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 2015年、あかつき金星再投入
 金星探査機「あかつき」運用チームは、9月に行われた軌道制御エンジンのテスト噴射で推力不足を確認し、今後は代替として姿勢制御エンジンによる軌道制御を行っていく方針を明らかにした。当初の予定とは異なる金星周回軌道への投入に向け、観測成果を最大限にするための模索が続けられる。

 探査機「あかつき」の軌道制御エンジン(OME)の状態は、推力が想定の9分の1しかなかった。燃焼器の破損が進行していると考えられ、今後このOMEの使用は断念することとなった。

 OMEでは酸化剤と燃焼剤を混合燃焼させて推力を得るが、代わりに使われる姿勢制御用エンジン(RCS)は燃焼剤しか使わないため、今年10月中旬までに酸化剤を投棄して機体の軽量化を図る。その後、11月上旬にRCSによる軌道制御を実施して2015年の金星再会合・周回軌道投入を目指すことになった。(2011年10月3日 JAXA)

Venus_Express

 一方、金星を探査している、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナスエクスプレス」が、金星大気の上層にオゾン層を発見した。系外惑星での生命の可能性を探る上で大きな助けとなりそうだ。(2011年10月11日 ESA)

 金星にオゾン層を発見
 オゾンは酸素原子が3つくっついた分子で、単体では生命にとって非常に有害である。しかし地球では高度10~50km付近に存在する「オゾン層」が、生命にとって有害な紫外線が地上に降り注ぐのを防ぐという非常に重要な役割を持っている。

 火星にも薄いオゾン層が存在していることは、NASAの探査機「マリナー9号」の探査結果から1970年代には既に知られていたが、今回ESAの金星探査機「ビーナスエクスプレス」が金星大気を通過する星の光を利用して、金星にもオゾン層があることを発見した。シミュレーションによれば、太陽光線で二酸化炭素が破壊されてできた酸素原子が風によって夜側に運ばれ、そこで普通の酸素分子やオゾンを形成するようだ。

 「この発見は金星の大気化学の理解に大きな一歩となる」と研究を主導したFranck Montmessin氏は語っている。オゾンのような壊れやすい分子が存在していることは、金星大気での化学や大気の循環に制限を与え、その理解の手助けになると考えられる。また、地球型惑星と呼ばれる地球、火星、金星すべてにオゾン層が発見されたことで、この3つの惑星の違いが1つなくなったことになる。

 オゾン層の発見は、系外惑星に生命がいるかどうかを確かめる手段として使えるかもしれない。地球には元々オゾン層はなく、初めてオゾン層または酸素が大気中にできたのは24億年前だと言われている。突然酸素ができた理由はよくわかっていないが、オゾンは微生物が作り出した酸素が重要な役割を果たしたと考えられており、系外惑星の大気に二酸化炭素、酸素、オゾンがあれば植物のような生命がいる可能性を指摘する者もいる。

 もっとも、火星や金星のオゾンは生命が作り出したものではなく、太陽光により二酸化炭素が分解された酸素から作られたようだ。金星大気のオゾン層は高度100kmのところで形成されており、オゾンの濃さは地球の100分の1から1000分の1と非常に薄い。また、理論によれば生命が誕生するには地球のオゾンの濃さの20%は必要であるが、金星も火星もこの量には届いていない。

 いずれにせよ、金星のオゾン層の発見と地球、火星との比較を行っていくことで、地球型惑星に対する理解が進んでいくと期待される。

 ビーナス・エクスプレス
 ビーナス・エクスプレス (Venus Express) は欧州宇宙機関 (ESA) の金星探査機。2005年11月9日に打ち上げられ、2006年4月11日に金星周回軌道に到着した後、5月7日に観測用軌道に無事乗った。

 ビーナス・エクスプレスは7種類の観測機器によって大気の組成や構造、化学反応などを調べる。また、金星の厚い大気を透視して直接表面を見ることができる波長で観測するのが大きな特徴だ。

 経費を下げるための工夫も様々になされている。7種類の機器のうち3つは火星探査機マーズ・エクスプレス、2つは彗星探査機ロゼッタのために開発されたものだ。また探査機の基本構造もマーズ・エクスプレスと同じで、開発コストを抑えた。

 金星の大気は地球と大きく異なり、温室効果によって極端な高温高圧状態になっている。また、100時間未満で金星を一周してしまうほどの強風が吹いていることも知られている。惑星の大きさこそ地球と似ているものの、他の環境、特に大気はわれわれの常識とは大きくかけ離れたものだ。しかし、「他の惑星を探査することこそが、地球にとどまり続ける人類にとって重要な意味を持つことを、ビーナス・エクスプレスによって示したい」とESA局長、ジャン・ジャック・ドーダン氏は語る。

 「地球の気候変動を完全に解明するには、もはや地球だけを調べるのでは足りません。より一般的に、惑星の大気のメカニズムを解明しなければならないのです。私たちは今、マーズ・エクスプレスで火星の大気を調べていますし、ホイヘンス(ESAが携わった土星探査機カッシーニの子機)を土星の衛星タイタンに突入させてその大気も探査しました」

 「そして今回のビーナス・エクスプレスによって、さらなる知見がもたらされるでしょう。元々地球と金星は大変似通った惑星だったはずです。それぞれが“生命が溢れる惑星”と“死の惑星”になっていった。その分岐点がどこにあるのかを私たちは知る必要があるのです」

