小型衛星を一度に9基も打上げ
欧州宇宙機関(ESA)は2月13日、新型の小型ロケット「ベガロケット」初号機を、南米の仏領ギアナにある宇宙基地から打ち上げたと発表した。ベガロケットは小型衛星を低価格で打ち上げる能力があり、初号機には、イタリアの小型衛星など計9基の衛星を搭載、分離に成功した。
宇宙航空研究開発機構が2013年度の打ち上げに向けて開発中のイプシロンロケットと、市場におけるライバルとなる。人工衛星市場では近年、小型衛星の需要が増えている。そのためESAは、大型衛星を打ち上げられる主力ロケット「アリアン5」とは別に、ベガロケットの開発を進めてきた。
ベガロケットは4段式で、全長約30メートル。300~2500キロ・グラムの小型の科学衛星や地球観測衛星を打ち上げられる。(2012年2月14日 読売新聞)
打ち上げられたロケットは順調に飛行し、打ち上げから約55分後にイタリアの衛星「LARES」を切り離し、その後、残りの小型衛星8基を切り離し、打ち上げが成功した。
「ヨーロッパに新しい発射システムが追加されました。今日は長い運用における最初の1日で、これは成功へと導くでしょう。ベガロケットの追加によって、ヨーロッパはどんな衛星でも打ち上げられるようになりました」今回の打ち上げ成功を受け、欧州宇宙機関(ESA)のジャン・ジャック・ドルダン(Jean-Jacques Dordain)長官はこのよう述べた。
ベガロケットは小型衛星をより低コストで打ち上げるために設計されたロケットである。3段式の固体燃料ロケットと上段液体燃料ロケットで構成され、高度700kmの地球低軌道(LEO)への打ち上げ能力は約1500kgである。(ESAnews 2012年2月14日)
ベガロケット(Vega)とは?
ベガ(イタリア語: Vettore Europeo di Generazione Avanzata, VEGA)ロケットは、欧州宇宙機関(ESA)が開発した低軌道用人工衛星打ち上げロケットである。
ESAの主力ロケットのアリアン5は静止軌道に6トンものペイロードを投入できるが、300kgから2,000kg程度の小型の科学衛星や地球観測衛星を低軌道(LEO)へ経済的に打ち上げたいという需要に応えるため、高度700kmの太陽同期軌道(SSO)に1.5トンの衛星を打ち上げられるヴェガを開発することになった。
イタリア宇宙機関(ASI)が開発プログラムを主導しており、ロケット機体および推進システムはフィアットアヴィオ社などが担当するほか、フランス国立宇宙センター(CNES)なども開発に参加し、打上げはCNESのギアナ宇宙センターのELA1から行う。参加各国の分担比率はイタリア65%、フランス12.43%、ベルギー5.63%、スペイン5%、オランダ3.5%、スイス1.35%、スウェーデン0.8%となっている。
開発及び製造はヴェガロケットの開発及び製造を目的として2000年12月に設立されたELV S.p.Aによってなされ、最低年4機の打ち上げを確保する予定である。
当初は2006年中の初飛行を目指していたが計画は大幅に遅れ、2012年2月13日に初打上げに成功した。メインペイロードはLARES。
初 期の構想は1990年代初頭になされ、アリアンの固体ロケットブースター(SRB)の技術を用いて小型衛星を打ち上げるロケットを補完するというものである。これは1988年にASIによって提案されたサン・マルコ・スカウト計画を引き継ぐものであった。サン・マルコ・スカウト計画は、引退したアメリカのスカウトを置き換える目的でZefiro モーターを用いた新たなロケットを開発するという計画であり、スカウト2として知られている試験機が1992年に1機が失敗し、制式型として予定されていたゼフィーロも含めて凍結されていた。
1995年の段階では3段構成で高度700kmのLEOに700kgの打ち上げ能力をもつロケットであり、直径1.9mのZefiro 16 固体ロケットモーターを1,2段目として用い、3段目としてIRIS (Italian Research Interim Stage) を用いるというものであった。
1997年には2つの型式がフィアット・アヴィオ社とウクライナのユージュノエ設計局の共同で提案された。
前述の構想と同様に1、2段にZefiro 16 固体ロケットモーターを用い、第3段、第4段に非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)と四酸化二窒素(NTO)を用いる液体ロケットエンジンであるRD-861とRD-869を用いる。高度700kmの極軌道に300kgの打ち上げ能力をもつ。
ベガ K0の第1段をアリアン5のブースターであるEAPを短縮したP85 固体ロケットモーターで置き換えたもの。高度700kmの極軌道に1,600kgの打ち上げ能力をもつ。
1998年においてASIによってアリアンのブースター技術を用いた固体ロケットとして再び提案された。同年4月にアリアン5のSRBであるEAPのノウハウを用いたものとしてESAのプリプロジェクトとして採用された。これはヴェガ Kの下段に第3段としてZefiro 7 固体ロケットモーターを使用する3段構成のロケットであり、最上段に液体ロケットエンジンを用いた軌道精度向上モジュールの採用を検討していた。打ち上げ能力は700km円軌道に2,000kgとなる予定であった。
2000年11月27日から28日にアリアンプログラムとして承認され、同年12月15日に7ヶ国による共同開発計画として正式に開始される。最終的には2004年に現在の構成に定まった。
世界のロケット打ち上げの成功率
今後は、ロケットの商業化が進み、人工衛星を民間企業の委託で打ち上げることが主流になっていくと思われる。日本のロケット「H2-A」は世界に対抗できるのであろうか?
