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 想定できなかった巨大地震・巨大津波
 未曽有の災害をもたらした、東日本大震災。震源をほぼ同じ場所にした、大地震が再び起きる...という恐るべき研究が海洋開発機構(JAMSTEC)によって発表された。

 専門家でも今回のようなM9.0の巨大地震を想定した人は少なかった。従って津波の大きさも予想できなかった。気象庁が測定した、津波の第一波の高さは、わずか数十センチ。それをそのまま報道したために、第二波以降の巨大津波からの避難が遅れた。

 気象庁は津波警報の出し方を改善する方針だ。巨大地震で規模を過小評価する可能性がある場合は、予想高を「巨大」「高い」と数字を使わず表現して避難を促す。地震の大きさや津波の高さが正確に予測できない現状では、最善策だ。気象庁は今年中の運用開始を目指す。

 東日本大震災の地震発生がきっかけになり、東北地方沖の太平洋プレートの深い部分で、岩盤同士が押し合っていた力が、引っ張り合う力に転じていたことを、海洋研究開発機構などの研究グループが突き止めた。 引っ張る力がプレート内でより強く働くようになり、マグニチュード(M)8.1の昭和三陸地震と同じタイプの大規模地震が起きやすくなっていることを示す。1月31日付の米物理学会誌に掲載される。

 東日本大震災の本震は陸側のプレートの下に、太平洋プレートが沈み込む「プレート境界」で起きた。この太平洋プレートの浅い部分では岩盤を引っ張る力、深い部分では押し合う力が働いているが、巨大地震の発生で、このバランスがどう変わったかはわかっていなかった。 (2012年1月31日 読売新聞)

 押す力が、引く力に変わった?
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、宮城県および福島県東方沖の日本海溝東側(太平洋プレート側)において、震源位置と震源メカニズム(断層の向きと運動方向)を調査した結果、この海域の太平洋プレート内部の深さ40km付近の応力場が、東北地方太平洋沖地震後に圧縮場から伸張場に変化しており、「正断層地震活動」の活発化と関連していることが判明したと発表した。

 海洋研究開発機構の研究チームは、2011年4月から7月にかけて、福島沖などの海底に、地震計20台を設置した。

 尾鼻主任研究員は「(3月11日の)地震前には、太平洋プレートが日本海溝から下に沈み込むとき、深い部分に押されるような、圧縮されるような、力の場であった。一方、地震後には、深さ40km付近まで、全体的に引っ張られる力の場であったということがわかりました」と語った。

 「日本海溝」は、「太平洋プレート」と呼ばれる岩盤が沈み込み始める場所。震災前、太平洋プレートの深い部分では、プレートの沈み込みによって、押し合う力が加わっていた。ところが、震災によって、接していた岩盤が大きく崩れ、今度は引っ張る力が加わるように変わったという。

 これによって、震災前は深さ20km付近で止まっていた地震も、震災後は深さ40kmまでプレートが割れることで、最大でマグニチュード8クラスの余震が起きる可能性もあるという。

 津波警報:M8 超時「巨大」「高い」
 津波警報の発表方法などの見直しを進めてきた気象庁の有識者検討会は1月31日、改善策の提言をまとめた。津波の予想高の区分を従来の8段階から5段階に簡素化。巨大地震で規模を過小評価する可能性がある場合は、予想高を「巨大」「高い」と数字を使わず表現して避難を促す。過小評価が問題になった東日本大震災を受けた改善策で、気象庁は今年中の運用開始を目指す。

 発表する予想高は、1、3、5、10メートルと10メートル超の5段階。1メートルは津波注意報、3メートルは津波警報で、5メートル以上は大津波警報になる。

 地震の規模を示すマグニチュード(M)が8を超えるような巨大地震で、短時間でMを推定することが困難な場合は、大津波警報の対象地域への第一報の予想高は「巨大」、津波警報の地域には「高い」と表現。津波注意報の地域には「大きいおそれ」と表現する方針だったが、「分かりにくい」との意見があり、数字も言葉も出さないことにした。

 検討会では、沖合に設置した波浪計などによる津波観測を基に、沿岸到達時に推定される高さを発表する方針も確認した。ただ、小さい推計値が出た場合は油断させないよう、大津波警報の対象地域は推計値3メートル超、津波警報では1メートル超の場合のみ数値を発表する。実際に沿岸で観測された高さも、予想より低かった場合は数値を出さず、「観測中」などとして油断させないようにする。

 気象庁はM9の東日本大震災発生当初、M7.9と過小評価し、10メートル前後の津波が襲った岩手県や福島県の沿岸部に「3メートル」との第一報を発表した。記者会見した気象庁の永井章・地震津波監視課長は「数字に頼らず、危機感を伝える新しい警報発表の軸を設ける意見をいただいた。避難行動に結びつく警報にできる」と話した。(毎日新聞 2012年2月1日)

参考HP 海洋研究開発機構 東北沖太平洋プレート上でM8 程度の余震の可能性

巨大地震・巨大津波 ─東日本大震災の検証─
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