思春期特発性側湾症(AIS)は遺伝病

 側弯症とは、本来まっすぐな背骨が、横に曲がった状態をいう。重度になった場合は、著しい体幹の変形による外見上の問題に加え、肺機能が低下し、腰痛や背部痛の発生率が増加するとされている。早期発見、早期治療が大切である。

 側弯症の多くは原因が特定できない特発性の側弯症(idiopathic scoliosis)である。特発性側弯症は、発症時期等によりいくつかのタイプに分けられるが、そのうち、最も頻度が高いのが、思春期に発生・進行する思春期特発性側弯症(AIS:
Adolescent Idiopathic Scoliosis)である。思春期の子どもの約2%にみられる非常に頻度の高い疾患である。

 思春期の50人に1人がかかっているといわれる、AIS は家族内での発症頻度が高いことなどから、その発症には遺伝的要因が関与すると考えられていた。これまで、原因遺伝子の同定には至っていなかったが、今回、世界で初めてAISの原因遺伝子が、慶應義塾大学医学部の研究者たちによって突き止められた。


AIS

 原因遺伝子「LBW1」特定
 松本守雄准教授ら慶應義塾大学医学部整形外科学教室の脊椎外科研究グループは、慶應大学をはじめ全国8個所の側弯治療施設の患者訳2,000人からDNA試料を採取し、理化学研究所ゲノム医科学研究センターで解析した。この結果、3つの一塩基多型(SNP)が思春期突発性側彎症に関連することが分かった。3つのSNPはいずれも10番染色体上にある。

 思春期突発性側彎症は、女性の方が男性より10倍ほど患者が多い。3つのSNPは男女ともに共通して見られた。また、ゲノム上のSNPの位置を調べてみると、LBX1 (lady bird homeobox 1)と言う遺伝子の近傍に存在していることがわかった。

 LBX1 のヒトでの発現パターンを、様々な組織で調べた所、LBX1 遺伝子は胎児、並びに成人の脊髄や筋肉に特異的に発現していた。LBX1 は脊髄の感覚神経系や筋肉の発生に関与することが知られている。また、猿のモデルやヒトの疾患の解析
から感覚神経系の異常は側弯を引き起こすことが知られており、今回発見したSNP がLBX1 機能に関与していることが示唆される。

 研究グループは今回の結果を踏まえて大規模な国際共同研究を始めている。今後、3つのほかにも関連のSNPが見つかることが予想されており、今後の研究の進展を見越して研究グループは、臨床情報と組み合わせた思春期突発性側彎症の診断・予測モデルの作成にも取りかかっている。

 患者や家族にとっては症状の進行が大きな不安となっており、さらに進行を観察するための頻繁なエックス線診断による放射線被ばくの心配も加わる。診断・予測モデルによって症状の進行がある程度正確に見通すことができれば、精神的負担の軽減にもつながると期待されている。

 患者の多くは、数カ月に一度の経過観察を受ける程度の軽症だが、進行するとコルセットなどを装着する治療が必要になる。今回の成果を基に病態の理解が進めば、新しい治療法開発の可能性も期待できると研究者たちは言っている。

 脊椎側湾症とは?
 脊椎側湾症(せきついそくわんしょう)とは、脊椎(背骨)が側方に湾曲する病気である。側方への湾曲以外に、前後に湾曲した後彎症もある。 

 脊椎とは、正常な状態であればまっすぐに伸びているものであるが、この病気の場合には、側方(横方向)に湾曲していたり、脊椎がねじれている。痛みを伴うことは稀なため初期における発見は難しく、ある程度成長してしまってから気がつく場合が多い。肩やウェストの高さが左右で違うなどの外見上の問題の他、高度の湾曲になると、腰背部痛に加え胸の圧迫と変形による呼吸器障害・循環器障害など内臓にも影響を及ぼす。

 日本では1980年(昭和55年)年頃より小学校でのモアレ撮影による検診が普及し、早期発見が可能になった。およそ1:7の割合で、女子に多く発症する。原因の分からない「特発性側湾症」が大部分を占めている。発症時期により、乳幼児側湾症、学童期側湾症、思春期側湾症、に細分され、10代初期に発症する思春期側湾症が最も多い。

 有効な治療法がない?
 原因の特定ができているものとして、先天性側湾症(先天的または発育段階に生じた脊椎の異常による発症)、神経原性側湾症(脳や脊髄の異常による発症)、筋原性側湾症(筋肉の異常により正常な姿勢を保てないことによる発症)、間葉性側湾症(マルファン症候群にみられる)、神経線維腫症、外傷性側弯症…があげられる。

 治療は、装具による矯正の例(56度から27度に改善)湾曲の大きさ(コブ角/Cobb angle)を測り、おおむね軽度(30度未満)
、中度(30度以上50度未満)、高度(50度以上)に分類され、定期的なレントゲン撮影による経過観察の他、25度以上では装具(コルセット)による維持療法、さらに高度では手術をすることとなる。手術ではスクリューやロッドを挿入して、脊柱を矯正する。いずれの場合も湾曲が完全になくなる(完治する)ことは無い。

 民間療法である整体・カイロプラクティック・ヨガなどで、腰背部痛などが緩和される場合があるものの、側湾角度の改善・完治に関して医学的な根拠は無いとされる。日本側彎症学会も民間療法が無効であるとの立場を取っている。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia 脊柱側湾症 サイエンスポータル 思春期特発性側湾症の原因遺伝子発見 

自然療法による脊柱側湾症 予防と治療法 (Your Plan for Natural Scoliosis Prevention and Treatment: Health in Your Hands)
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