H-2Aロケットと同等かそれ以上のクラスの世界の大型ロケットの機種、製造企業、打上成功率をピックアップすると、次のようになる。因みに、この中で商業打上ロケットとしてよく利用されているのが、アリアン5、ゼニット、プロトンK/Mである。
日本のH-2Aロケットには、202/2022/2024/204の4つの機種がある。製造企業は三菱重工業(株)。打上成功率は94.4%(18機中17機成功)(2009年9月末時点)
米国は、デルタ4ロケット。機種は4M/4Hの2機種。製造企業はBoeing社。打上成功率は90.9%(11機中10機成功)である。また、アトラス5ロケットは5機種、製造企業はLockheed Martin社、打上成功率は94.7 %(19機中18機成功)である。
欧州では、アリアン5ロケット。機種は、5G/5GS/5ECA/5ESの4種。製造企業は、EADS Space Transportation社。打上成功率は94.7 %(49機中45機成功)である。今回、新たにベガロケットが加わった。
ロシアは、プロトンKロケット。機種はK型1種のみ。製造企業はKhrunichev State Research and Production Center社である。打上成功率は88.7 %(309機中274機成功)である。また、プロトンMロケットは、機種はM型1種。製造企業は、Khrunichev State Research and Production Center社である。打上成功率=94.7 %(38機中36機成功)だ。また、ソユーズロケットは、製造企業はSamara Space Center社、打上成功率=95.2%(1545機中1471機成功)。ゼニットロケットは、機種は2/2M/3SL/3SLBの4機種。製造企業はNPOYuzhnoye社で、打上成功率=87.5%(72機中63機成功)である。
中国は、長征ロケット。製造企業はChina Academy of Launch Vehicle Technology社。打上成功率は、94.4%(125機中118機成功)。
日本のロケットの国際競争力
H-2Aロケットの打上成功率は18機中17機成功で成功率94.4 %となる。面白いことに、ロケットの打上成功率は、打ち上げの機数が増えるにつれ95~96 % あたりで飽和するようだ。因みに、H-2Aロケットはあと2機連続成功すれば95.0 %となり、平成21年12月31日時点のデータで単純比較すれば、打上成功率では世界の第2位に躍進する。
成功率はまずまずだが、H-2Aロケットが売れるようになるのだろうか?現状分析すると、SJACでは、平成21年度の「我が国の宇宙産業振興に関する報告書(日本の宇宙産業振興戦略)」で議論したが、H-2Aロケットの商業利用を推進するためには、「打上成功率」、「価格」、「射場運用性」などのユーザーが重視する要素を満足することが必要。特に、商用衛星オペレータが重視するのは「価格」と言われている。
「価格」については、未だにライバルロケットより高いといわれている。この理由はいくつかあり、1つは、ロシアの大陸間弾道ミサイル「ICBM」が大量に残っておりこれを使うロケットは当然安く製造できる、2つ目は、欧州に見られるようにロケット価格を下げるために政府が目に触れにくいところで支援しているということ。
数年前に筆者がフランスのアリアンスペース社を訪問した時に幹部がいみじくも言っていたのが「ロケット開発に王道はない」ということだ。価格が安いということはそれなりの理由があるということで、ICBMがなくなればそれを使ったロシア・米国のロケットも高くなり、また日本も世界と同水準の政府支援、規制撤廃を行えば自ずと価格競争力はつくと考えられる。
なお、量産化、シリーズ化、クラスター化が低コスト化の最大の要素であることは言うまでもない。
H-2Aロケットが売れるようにするには、戦略的には、当面はH-2Aを改良し、欧米と同等の政府支援、規制の撤廃・緩和、トップセールス等により受注を獲得し、将来的には、次期基幹ロケットで技術的な課題を解決した本物の価格競争力を有する商業ロケットを開発する方策が良いと考えられる。
参考HP Wikipedia Vegaロケット JAXA 世界におけるロケットの現状
ロケットと宇宙開発 決定版 (Gakken Mook 大人の科学マガジン別冊) | |
クリエーター情報なし | |
学習研究社 |
宇宙ロケットのしくみ―人類が宇宙に行くための唯一の手段 (子供の科学サイエンスブック) | |
クリエーター情報なし | |
誠文堂新光社 |
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