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 透明人間の夢
 将来、透明人間も夢でなくなるかもしれない。理化学研究所は、生物試料を透明にする水溶性試薬「Scale試薬」を開発し、試料を傷つけることなく表面から数ミリの深部を高精細に観察する技術を確立した。

 例えば、ホルマリンで固定した哺乳類動物の脳をScale溶液に浸すだけで透明化することができる。神経細胞を蛍光タンパク質で標識したマウスの脳に適用すると、神経回路の詳細な3次元構造を脳全体にまで広げて再構築することができる。これは、理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダー、濱裕研究員らが、JST戦略的創造研究推進事業「(ERATO)」宮脇生命時空間情報プロジェクトと共に行った研究の成果。

 研究グループは、保湿クリームや肥料に広く使われている尿素をもとにして、生体試料内の光散乱を最小限に抑える水溶性試薬「Scale」を開発し、生体試料をゼリーのように透明化することに成功した。

Scale

 Scaleは、生体試料内の光の吸収にはまったく影響を与えず、生体試料内に存在する蛍光色素、特に蛍光タンパク質のシグナルにもまったく影響を与えないので、蛍光標識した構造を生体試料の深い部位まで高精細に観察することが可能になる。

 だが、実験動物が「透明人間」のようになることは当分ないだろう。Scaleは生きたままの動物に使用するには毒性が強すぎるためだ。しかし宮脇氏は、いずれこの問題は解決すると考えている。

 「われわれは目下、別のもっと毒性の弱い試薬候補の研究を進めている。開発に成功すれば、生きたままの組織を、透明度はやや落ちるが同じやり方で調べられるようになる。その結果、以前はまったく不可能だった研究にも可能性の扉が開くだろう」と宮脇氏は述べている。今回の研究は、「Nature Neuroscience」誌オンライン版に8月30日付で発表された。

 透明試薬「Scale」
 新開発の化学薬品によって、近い将来、頭の中を科学者に見透かされてしまう時代が来るかもしれない。この薬品は、脳組織を完全に透明化できるからだ。 

 「Scale」というこの化学薬品は、生体組織を透明化して光を奥深くまで通すことにより、細胞その他の構造に標識としてつけられた蛍光を直接観察できるようにするものだ。開発者たちによると、この発明は、医用画像の新たな領域を拓く可能性を秘めているという。

 日本の理化学研究所脳科学総合研究センターの宮脇敦史氏は、プレスリリースの中で次のように述べている。「今回の研究では、主にマウスの脳を材料にしたが、Scale技術はマウスや脳以外にも適用可能だ。心臓や筋肉、腎臓といった他の器官や、霊長類およびヒトから採取した生検組織試料への適用も目指している」。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部の神経学者ポール・トンプソン氏は、Scaleで透明化されたマウスの器官や胎児の写真に驚いたと話す。「脳画像を研究して20年になるが、これを見て本当にあっと驚いた」。トンプソン氏は今回の研究には参加していない。

 Scaleの成分
 Scaleは、比較的シンプルな材料からできている。尿の主成分である尿素、グリセロール、それに「TRITON X」の名で知られる界面活性剤だ。

 マウスの脳、さらには胎児を丸ごとScale溶液に2週間漬けたところ、いずれも透明に変化した。

 これまでにも、医用画像向けに細胞を透けて見えるようにする薬品は開発されているが、Scaleが従来の薬品と違うのは、観察したい蛍光タンパク質のシグナルまで一緒に消し去ってしまわない点だ。蛍光タンパク質は、ニューロンや血管などの小さな身体構造に標識をつけるのに用いられている。

 この蛍光イメージング技術は現在、脳の細胞構造のマッピングなどに用いられているが、理化学研究所によると、Scaleはこの種の研究にかつてない成果をもたらすことが期待できるという。

 UCLAのトンプソン氏によると、Scaleはそのほか、CTスキャンやMRI(核磁気共鳴画像法)といった、より複雑で高価な技術に頼る前に、撮像対象を詳しく観察する上で役立つ可能性があるという。

 「治療の効果が、脳や器官の治療したい部分に本当に到達しているかどうか、視覚的に確認できるようになるかもしれない。例えば、アルツハイマー病の治療において、脳に蓄積する班を除去したい場合、薬剤が本当に班を除去しているかどうか見られるようになれば、これは大きな進歩になりうる」とトンプソン氏は述べている。(Brian Handwerk for National Geographic News
September 5, 2011)

参考HP 理化学研究所 生体をゼリーのように透明化する水溶性試薬 
National Geographic news
脳を透明化する試薬、ヒトへの応用も

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