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 134億年前、宇宙最初の光
 137億年前、宇宙の最初期は、まだ星がなく、最初の数億年の間、ガスと暗黒物質が薄く漂い、ビッグバンの名残である弱い電磁波が飛び交うだけの暗黒の時代が続いていた。

 宇宙の誕生から3億年後、宇宙で最初に誕生した星”ファースト・スター”から放たれたと見られる光の観測に、宇宙航空研究開発機構などの研究チームが世界で初めて成功した。

 宇宙初期における星の誕生や宇宙の大規模構造の解明につながる成果で、11月1日の米科学誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載される。

Akari

 研究チームは赤外線天文衛星「あかり」を使い、近赤外光で空の明るさを詳しく観測した。その結果、これまでに知られている銀河や星の影響をすべて取り除いても、宇宙の背景の明るさに大きな「むら」が残ることが判明。これは宇宙で最初に生まれた第1世代の星の集団が存在していることを示しているという。

 現在の宇宙には銀河が多く存在する場所と、あまり存在しない場所があり、「宇宙の大規模構造」と呼ばれている。研究を率いた松本敏雄・宇宙機構名誉教授は「最初の星が生まれたときにはすでに宇宙の大規模構造が出来ていたことがわかった」と話している。(2011年10月22日  読売新聞)

 「あかり」が捉えた宇宙最初の星の光
 赤外線天文衛星「あかり」が波長1~4マイクロメートルで空の明るさを観測し、既知の天体では説明できない大きな明るさのむら(揺らぎ)があることを見いだした。これはビッグバンから約3億年後に宇宙で最初に生まれた星(第一世代の星)の集団に起因するものと考えられ、これまでほとんど知られていなかった宇宙初期における星生成活動の解明に重要な貢献をなすものと考えられる。

 宇宙はビッグバンで始まり、膨張しつつ現在の姿になった。マイクロ波宇宙背景放射によって直接観測される誕生40万年後の宇宙は極めて一様かつ等方であることが知られている。現在の宇宙は、星や銀河などの密度の高い天体が存在する一方、ほとんど物質が存在しない宇宙空間がある等、極めて非一様である。

 大型地上望遠鏡の観測によれば、宇宙が始まって数億年後には既に銀河が存在していることが知られている。しかし、それ以前の宇宙については観測が全くなく、「宇宙史の暗黒時代」ともいわれている。最新の理論的研究によれば、この暗黒時代に宇宙第一世代の星「ファーストスター」が生成され、非一様な宇宙に進化するきっかけになったと考えられている。

 しかし、この星は極めて暗いため、個々に直接観測することは極めて困難である。そこで、松本敏雄宇宙科学研究所名誉教授・ソウル国立大学客員教授を中心とする研究グループは、第一世代の星の集団を背景放射(空の明るさ)として観測することを試みてきた。

 今回、同グループは、日本が打ち上げた赤外線天文衛星「あかり」によってりゅう座の方向を半年にわたって観測し、空の揺らぎの観測を行った。波長2.4、3.2、4.1マイクロメートルで得られた画像から手前にある天体の光を取り除いたところ、その残りとして得られた背景放射成分に有意な揺らぎが見いだされた。

 この揺らぎの振幅はかなり大きく、既知の放射成分(太陽系内の塵による黄道光、銀河系内の星の光、遠方の銀河の光等)で説明することはできない。揺らぎのパターンは3波長でほとんど同じで、また観測された赤外線のスペクトルは遠方の青い星の光と考えて差し支えない。これらのことから、観測された揺らぎは、宇宙第一世代の星の集団の分布によるものと結論できる。(JAXA)

 宇宙最初の星「ファースト・スター」
 宇宙最初の恒星を「ファースト・スター」という。宇宙の年齢は現在137億歳であると考えられている。星や銀河が光輝く美しい宇宙の姿になるにはそれほどの長い年月が必要だったようだ。

