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世界初!人工光合成に成功
去年、発表されたニュースで、「世界初!水とCO2から“人工光合成”でギ酸ができた」という。ものがあった。これは、豊田中央研究所が行っている研究で、水と二酸化炭素(CO2)だけを原料に、太陽光エネルギーで有機物である、ギ酸をつくり出したもの。
人口光合成については、1970年代から研究されており、高濃度の紫外線や、特殊な薬品を使用して成功をした例はあったが、植物と同様な自然状態での光合成の成功は例がなかった。
今回の研究では、光合成の作用のうち、水を分解して酸素を作り出す反応を「半導体」に、CO2から有機物を取り出す働きを、もうひとつの「半導体と特殊な金属」に担わせることで「自然状態」での光合成に成功した。有機物として酢酸に似たギ酸が生成されるが、アルコール成分などバイオ燃料の生成も可能という。
人を幸せにする技術:水とCO2から「人工光合成」
トヨタグループの豊田中央研究所(愛知県長久手町)は、水と二酸化炭素(CO2)を原料に、太陽光エネルギーで有機物をつくり出す「人工光合成」の実証実験に成功した。高価な薬品などを使用して成功した例はあるが、植物と同様に水とCO2だけの原料で人工光合成に成功したのは世界初の快挙だ。
同研究所は、石油の代替資源を探している中で、「自動車が排出しているCO2を資源にできれば一石二鳥だ」とひらめき、約5年前から人工光合成の研究に着手した。10人弱の研究チームで、実験に取り組んできた。
試行錯誤の末、特殊な触媒を活用することで、水を水素と酸素に分解して電子を抽出する反応と、その電子をCO2とくっつける反応を同時に起こすことに成功。酢の仲間の「ギ酸」という有機物をつくり出すことに成功した。
有機物は生物のエネルギー源。無尽蔵にある太陽光と水、CO2だけで有機物を取り出すことができるなら、世界のエネルギー問題は解決に向け大きく前進する。技術の応用で、将来的にはアルコールなど、より付加価値の高い有機物をつくり出せる可能性もある。梶野勉主席研究員は「『温暖化の元凶』と悪者にされているCO2が資源になれば、将来の有機物を使った循環社会という理想の社会に近づくことができる」と夢を膨らませる。(毎日新聞 2012年1月3日)
「ギ酸」とは何か?
今回、人工光合成でできた有機酸の「ギ酸」。たが、「ギ酸」は聞いたことはあるが、あまり馴染みがない人がほとんどであろう。ギ酸とは何だろう?
ギ酸(蟻酸: formic acid)は、低級のカルボン酸の一つ。化学式は HCOOH。IUPAC命名法ではメタン酸 (methanoic acid) が系統名である。−CHO基を持つため、アルデヒドの性質(還元性)も示す。工業的に作られており、水溶液が市販されている。加熱すると発火しやすい。酢酸生産時の副生成物としてギ酸が得られるが、それだけでは不足するため他の方法を用いたギ酸の生成も行われている。
現在つくられる方法は、メタノールと一酸化炭素を強塩基存在下で反応させると、ギ酸メチルが生成する。
CH3OH + CO → HCOOCH3
工業的にはこの反応は高圧液相下で行われる。典型的な反応条件は 80 ℃、40気圧でナトリウムメトキシドを用いるというものである。ギ酸メチルを加水分解するとギ酸が生成する。
HCOOCH3 + H2O → HCOOH + CH3OH
ギ酸はアリ(蟻)の一部の種がつくっている酸。そのためギ酸は漢字で蟻酸と書く。15世紀初頭に、錬金術師や博物学者の一部は、エゾアカヤマアリ類の蟻塚から酸性の蒸気が出ていることを知っていた。1671年、イギリスの博物学者であるジョン・レイ (John Ray) が、大量の死んだアリの蒸留によりギ酸を初めて単離し、「アリの酸 (formic acid)」と命名したのが始まり。
ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックが、シアン化水素からのギ酸の合成に成功している。シアン化水素はギ酸のニトリルとも見做せる物質である。1855年には、フランスのマルセラン・ベルテロが、今日行われている一酸化炭素からの合成を初めて行った。
ギ酸は有用だが、やや危険
液体のギ酸溶液や蒸気は皮膚や目に対して有害である。特に目に対して回復不能な障害を与えてしまう場合がある。吸入すると肺水腫などの障害を与えることがある。ギ酸の蒸気中には一酸化炭素も含まれていることが多いため、大量のギ酸の蒸気を扱う際には注意しなければならない。
慢性的な暴露により肝臓や腎臓に悪影響を及ぼすと考えられている。またアレルギー源としての可能性も考えられている。
動物実験により変異原性が確認されていたが、変異原性はギ酸のみに見られ、ギ酸ナトリウムなどの塩には見られないことから、変異原性はその低いpHによるものだと考えられている。
主な利用法としては家畜用飼料(サイレージ)の防腐剤や抗菌剤といったものが挙げられる。干し草や貯蔵牧草などに噴霧すると腐食を抑え、栄養価を保持するなどの特徴から冬季の牛の飼料などに広く用いられる。養鶏業ではサルモネラ菌除去のため時々飼料に加えられる。
養蜂業ではミツバチヘギイタダニ等のダニ殺虫剤として用いる場合がある。また繊維工業や皮なめしの場でも用いられることがある。ある種のギ酸エステルは香料となる。
ギ酸を燃料とするギ酸燃料電池も開発中である。ロジウム単核金属錯体触媒をもちい常温常圧下でギ酸を分解し水素を高効率に取り出すことに成功した。これにより、取扱いに不便な水素貯蔵にかえてギ酸による安全貯蔵、運搬に道が開けたことになる。(Wikipedia)
理想は植物の光合成
様々な用途に使われるギ酸であるが、まだ一般の人が扱える薬品ではないようだ。せめて酢酸やアルコールになると、もっと幅広い用途が可能になる。
ちなみに植物は、葉緑体内の光合成で二酸化炭素が固定され三炭糖リン酸(炭素数3個の糖にリン酸が結合したもの)が生産される。三炭糖リン酸は二つの経路を辿る。第1の経路は、葉緑体から可溶性基質(サイトゾル、細胞基質)側へ排出され、主としてショ糖リン酸合成酵素の働きでショ糖へ変換された後、分裂、成長など生物活性の高い組織・器官や貯蔵組織・器官へ運ばれる。
第2の経路は、葉緑体内で三炭糖リン酸2分子が結合して六炭糖リン酸(炭素数6個の糖にリン酸が結合、ブドウ糖-1-リン酸など)となり、さらにデンプンへ変換される。このデンプンを同化デンプンと呼んでおり、この形で貯蔵されることは有名だ。
「人工光合成」の研究は始まったばかり、半導体を使用するのも面白い。実際に植物が自然につくっている、同化デンプンが人工的に合成可能になれば、世界の食糧問題は一挙に解決する。今後も楽しみな研究分野である。
参考HP Wikipedia 光合成
光合成とはなにか (ブルーバックス) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
人工光合成と有機系太陽電池 (CSJ Current Review) | |
クリエーター情報なし | |
化学同人 |
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