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 宇宙の加速膨張
 スウェーデン王立科学アカデミーは10月4日、2011年のノーベル物理学賞を、宇宙の膨張が加速していることを超新星の観測で突き止めた米カリフォルニア大バークリー校のソール・パールマッター教授、オーストラリア国立大のブライアン・シュミット教授(44)、米ジョンズホプキンス大のアダム・リース教授(41)の3氏に授与すると発表した。

 同アカデミーは「宇宙の膨張が加速しているというのは彼ら自身の予想を見事に裏切る発見だった」と3氏の業績をたたえた。

 パールマッター氏は1988年から、シュミット、リース両氏は1994年から寿命の最後に大爆発を起こす超新星の観測を開始。宇宙の遠方にある50個の超新星の光が予想に反して弱くなったことから、140億年前に起きたビッグバン(大爆発)による宇宙の膨張が加速していることを突き止めた。

Nobelprize_Physics

 研究は、通常の物質と宇宙にある見えない物質(暗黒物質)だけでは観測された宇宙膨張の加速を説明できないことから、膨張を加速する力として働く真空の「暗黒エネルギー」の存在を指摘した。全宇宙物質の約4分の3が暗黒エネルギーとされるが、その実体はナゾに包まれている。

 世界は炎か、それとも氷で終わるのかという問いがあるが、宇宙膨張が加速していれば世界の終末は氷になるという。

 授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。賞金1千万クローナ(約1億1千万円)の半分がパールマッター氏に、4分の1ずつが他の2氏に与えられる。(msn 2011.10.4)

 何が宇宙をつくっているか?
 宇宙全体は何で成り立っているか?我々が目で見える物質でいうと、水素は宇宙で最も豊富にある元素であり、暗黒物質(ダークマター)と暗黒エネルギー(ダークエネルギー)をのぞいた、宇宙の質量の3/4を占め、総量数比では全原子の 90% 以上となる。これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星あるいは木星型惑星の構成物として存在している。

 1986年に発見された宇宙の大規模構造が作られるまでの時間をシミュレートした結果、ビッグバン宇宙論から導き出されている137億年といった宇宙の年齢とはかけ離れた長い歳月を必要とすることが明らかになった。

 そのため、ビッグバン宇宙論が間違っていて修正が必要ではないかという見解が生まれたが、まもなく暗黒物質の存在を仮定すると、ビッグバン宇宙論と矛盾しない時間の範囲内でも、現在のような銀河集団の泡構造が出来上がることが明らかにされた。そこで、宇宙全体にどの程度の暗黒物質や暗黒エネルギーが必要なのか、繰り返しシミュレーションが行なわれている。その結果、ダークマターを含めた物質を約30%、ダークエネルギーを約70%にした場合にうまくいくことが確認されている。

 また2003年から、宇宙背景放射を観測するWMAP衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、73%が暗黒エネルギー、23%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。この観測結果は、宇宙の大規模構造のシミュレーションから予測されているダークマターの値と、ほぼ一致している。このように2つの方法から推測したダークマターの量がほぼ合うということから、この考えの妥当性が図られている。

 暗黒エネルギーとは何か?
 では、宇宙の大部分73%を占め、今後も増えると予想されている「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」とはどのようなものだろうか?

 暗黒エネルギーの存在は、天文学者アダム・リース博士により発表された。博士はビッグバンによって誕生した宇宙の膨張速度が、予想より速くなっていることを発見し、その結果を1998年に論文として発表。その後、博士の説を裏付ける研究が次々と発表され、宇宙の膨張が加速しているという説はゆるぎないものになった。そして、宇宙の膨張を加速させている原動力は、重力に逆らって物を引き離す暗黒エネルギーであり、宇宙の未来を支配する力を持つ、と研究者たちが考えるようになった。

 テキサス大学の小松英一郎教授は、WMAPと呼ばれる探査機を使い、宇宙の果てから来る微弱な電波をくまなく観測した。そして、全宇宙にあるその電波の分布図を作成・解析し、宇宙に存在する暗黒エネルギーの量を導き出した。小松教授は「暗黒エネルギーが宇宙全体の72.6%を占めている」という研究成果を発表、この論文は去年1年間に自然科学の分野で最も多く引用された。

 衝撃の結末「ビッグリップ」
 暗黒エネルギーは宇宙の未来にどのような影響を及ぼすのか?ロバート・コールドウェル博士は、暗黒エネルギーが加速度的に増える場合の宇宙の未来を計算。その結果は、宇宙の最後は、空間は無限の大きさになり、銀河や星、さらには原子までもがバラバラに引き裂かれるというものだった。これが「ビッグリップ」という宇宙の結末だ。

 東京大学の高田昌広准教授が暗黒エネルギーの増え方を調べる手がかりとしているのは、宇宙空間に存在する暗黒物質。暗黒物質は重力で引き合い、時間とともに大きなかたまりになる性質がある。高田准教授は、「重力レンズ」と呼ばれる現象を利用して宇宙での暗黒物質の分布を調べ、暗黒エネルギーの増え方や性質を探ろうとしている。また、来年には国立天文台のすばる望遠鏡を使って、暗黒物質の観測を始める予定である。

 アインシュタインと暗黒エネルギー
 今から約90年前、宇宙の大きさは変わらないものだと考えられていた。そのため物理学者アルベルト・アインシュタインは、自身の一般相対性理論の方程式に「宇宙項」を導入し、宇宙を静止させようとした。宇宙項は、暗黒エネルギーと同じように、反重力を生み出すものだったが、その後、アインシュタインの予想より「反重力」は大きいことがわかり、宇宙の膨張が発見されると、アインシュタインは宇宙項を取り下げ、「生涯最大の失敗」と悔やんだといわれている。

 アメリカ・テキサス大学のスティーヴン・ワインバーグ博士は、私たちの宇宙の暗黒エネルギーは、生命が誕生するうえでちょうどよい量だったと考えている。博士の考えでは、私たちの宇宙のほかにも、数多くの宇宙が生まれた可能性があるという。そして計算上、ほとんどの宇宙では暗黒エネルギーの量の過多により、銀河ができる前に宇宙にある物質は拡散してしまう。しかし、私たちの宇宙は暗黒エネルギーの量が極めて少ないケースだったので、物質は拡散してしまうことなく、地球や生命が生まれることができたのである。(NHK サイエンスZERO)

参考HP Wikipedia「ダークマター」「ダークエネルギー」・NHKサイエンスZERO「宇宙の未来を決める暗黒エネルギー 

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