 ビーナス・エクスプレスはその言葉の通り、金星のさまざまな謎を解明している。

 金星にかつて海は存在した
 現在の金星には水がほとんどなく、それが地球と金星の決定的な違いとなっているが、何十億年も前にはもっと豊富に水があったようだ。というのは、金星探査機ビーナスエクスプレスの探査で、かつて大量の水が金星から逃げていったことが確実となったのである。そのしくみは、水分子が太陽からのX線によって水素と酸素に分解され、宇宙空間に飛んでいった、というものだ。この時の水素と酸素の比率が2対1であることも判明しており、元は水分子だったという裏付けとなっている。また、金星大気の上層部で、重力にとらえられたままの重水素が徐々に濃縮されていることもわかっている。

 「すべてが、金星にかつて大量の水があったことを示唆しています」(英・オクスフォード大学のColin Wilson氏)。だが、大量の水があったからといって、地表に海があったことに即つながるわけではない。

 仏・パリ第11大学のEric Chassefière氏によるコンピュータシミュレーションモデルでは、「水は、金星がまだ生まれたばかりで地表がどろどろの状態だった頃にのみ存在し、その大部分が大気中のものだった」ということが示されている。水分子を放出することにより温度が下がり、地表が固まったのだろうと考えられており、これでは海は存在し得ない。

 検証の難しい仮説ではあるが、この真偽は重要な鍵となる。「かつて地表に水があった」ということは、「当時の金星が、生命が存在できる状態の初期段階にあった」という可能性につながるからだ。もしChassefière氏のモデルどおり、地表が固まる前に大量の水が失われたことが事実だったとしても、その後に彗星が衝突して水をもたらし、生命が生存可能な状態を作った、という可能性もないとはいえない。

 Chassefière氏は「金星が作られたばかりの頃の成長過程をもっとよく知るためには、溶岩の海(マグマオーシャン)と大気のシステムの進化について、さらに本格的なシミュレーションが必要です」と語っている。ビーナスエクスプレスがもたらすデータが、大きく貢献することになりそうだ。(2010年6月30日 ESA)

 金星の南極に巨大な渦を発見
 探査機ビーナスエクスプレスが金星の南極に巨大な渦を発見した。以前、金星の北極に同様の渦が観測されていたが、南極で発見されたのはこれが初めてとなる。

 以前、NASAの探査機パイオニアビーナスが金星の北極付近に渦を発見していた。しかし、厚い雲に阻まれ詳細な観測は行うことができなかった。今回ビーナスエクスプレスは南極に渦を発見し、その詳細な観測結果を送ってきた。ビーナスエクスプレスは2005年11月にヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打ち上げ、2006年に金星の観測を開始、現時点で2014年まで探査を続ける予定となっている。

 金星は90気圧を超える厚い二酸化炭素の大気に包まれており、外層以外の大気の様子を探ることは難しい。ビーナスエクスプレスは複数の波長域における赤外線の探査を行うことで、高度65km付近で展開する南極域の渦の様子を詳細に観測することに成功した。

 今回渦が発見されたのは、パイオニアビーナスが観測した北極の渦とほぼ同規模の、南極を中心とした直径2000kmの領域で、詳細な観測の結果この渦はこれまでの予想よりもかなり複雑な構造をしていることがわかった。渦は24時間以下という短いタイムスケールで常に変化し続けており、地球の台風が数日間同じような構造を保っていることを思うと非常にダイナミックな変化をしていると言える。

 極付近に見える渦は、例えば土星では六角形の構造を見ることができるなど、回転している天体ではよく見られるものであるが、今回金星の南極で見つかった渦は構造が安定せず、常に変化しているという点で大きく異なっている。これは、渦の中心部と金星の自転軸の南極点が一致していないためではと考えられる。渦の中心は自転軸の南極点から緯度にして3度、距離にして数百km離れたところを反時計回りに5~10地球日の周期で回っていることがわかった。これはこの渦が太陽からの重力(潮汐力)の影響を受けていないことを示している。

 今回見つかった複雑な渦の構造は極付近に発生する渦の謎や長年の謎とされてきたスーパーローテーションを解決するヒントとなりそうだ。北極の渦も今回見つかった南極の渦と同様の構造をしていると考えられるが、楕円軌道を取っているビーナスエクスプレスは北極に接近しすぎるために今回のような大規模な構造を見るのは難しいと考えられ、今後の探査機を待つ必要がある。

 「スーパーローテーション」は惑星の自転速度を超える速さで雲が惑星表面を移動すること。雲は自転速度を超える速さで移動できないと考えられているため、何故このような雲が存在しているのかよくわかっていない。金星の他にタイタンなど特に自転速度の遅い天体でもこのスーパーローテーションが確認されている。(2011年4月8日 ESA)

参考HP Wikipedia ビーナス・エクスプレス

探査機でここまでわかった太陽系 ―惑星探査機とその成果― (知りたい!サイエンス)
クリエーター情報なし
技術評論社
大人のプラモランドVOL.5 金星探査機あかつき&宇宙帆船イカロス<蓄光版>  (ロマンアルバム)
クリエーター情報なし
徳間書店

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