女性の方が長寿の理由
2011年9月13日TBS放送の「教科書にのせたい!」では、ミトコンドリアと健康についてわかりやすく解説していた。
どこの国も、男性よりも女性の方が長生きをする。なぜ女性の方が長生きなのか?その謎が、最近になって科学的に解明された。それは女性の方がミトコンドリアが多いからだった。また、健康な人とそうでない人では、量が全く違い、不健康な人はミトコンドリアの量が少ないという。
筋肉には赤筋と白筋があり、赤筋は白筋より、体積が大きいため、毛細血管が多く、酸素が豊富に供給される筋肉組織。したがって、このミトコンドリアは、白筋よりも赤筋の方に多く含まれている。白筋は瞬発力を発揮する筋肉で、赤筋は有酸素運動でつくられる持久力型の筋肉でもある。この筋肉が女性に多いのだ。
2つ目は社交ダンス。社交ダンスは背中をピンとしなければいけないので、その姿勢を維持する筋肉にミトコンドリアが多いので、その姿勢を3分続けると増えるという。
番組では、簡単に踊れるステップを紹介。左足を前に、右足を後ろに一歩ずつ動かすマンボのステップで、ポイントはまっすぐ伸ばした背筋だという。また、有酸素運動で持久力をつければダンスでなくても、ミトコンドリアは増えると考えられる。
3つ目のポイントは食べ物。ミトコンドリアが増える5品目で、ニラ、にんにく、トマト、するめ、ブロッコリーの新芽を紹介。この5品目には、老化を進める活性酸素を抑制する物質などが入っているという。
ミトコンドリアとは何か?
ミトコンドリア(mitochondria)は真核生物の細胞小器官である。二重の生体膜からなり、独自のDNAを持ち、分裂、増殖する。酸素呼吸(好気呼吸)の場として知られている。つまり、栄養分を酸素で燃やし、エネルギーをつくり出す。ヤヌスグリーンによって青緑色に染色される。
ミトコンドリアは、ほとんど全ての真核生物の細胞に含まれる細胞小器官である。 直径は0.5μm程度であるが、形状は生物や細胞の置かれている条件によって多様である。球形、円筒形のものから紐状あるいは網目状のものまであり、長さが10μmに達するものも珍しくない。 1細胞あたりの数は、1つに維持されている細胞もあるが、多い場合では数千個のミトコンドリアが絶えず分裂と融合を繰り返しているものもある。
ミトコンドリアは外膜と内膜という二枚の脂質膜に囲まれており、内膜に囲まれた内側をマトリックス、内膜と外膜に挟まれた空間を膜間腔と呼んでいる。内膜はマトリックスに向かって陥入しクリステ(稜)と呼ばれる特徴的な構造となる。
エネルギーである、ATP産生はミトコンドリアの主たる機能であって、これに関わる多くのタンパク質が内膜やマトリックスに存在している。細胞質には解糖系があり、ブドウ糖を代謝することでピルビン酸とNADHを生じる。もし酸素が十分に存在しない場合には解糖系の産物は嫌気呼吸により代謝される。しかしミトコンドリアで酸素を用いてこれらを酸化する好気呼吸を行うことで、嫌気呼吸と比べてはるかに効率よくATPを得ることができる。嫌気性分解では1分子のグルコースから2分子のATPしか得られなかったのが、ミトコンドリアによる好気性分解によって、1分子のグルコースから38分子のATPが合成できるようになった。
ピルビン酸だけでなく、脂肪酸を利用することもできる。植物のミトコンドリアは酸素がなくとも亜硝酸を利用してある程度のATP産生が可能である。
鶴は千年、亀は万年
皆がよく知っている「鶴は千年、亀は万年」という言葉がある。千年、万年は大げさだが、鶴も亀も長生きする動物。鶴は50年から80年、亀は120年から150年の寿命があるようだが、鶴と亀では長寿の仕組みに違いがある。
亀は徹底的に消費エネルギーを節約することで、老化の原因となる活性酸素の発生を抑え、長寿を果たす。言うなれば省エネ型長寿の代表といえる動物。一方、渡り鳥である鶴は、空を飛ぶためにとても多くのエネルギーを使う消費型の動物。それにも関わらず長寿であるのは、鶴の持っているミトコンドリアにその秘密がある。
鶴に限らず一般に鳥のミトコンドリアからは非常に多くのエネルギーが作られるが、その割にその製造過程で発生する活性酸素の量がとても少ない。つまり、エネルギー産生能力の高さが鳥のエネルギー消費型生活を支え、活性酸素発生の少なさが長寿を可能にしている。
鳥が長寿というと「え、そうかな?」と思われるかもしれない。動物はサイズによって機敏さや寿命が違う。小さな動物ほど素早く動き、心臓の鼓動も早く、総じてサイズが小さい動物の方が寿命が短いと言える。飼育された小鳥の寿命は平均で10年から20年と言われており、鳥の大きさを考えるとその寿命は驚異的と言える。ちなみにハトとほぼ同じ大きさのハムスターの寿命は3年程度だ。
ミトコンドリアと活性酸素
活性酸素の害が注目されるようになって、すでに20年以上がたった。運動をするとエネルギー代謝が活発になり、たくさんの酸素が消費され、活性酸素も発生する。だから、「運動は健康のためには良くない」という考えから、「運動しない健康法」のような本も出版された。7、8年前に活性酸素の紹介をした私自身も、マラソンやトライアスロンのような過度な運動をすると、寿命を縮めるような話を皆さんにしていた。
日本医科大学の太田茂男教授は、「エネルギー生産量に比例して活性酸素が生じる」の「比例して」という点と、活性酸素を消すシステムを私たちが持っていることを無視している点に、この議論の間違いがあると指摘している。
鳥型ミトコンドリアのように活性酸素の少ないミトコンドリアを作ることはできるし、ミトコンドリアを増やして全体の量を増やせば、活性酸素を消す機能も良くなる。人間の中には質の良い鳥型ミトコンドリアを生まれつき持った人達がいる。それが2時間台で走るようなマラソン選手である。私は訓練によって自己ベスト3時間半で走るマラソンランナーですが、長時間走れる筋力を身につけたことで、体内のミトコンドリアは以前より増えていると言える。
体を休めてばかりいると、「なんだ、エネルギーはあまりいらないのか」とばかりに、私たちの体内のミトコンドリアの数は減っていく。疲れるから、体力がないからと、体を休めてばかりいると、ミトコンドリアが極端に減り、エネルギーの作れない「老いた体」になってしまう。体力をつけ、老けない体にするには、エネルギーを使う量、すなわち運動量を少しずつ増やしていくことが大事。コンスタントに運動を続けることで、「いつもこれだけの量のエネルギーを必要とするのなら」と、ミトコンドリアの量が増えてくれる。(医療法人すずらん 前山浩信院長)
参考HP Wikipedia ミトコンドリア ・医療法人すずらん ミトコンドリア若返り健康法
NHKサイエンスZERO 健康の鍵をにぎる!ミトコンドリアの新常識
ミトコンドリアが進化を決めた | |
クリエーター情報なし | |
みすず書房 |
ミトコンドリアのちから (新潮文庫) | |
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新潮社 |
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