ベトナムのジャワサイが絶滅

 2010年12月、佐賀県から鹿児島県にかけての九州西部で、地元では普通種のアカエイとともに漁獲され、煮付けなどにしておいしく食べていたエイが、実は新種のアリアケアカエイであることが判明した。これほど大きな魚が、新種と知らずに食べられ続けていたことは驚きである。

 一方、密猟のため、絶滅に瀕している大型哺乳類がいる。それは何だろう?2011年10月25日、ベトナムに生存していた最後のジャワサイが密漁で殺され、ベトナムに生息するジャワサイが滅亡したことを、世界自然保護基金(WWF)が発表した。これでアジア大陸からジャワサイは姿を消し、生き残っているジャワサイはインドネシア・ジャワ島西部の50頭だけになった。

 ジャワサイの絶滅を防ぐため、ベトナム政府は1992年に保護区を設け、さらにこの保護区をカティエン国立公園に併合して、生息域の保全を図っていた。WWFもベトナム政府に協力して保護活動が進められたが、2004年にカナダのクイーンズ大学が調査したところ、2頭の生存が確認されただけと状況はさらに悪化していた。


Javan-rhino

 その後、WWFの調査で2010年4月までにジャワサイの足跡と22のふんが確認されていた。しかし、今年4月にカティエン国立公園内でジャワサイ1頭の死体が見つかり、遺伝子調査の結果、見つかっていたふん全てがこのジャワサイのもであることが分かった。サイは角を狙った密漁の対象になっており、このジャワサイも角は切り取られ、脚の骨から銃弾が見つかっている。2010年までに確認されていたふんからはこのサイ以外の遺伝子は見つかってなく、殺されたのはベトナムで生き残っていた最後のジャワサイとWWFは判断した。

 スマトラ島とボルネオ島の熱帯林に生き残っているスマトラサイの生息数も、推定で300頭余と厳しい状況にある。(サイエンスポータル 2011年10月26日)


 ジャワサイとは?

 ジャワサイ(Rhinoceros sondaicus)は、動物界脊索動物門哺乳綱ウマ目(奇蹄目)サイ科に分類されるサイ。体長300-320センチメートル。尾長70センチメートル。肩高160-175センチメートル。体重1,500-2,000キログラム。体形はやや細い。皮膚には明瞭ではないものの、鎧状の皺がある。体色は灰色。頭部は小型。角は1本のみで、角長25センチメートル。四肢はやや長い。メスは角がない個体が多い。

  主に低地の熱帯雨林に生息し、河川や沼を好む。単独で生活することが多い。1日に15-20kmもの距離を移動することもあるが、一定の地域内でのみ活動することが多い。食性は植物食で、木の枝や樹皮、木の葉、芽、果実などを食べる。繁殖形態は胎生。46-48日の間隔で発情すると考えられている。妊娠期間は16か月。1回に1頭の幼獣を産む。授乳期間は1-2年。オスは生後6年、メスは生後3-4年で性成熟する。

 ジャワサイはかつて、インドシナ半島およびスマトラ島、ジャワ島の熱帯林に生息していた。しかし、森林の消失と、薬の原料として中国や東南アジアで珍重される角を狙った密猟により減少。スマトラ島およびインドシナ半島の大半のエリアでは、絶滅した。この中でわずかに生き残っていたのが、インドネシア・ジャワ島西部のウジュンクーロン国立公園と、ベトナムのカティエン国立公園の2カ所の保護区。

 ジャワサイは地球上で最も数が少ない大型獣として知られており、1967年から1968年に行われた調査では生息数が 25 頭まで減少したとされた。このうち、ベトナムの個体群はとりわけ数が少なく、1988年までは絶滅したとも言われていた。その後、確かな生存の情報が確認され、1992年にベトナム政府はサイの保護区を設立。後にこの保護区は、より大規模なカティエン国立公園に併合され、広く生息域の保全が図られることになった。


