自転軸が大きく傾いている天体

 地球の自転軸(地軸)は何度傾いているだろう?自転軸は、惑星が自転する際の軸であり、北極点と南極点を結ぶ直線を指す。地球の自転軸は、公転面に対して、約23.4度傾いている。このため、夏季には日が高く昇り、昼の時間が長く、冬季には日が低く、昼が短くなる。

 ところが、この自転軸が公転面に対して、極端に大きく傾いている惑星がある。それは何だろう?

 金星と天王星である。多くの惑星は公転面に対して、およそ垂直の方向に自転軸が向いてる。だが金星は177.4度傾いており、ほぼ逆さまの形に、天王星は97.9度の傾きでほぼ横倒しの形になっている。これら自転軸の傾きの原因として、大規模な天体衝突が有力な候補として知られている。


Venus_Uranus


 今回、天王星が衛星の動きを含めて、現在のような姿になるには、1回の天体衝突では不十分であり、地球サイズの天体が2回衝突することで初めて実現することが、シミュレーション研究によりわかった。この結果は従来のモデルと矛盾する部分もあり、外側を公転する海王星の形成過程と併せてさらなる研究が望まれている。

 Alessandro Morbidelli氏は天王星の傾きの原因を調べるため、考えられる様々なシナリオに基づいたシミュレーションを行った。その結果、1回天体が衝突しただけでは衛星の配置が現在の形のようにはならず、地球サイズの天体が2回衝突するというモデルが最も実際の形に近づくことがわかった。


 シミュレーション実験の結果

 1回だけの大きな衝突で天王星の自転軸を横倒しにした場合、その周囲を回る衛星は天王星の赤道面ではなく、両極の周りを回るという結果になったのだ。

 では衛星が完全に形成される前、まだ天王星の周囲に衛星の材料となる塵の円盤が存在する時に1度の大きな衝突が起きた場合はどうか。この場合は円盤も赤道面に移動し、現在見られるような衛星が4つ形成される。ただし、衛星の公転方向は逆になってしまう。

 これらを解決するようなシナリオは、天王星の衛星が完全に形成される前の段階で、地球サイズの原始惑星が2回衝突するというシミュレーションによるものであった。また、27.8度の自転軸の傾きを持つ海王星は、1回のジャイアントインパクトによって形成されるというシミュレーション結果も得られた。

 もちろんこれらの結果はあくまでもシミュレーションによるものであるため、実際の天王星が少なくとも2回の衝突を経て現在の形になった、ということを直接示すわけではない。

 天王星では2回、海王星では1回のジャイアントインパクトが起きていたとすれば、天体衝突が巨大ガス惑星の形成に大きな影響を与えていたことになる。しかし従来のモデルでは、巨大ガス惑星は微惑星を外に弾き飛ばしながら成長していったと考えられており、今回の説とは矛盾している。実際に何が起きたのか、もっともらしいシナリオを導くにはさらなる研究が必要となりそうだ。(2011年10月12日 Scientific American)

 金星の自転軸
 金星の自転軸の傾き(赤道傾斜角)は177.4度である。即ち、金星は自転軸がほぼ完全に倒立しているため、他の惑星と逆方向に自転していることになる。地球など金星以外の惑星では太陽が東から昇り西に沈むが、金星では西から昇って東に沈む。

 金星の自転がなぜ逆回転をしているのかはわかっていないが、おそらく大きな星との衝突の結果と考えられている。また、逆算すると金星の赤道傾斜角は、2度ぐらいしか傾いておらず、自転軸が倒立しているとは言え、ほぼ垂直になっていることになる。このため、地球などに見られるような、気象現象の季節変化はほとんどないと推測されている。

 金星の自転は、地球との会合周期とシンクロしており、最接近の際に地球からはいつも金星の同じ側しか見ることができない(会合周期は金星の5.001日にあたる)。これが潮汐力の共振によるものなのか、単なる偶然の一致なのかについてもよくわかっていない。

 天王星の自転軸
 天王星の特徴の一つとして自転軸が挙げられる。黄道面に対しほぼ横倒しに97.9度、倒れている。天王星の自転軸がなぜこれほど傾いているのかは分かっていない。古典的な推察として、天王星がまだ完成されていない時期に大きな原始天体が衝突した(ジャイアント・インパクト説も参照の事)という説があるほか、天王星にはかつて巨大衛星が存在しており、その影響で次第に自転軸が傾斜していったという仮説も唱えられている。

 また、自転軸の傾きのため極周囲の方が赤道周囲よりも太陽からの熱を受けているが、奇妙な事に赤道周囲の方が極地よりも温度が高い。この理由もまだ解明されていない。また、公転周期が84.25301年なので、極点では約42年間、昼または夜が続くということになる。

 ボイジャー2号によって天王星に磁場の存在が確認された。その強さは、地球とほぼ同じである。天王星の磁場の中心は惑星の中心から大幅にずれており、60゜自転軸から傾いている。そのため、地球の磁場よりずっと大きく変動するとされる。

 天王星の放射線帯は、土星並みに強い。その強さゆえに、内側の衛星や環に存在するメタンは化学的変化を受けて黒っぽく変色してしまう。(Wikipedia)

 その他の惑星
 水星の自転軸の傾き(赤道傾斜角)は惑星の中で最も小さく、わずか 0.027度以下でしかない。これは2番目に傾斜が小さい木星の値(約3.1度)に比べても1/300と非常に小さい値である。このため、日の出の位置は2.1分以上ぶれない。

 木星の自転軸の傾きも非常に小さく3.13度しか傾いていない。この結果、惑星上には有意な季節変化がほとんど無いと考えられる。自転によって、赤道では 1.67 m/s2 の遠心力が働き重力 24.79 m/s2 と相殺してこれを 23.12 m/s2 まで減少させる。そしてこの力は木星の形状にも影響を与え、赤道の直径 (9,275 km) が自転軸の直径よりも7%程度膨らんだ楕円球の状態にある。

 他の惑星に目を向けると、自転軸の傾き(赤道傾斜角)はさまざまである。地球 23.4度、火星 25度、土星 26.7度、海王星 29.6となっている。(Wikipedia)

参考HP アストロアーツ 天王星の自転軸が傾いたのは二回の天体衝突が原因?
Wikipedia 地軸 赤道傾斜角 金星

それでも地球は回っている―近代以前の天文学史
クリエーター情報なし
ベレ出版
フーコーの振り子―科学を勝利に導いた世紀の大実験
クリエーター情報なし
早川書房

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