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 福島第一原発の土壌汚染をどうするか?
 福島第一原発事故で放出された放射能で、広範囲の地域が汚染された。文部科学省は福島県西部の放射能汚染の航空機測定結果を9月12日、福島県西部の放射線航空機測定の結果を発表した。これにより、福島、宮城、山形、栃木、茨城5県全域の航空機測定の結果が出揃った。

 この地図によると、やはり福島第一原発から北西に30kmのびる赤色の地域の放射能汚染が目立つ。だが、それ以外の強制退避させられた地域の人は住めないことはないのではないか。専門家でないとわからないが、国や自治体が許容範囲を定め、帰るか帰らないかは自己責任にして、帰宅を認めてもよいと思う。住民の方も同じ気持ちだろう。

 ところで、放射能で高濃度に汚染された地域はどうしたらよいか?汚染物質はどうしたら取り除けるのだろうか?基本的な表土削り取りから、マグネシウム系固化剤で表面土壌を固化して削り取る方法、ヒマワリなどの植物に、土壌中の放射性セシウムを吸収させる方法などが試された。

Phytoremediation

 9月11日、日テレ放送の「DASH村」では、JAXA相模原キャンパス宇宙科学研究所による「ヒマワリ作戦」のようすを伝えていた。JAXAでは、ヒマワリによる除染効果を外部有識者と共同で研究しており、独自にDASH村の地で実証実験を行うという番組内容だった。

 JAXAの長谷川さんは「ヒマワリが肥料だと思って間違えて放射線物質を吸い上げる可能性がある」という。しかし、まだまだ実験段階であり、効果が出るかはやってみないと分からない。そこで、手つかずのDASH村の土地に蒔くヒマワリと、JAXAの敷地内で栽培しているヒマワリからデータを取り、比較することで、今後の研究に活かしたいという。DASH村は、福島県第一原発からおよそ25kmの位置にあり、計画的避難区域に指定されている。

 ヒマワリにセシウム吸収期待できず
 9月15日にはその結果の一部が発表された。福島第一原子力発電所事故で放出され、農地に蓄積した放射性セシウムを除去するには表土を削り取る方法が効果的である一方、ヒマワリによる吸収の効果は期待できないことが、農林水産省、総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省が公的研究機関、大学、企業を動員して福島県内で行った技術研究、試験の結果明らかになった。

 農業機械などで表土を4センチ削り取る方法により、土壌中の放射性セシウムのうち75%が除去できることが分かった。マグネシウム系固化剤で表面土壌を固化した後では、表面から3センチ削るだけで82%の放射性セシウムを除去できる。これらの方法の問題は、10アール(1000平方メートル)当たりそれぞれ40立方メートル、30立方メートルもの廃棄土壌が出ること。表層土壌をかくはんし、濁水を排水した後に水と土壌を分離して土壌だけを取り除く試験も行われた。この方法によると廃棄土壌は10アール当たり1.2~1.5立方メートルで済み、放射性セシウムも30~70%除去できることが分かった。

 一方、土壌中の放射性セシウムを吸収すると期待されたヒマワリは、作付け時の土壌中に含まれる放射性セシウムの2000分の1しか除去できなかった。ヒマワリ以外に放射性セシウムを除去できるとみられる植物は見当たらないことから、植物による放射性セシウム除去法は使用できる段階にない、と農林水産省は評価している。

 いずれの方法をとるにしても大きな問題になるのが必至なのは、除去した土壌の処理。技術研究、試験の結果、運搬可能なコンクリート製容器に土壌を入れて仮置きする方法が、放射線遮蔽(しゃへい)効果があるとされた。

 福島県では1キログラム当たり1000ベクレル以上の放射性セシウムに汚染された農地が、避難区域以外の桑折町、福島市、大玉村、郡山市、須賀川市、西郷村まで広がっている。農水省は、土壌1キログラム当たり、5000ベクレル以上の放射性セシウムを含む場合、稲の作付を制限している。1キログラム当たり5000~1万ベクレルの放射性セシウムを含む農地については、地目や土壌の条件を考慮した上で、水による土壌かくはん・除去、表土削り取り、30センチ以上の表土の反転耕起という対策のいずれかを選択して行うことを勧めている。また、1キログラム当たり1万~2万5000ベクレルの農地については、表土削り取り、2万5000ベクレルを超える農地については、固化剤などによる土壌飛散防止措置を講じた上で、厚さ5センチ以上の表土の削り取りが適当としている。 (サイエンスポータル 2011年9月15日)

 植物や微生物で環境浄化
 今回の「ヒマワリ作戦」では、放射能除去に思ったほどの効果はでなかったようだが、植物や微生物を使った環境浄化の方法は注目されている。

 例えば、アイスプラントという植物は、塩味のする新野菜として、近年、佐賀県を中心に栽培されている。南アフリカ原産のハマミズナ科メセンブリアンテマ属の植物。名前の由来は氷ったような植物に見えることからつけられた。耐塩性が高い塩生植物の一つで、海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも水耕栽培が可能である。 さらに、生活環が半年程度と比較的短く、栽培も容易なため植物の耐塩性研究におけるモデル生物と考えられ学術的な注目も高い。塩害で問題になっている土地の、塩分を取り除く植物としても注目されている。

 また、イラク戦争の時には広範囲の石油で農地が汚染されたがその土地に常在するバクテリアによる重油の分解を促進させるため、窒素や硫黄肥料を施用することにより、土壌の浄化を図られた。また、タバコなどは土壌に含まれるカドミウムなどの重金属を根から吸い上げて葉にためこむ能力が高く、汚染された土壌を広範囲にわたって浄化することができる。

 このように塩害などに汚染された土壌を、植物を使って広範囲にわたって浄化することを「ファイトレメディエーション」という。また、植物だけでなく、菌類・微生物や、生物のつくる酵素なども使って、土壌を浄化することをまとめて「バイオレメディエーション」という。

 自然界で作用しているバイオレメディエーションファイトレメディエーション(Phytoremediation)は何世紀にも渡り利用されてきた。例えばファイトレメディエーションによる農地の塩分除去などは古くから行われてきた方法である。 微生物を用いたバイオレメディエーション技術はGeorge M. Robinsonにより初めて包括的に紹介された。彼はカリフォルニア州サンタマリアの石油エンジニア助手であった。彼は1960年代の空き時間を汚らしい壺や様々な微生物の混合物と過ごした。(出典:Wikipedia)

参考HP 日テレ DASH web ISAS 宇宙農業サロン「ひまわり作戦」
農林水産省
農地土壌の放射性物質除去技術
アイラブサイエンス 「ファイトレメディエーション」「バイオレメディエーション」とは何か?

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