 迫る絶滅の足音

 WWF も1998年からベトナム政府に協力し「カティエン国立公園保護プロジェクト」を展開。翌年5月には、自動カメラを使った調査で、インドシナ半島に生き残るジャワサイの写真を、世界で初めて撮影することに成功していた。しかし、こうした一連の調査の結果、ベトナムのジャワサイの推定個体数は、わずかに8頭前後であることがわかり、まさに絶滅寸前の危機にあることが明らかになった。

 現地での保護活動自体も難航した。5年にわたるベトナム政府との「カティエン国立公園保護プロジェクト」は、一定の成果を挙げたものの、その終了後は、燃料用の薪や狩りを目的に、人が公園内に入り込んだり、保護区自体も農地開発に圧されて縮小されるなど、現地の活動が停滞。

 2004年にカナダのクイーンズ大学が調査した際には、少なくとも2頭の生存が確認されていたが、生息数についても、精度の高い情報が得られない状況が続いた。

 2009年にWWFは再びカティエンで訓練された犬を使った調査を開始、2010年4月までに22の糞のサンプルを入手した。また、足跡の調査も行ない、ジャワサイの生存を確認していた。

 ところが、この足跡は2月上旬を最後に、見られなくなった。4月、公園内で一頭のジャワサイの死体が見つかった。角は切り取られ、脚の骨からは銃弾が見つかった。

 WWFが、このサイと採集した糞の遺伝子を調べたところ、全て同じであることが分かった。調査では、他の遺伝子を持つ糞は見つかっていない。おそらくベトナム最後の、またアジア大陸最後の個体であろうジャワサイは、密猟の犠牲になった。


 サイ5種は、すべて絶滅危惧種

 サイはゾウに次ぐ大型の陸棲哺乳類であり、最大の種であるシロサイは体長4m、体重2.3tに達する(最大で3.6tという記録がある)。巨体に似合わず最高時速50kmで走ると言われる。サイの皮膚は非常に分厚く硬質で、体全体を鎧のように覆っている。その皮膚はあらゆる動物の中でも最硬といわれ、肉食獣の爪や牙を容易には通さない。加えて成獣は大きな体躯を持つことにより、肉食獣に襲われて捕食されることは少ない。しかし1985年から1995年の間にインドのカジランガ国立公園において行われた調査では、インドサイのトラによる捕食が密猟に次ぐ脅威になっているとの報告がある。

 頭部には1本または2本の硬い角を持つ。これはほとんどの動物に共通して言えることだが、角の主な用途は敵に対する攻撃や防御ではなく、サイ同士が角をぶつけ合って、個体の優劣を決めるためのものである。成分を見ると角は骨ではなく、むしろ人間の髪の毛や爪に近い。表面から中心部までの全体が、体毛や蹄と同じく、皮膚の死んだ表皮細胞がケラチンで満たされてできた角質で構成されている。そのためウシなどの角とは違い、折れても時間が経てば再生される。動物園では飼育員の安全のため(主な用途が外敵排除でないとはいえ、暴れると角を振り回すことがあり、ぶつけられると死傷も在りうる)、野生および保護区では角を目当てとした密猟防止のために、意図的に角を切り落とすこともある。

 目は小さく視力は弱いが、鋭い嗅覚と聴覚をもつ。夜行性であり、草や葉を主食とする。基本的に単独で生活するが、草原で生息するシロサイは小さな群れをつくることがある。雄は通常、縄張りを持ち、尿でマーキングすることで縄張りを主張する。火を見ると消す習性があるものがいるために「森の消防士」とも呼ばれる。現生のサイは5種で、そのいずれもが絶滅の危機に瀕している。生息数減少の主な原因は人間による乱獲であり、現在でも角を目当てにした密猟が絶えない。

 角は工芸品や漢方薬の材料として珍重され(もっとも角に薬としての効用は実はほとんどない)乱獲が進んでいる。サイ科の5種すべてが絶滅の危機にあり、ジャワサイ、クロサイ、スマトラサイの3種が絶滅危惧 IA 類に指定されている。(Wkipedia)


参考HP Wikipediaサイ WWFジャパン ベトナムのジャワサイが絶滅

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 01月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
日経ナショナルジオグラフィック社
動物地球遺産 ~絶滅危惧種・珍獣たちのビジュアル博物館~
クリエーター情報なし
シンフォレスト

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