で、上層大気の風速は赤道地域では毎秒500メートルに達する。ちなみに、地球上に吹く最も強い風は最大風速およそ110メートルである。そのような土星の超高速の風と土星内部から上がってくる熱との相互作用が、大気中の黄金の帯模様を生み出している。
土星の環は太陽系で最も大きく複雑であり、外側へ数十万キロも広がっている。1980年代の初頭にはNASAの宇宙探査機ボイジャー2機が、土星の環が主に水氷できていることを明らかにした。「編まれている」ような環、小環、そして「スポーク」もボイジャーによって発見されている。スポークとは、環の暗い部分で、その周囲にある環の構成要素とは異なる速度で土星を公転している。土星の小さな衛星の2つは、主要な環の隙間で公転している。
1997年、カッシーニ (Cassini-Huygens) は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)によって、打上げられた土星探査機であり、現在も土星を観測している。2006年には、土星の環の中に小さなプロペラ状の構造を発見した。当時、この構造は環の中に埋もれた小衛星の重力によるものと考えられていたが、今回、国立天文台の研究チームが大規模シミュレーションによって、プロペラ構造が形成されるのを世界で初めて明らかにした。
土星の環にひそむプロペラ構造を解明
国立天文台の道越秀吾(みちこししゅうご)氏、小久保英一郎(こくぼえいいちろう)氏の研究チームは、環や小衛星の特性をより忠実に再現した大規模なコンピュータシミュレーションを行い、プロペラ構造の形成機構を調べた。
すると、中心にある小衛星の周囲にプロペラのような形をした穴が形成された(画像3枚目)。また、小衛星周囲の環に「ウェイク構造」と呼ばれる細かい縞模様ができている。これは環自身の重力によるもので、土星の環の高密度領域に存在すると考えられている。
さらに、プロペラが形成される条件を調べるためにさまざまな設定値でシミュレーションしたところ、周囲の環の質量が小さい場合はウェイク構造もプロペラ構造も形成されるが、周囲の環の質量が大きい場合はウェイク構造のみが見られプロペラ構造は形成されない、という結果が得られた。
ウェイク構造が現れるような、大量の粒子データを扱う大規模シミュレーションはこれまでの計算機では困難だったが、GRAPE-DRシステムによる1ヶ月におよぶ計算により、ウェイク構造が現れる実際の土星の環に近いと考えられる構造でのプロペラ構造形成条件を世界で初めて明らかにした。
研究チームでは、今後さらにシミュレーションを進めて、プロペラ構造の形や大きさと周囲の環の性質との関係を詳細に調べていくことを計画している。将来は惑星の環の起源についての研究も行いたいとのことだ。さらに、今回の検証内容は多数の微惑星(太陽系初期に存在した微小天体)から惑星が形成されていく過程とも共通していることから、惑星の環の研究を通じた惑星形成理論の検証にも発展させたいということである。(国立天文台)
参考HP National Geographic 環に囲まれた土星 アストロアーツ・国立天文台 土星の環にひそむプロペラ構造
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