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 トマトの健康成分は?
 ヨーロッパでは古くから「トマトが赤くなると医者が青くなる」という諺があり、トマトは健康野菜として知られている。トマトの健康成分は何だろう?
 
 他の野菜類と同様に、トマトはビタミンCやカロチンを多く含む。また、赤色の色素リコピンは1995年にがん予防の効果が指摘されて以来、注目を集めている。これまではカロチンやリコピンなどの抗酸化成分の健康機能性が知られていたが、今回、全く新しい機能性成分が見出された。


 京都大学の河田教授らはトマトの成分を細かく分け、脂肪を燃やす酵素をつくる遺伝子にかかわる物質を探したところ、脂肪酸の一種「13-oxo-ODA」がその遺伝子のスイッチになっていることを突きとめた。トマトの中でリノール酸からできるという。 

13-oxo-ODA

 トマトを食べると中性脂肪が下がることは動物実験でわかっていた。だが、その効果はリコピンなどトマトの健康成分にはなく、何が効いているのかは不明だった。(asahi.com 2012年2月10日)

 トマトから健康成分13-oxo-ODAを発見
 河田照雄 農学研究科教授(生理化学研究ユニット兼任)、金英一 同研究員らの研究グループは、柴田大輔 財団法人かずさDNA研究所部長(生存圏研究所客員教授)、日本デルモンテ株式会社、千葉県農林総合研究センターとの共同研究で、脂肪肝や高中性脂肪血症などの脂質代謝異常の改善に有効な新規成分13-oxo-9,11-octadecadienoic acid (13-oxo-ODA) をトマトから見出し、肥満マウスにおいて顕著な改善効果が得られることを確認した。

 過栄養と運動不足を背景とした、肥満に伴う脂質代謝異常症やメタボリックシンドロームの増加が世界的な社会問題となっている。脂質代謝異常は、動脈硬化症などの直接的な危険因子となるため、このような代謝異常の予防・改善は非常に重要だ。本研究では、身近な食品であるトマトに着目し、脂質代謝異常の改善に有効な新規成分の探索およびその機能解析を行うことを目的とした。

 肝細胞などを用いたin vitroの解析結果から、トマト、特にトマトジュース中に脂肪燃焼作用を有する13-oxo-ODAが多く含まれることを発見した。
 
 脂質代謝異常に対する13-oxo-ODAの有効性を評価するために、肥満・糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスを用いて、機能解析を行った。KK-Ayマウスを13-oxo-ODAを0.02%あるいは0.05%含む高脂肪食(60% kcal 脂肪)で4週間飼育した結果、13-oxo-ODA摂取は、高脂肪食による血中および肝臓中の中性脂肪量の上昇を抑制しました。

 また13-oxo-ODA摂取群では肝臓における脂肪酸酸化関連遺伝子群の発現増加と同時に、エネルギー代謝亢進の指標である直腸温の上昇が認められ、13-oxo-ODA摂取により脂肪酸酸化、すなわち脂肪燃焼が亢進していることが示唆された。(京都大プレスリリース)
 
 リコピンの健康効果
 リコピンというのは、最近になってようやく効果が認められたトマトの赤色の色素。1995年にがん予防の効果が指摘されて以来、注目を集めるようになった。リコピンは、緑黄色野菜(ニンジンなど)に含まれるベータカロチンの仲間で、その抗酸化作用はベータカロチンの2倍の働きがあると言われている。

 抗酸化作用とは、ガンや動脈硬化など、様々な生活習慣病の原因となる活性酸素を消去するはたらきのことを言う。活性酸素が体内で増加すると、細胞膜やDNAを傷つけ、ガン細胞ができたり、動脈硬化などの怖い生活習慣病のきっかけになってしまう。しかし、リコピンの抗酸化作用は、活性酸素を消し去り、発ガン抑制や心臓病などの予防効果を発揮する。 
 
 「トマトが赤くなると医者が青くなる」と諺にもあるように、トマトは緑色から赤色にく熟していく過程の中で、リコピンが大幅に増加し、食物繊維やビタミンC、Eなどの成分も増加する。つまり、日光を多く浴びて育った完熟期の赤系トマトは、リコピンだけでなくビタミンやミネラルなどもより多く含んでいることになる。断然赤いトマトの方が健康にいい。

 あるデータでは、週に7回以上トマトを摂取した人は、1回以下しか摂取しなかった人に比べて、心臓病になる危険性が約30%も低かったそうだ。また、別のデータでは、血液中のリコピンやビタミン濃度の低い女性は、子宮頚ガンにかかりやすく、また血中のリコピン濃度の低い人は、慢性大腸炎を起こしやすいことがわかった。

 その他にも、喫煙者と非喫煙者では、通常は血中リコピン濃度は同じですが、タバコを3本吸うと、その害を消すために血中リコピン濃度が40%も減少してしまうという。タバコを吸う人は、その分多くリコピンを摂取する必要がある。

 1日の摂取量の目安
 リコピンや「13-oxo-ODA」は、もともと油に溶けやすい性質を持っている。だから、油を使った調理法によって、吸収がぐんと高まる。リコピンは熱に強いので、炒めたり煮込んだりしても成分がそれほど減少する心配もない。トマトソースはイタリア料理などでもよく使われているように、オリーブオイルなどと一緒に調理するのが効果的。もちろんトマトジュースやケチャップなどの加工品を利用するのもいい。

 老化や生活習慣病の予防をしたり美白効果を期待するなら、1日に15mgのリコピンを摂取することが望ましい。喫煙者の方はさらに多く摂取したほうがよい。

 15mgのリコピンは、だいたいLサイズのトマト2個分に相当する。トマト2個となると結構な量。そこで、15mgのリコピンを摂取できるトマトや加工品をご紹介しておく。

 リコピン15mgが含まれる量: トマト 約500g (Lトマト2個)、プチトマト 約250g (約17個)、ホールトマト 約170g (2分の1缶弱)、トマトジュース 約160g (1本弱)、トマトケチャップ 約75g (大さじ4杯強)。こうして見ると、加工トマトと生のトマトは種類が違うため、加工トマトの方が、リコピンが多く含まれていることがわかる。無理に生で摂取しなくても、加工品を上手につかって食べる。

 今回発見された「13-oxo-ODA」は、量としてはリコピンの1/3程度しかふくまれていない。トマトジュースなら1日3本でようやく効果がでる程度の量だ。リコピンと同様、加工品をうまく利用したい。

参考HP 健康60 トマトが赤くなると医者が青くなる?トマトの効果
 京都大学プレスリリース トマトから脂肪肝、血中中性脂肪改善に有効な健康成分発見

トマト大好き!健康生活。―リコピンパワー美味しい活用レシピ (SERIES 食彩生活)
赤堀 博美
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