 誕生してから数億年の頃までの時期は宇宙の「暗黒時代」と呼ばれ、これまでどのような波長でも観測がなされていない。つまり、この時代を伝える「光」をわれわれはまだ捉えることができておらず。その様子を知ることができないでいるのである。最初の数億年の間、星や銀河などが生まれる前の宇宙には、ガスと暗黒物質が薄く漂い、それにビッグバンの名残である弱い電磁波が飛び交うだけで、文字通り暗黒の宇宙だったと考えられる。

 暗黒宇宙に光を灯したのは、宇宙に生まれた最初の星「ファースト・スター」である.ファースト・スターの誕生により暗黒宇宙は終焉し、やがて光輝く銀河宇宙へと変貌をとげていく。

 ファースト・スターが誕生したのは宇宙創成から3億年ほど経った頃である。われわれの計算では宇宙の平均的な場所を仮定したが、所によって多少の差があるため、宇宙の一番星が光り出したのは1億~3億年の頃というのが妥当であろう。いずれにせよ137億年の宇宙の進化史のかなり早い段階であることになる。次に、原始星(生まれたばかりの星)の質量は太陽の100分の1程度であった。

 中心温度は絶対温度1万度を超え、また密度は1cm3 あたり0.001g 程度、ちょうど空気と水の密度の間くらいに相当する。まわりには大量の温かいガスが存在し、それらが中心にむかって落ち込んでいくため、この小さな星の種はすぐに成長し、巨大な星になると考えられる。実際に3次元シミュレーションから得られたガスの降着率を用いて、原始星進化の詳細な理論計算をおこなったところ、最終的には質量がおよそ太陽の100倍以上にもなることがわかった。どうやら初期宇宙の星は小さく生まれて大きく育つようだ。

 質量が太陽の100倍というのは明るさでは太陽の百万倍以上にもなる.宇宙がまだ数億歳という若さの時に、このようなとても明るいファースト・スターが闇を照らし出し、暗黒時代に終わりを告げたのだろう。吉田直紀(東京大学数物連携宇宙研究機構)

 「ファースト・スター」は集団で成立した?
 独・ハイデルベルク大学のPaul Clark氏と米・テキサス大学オースティン校のVolker Bromm氏らの研究チームは、ファースト・スターが巨大な恒星というのは、むしろ例外的で、小さな恒星がグループで複数、形成されるという新しいシミュレーション結果を発表している。

 誕生したばかりの宇宙は、水素やヘリウムの小さなガスの塊がところどころにあるだけでほとんど何もない場所だったが、やがて重力で集まったこれらの塊がガス雲になり、太陽質量の100分の1程度の原始星に成長したと考えられている。

 原始星は残りのガスを集め、それが星の周囲のちりやガスの円盤となる。従来のシミュレーションでは、この円盤は分裂することなく中の物質は順調に原始星の重力に引っ張られつづけ、太陽質量の30~300倍の巨大な星が形成されると考えられてきた。

 連星系ができる可能性はあったとしても、例外的なこととされてきた。 ほとんどのシミュレーションは円盤が形成された時点で終了していたが、今回シミュレーション時間を伸ばしたところ、円盤は実はちぎれやすいことがわかった。チームは、宇宙初期の星形成の様子をこれまでシミュレーションされていなかった段階までスーパーコンピュータで再現した。すると、ほとんどの原始星は太陽~地球の間ほどの狭い領域に4~5個の小さな星が密集した状態でできた。

 いくつかの原始星はお互いの衝突でグループからはじき飛ばされた可能性もある。そうだとすれば、大質量から小型のものまで様々な大きさの星ができあがったと推測され、質量の小さいものは宇宙初期に誕生して今なお輝き続けているかもしれない。 この研究は宇宙初期の星形成の新しい見地を示したが、まだ完全ではない。

 研究チームでは今後、物質が円盤に集積し終えるのにかかるさらに長期間のシミュレーションを目指しているということだ。宇宙最初の星は集団で形成された。(2011年2月10日 McDonald Observatory)

参考HP JAXA あかりが捉えた宇宙最初の星の光

ビッグバン宇宙論 (上)
サイモン・シン
新潮社
ビッグバン宇宙からのこだま―探査機WMAP開発にかけるリーダーたち
マイケル・D. レモニック,Michael D. Lemonick,木幡 赳士
日本評論社

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