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 金星の自転が遅くなった?
 欧州宇宙機関(ESA)の探査機から得られた新しいデータから、金星は以前よりゆっくりと自転していることがわかった。その時間は16年で、6.5分という大きさだ。こんなに遅くなる理由が見つからない。地球の場合は10万年にわずか1秒だけ遅くなる。

 だが、問題は自転周期、地球が一回自転するのにかかる時間は約23時間56分4.06秒。 金星の場合は極めて遅く、自転周期が243日。公転周期が225日だから、なんと「1日が1年より長い」という、不思議な特徴を持つ。

 これならば、何かの間違いではないかとも考えられる。ドイツ航空宇宙センター(DLR)のニルス・ミュラー氏(惑星学)は声明で、「2つのマップが対応せず、最初は私が計算を間違ったのだと考えた。(金星の回転の)数値をマゼランはとても正確に測定していたからだ」と述べている。「しかし、考えられる間違いはすべて確認した」という。


Venus Express

 自転が遅くなった原因の1つに、金星の分厚い大気と高速の風「スーパーローテーション」による摩擦が考えられる。例えば、規模はずっと小さいが、地球でも大気の動きが自転の速度に影響することが観測されている。

 二酸化炭素をたくさん含んだ重い大気に覆われた金星は、地球の海面位の約90倍の圧力が地表にかかっており、腐食性の硫酸からなる不透明な雲が、ハリケーン並みスピードで絶えず取り巻いている。

 しかし、ビーナス・エクスプレス計画に参加する科学者ハカン・スヴェデム(Hakan Svedhem)氏は、「平均自転速度をわずか16年間でこれほどまで変化させるような仕組みはなかなか見つからない」と語った。

 また金星表面の暴風「スーパーローテーション」については、これから接近する日本の惑星探査機「あかつき」の調査対象になっている。欧州宇宙機関(ESA)の金星探査機ビーナス・エクスプレスとともに、金星の謎の自転解明に一役買ってもらいたい。

 金星の探査と自転速度
 ヨーロッパの金星探査機「ビーナス・エクスプレス」の観測から、その非常に遅い自転が以前の計測よりもさらにわずかに遅くなっていることがわかった。赤外線観測で厚い大気ごしに地表を観測すると、1990年代初頭にNASAの探査機「マゼラン」で計測した自転速度をベースにした場合と比べて地形の場所がずれていたという。

 自転速度の精密な測定は、金星の中心核が液体か固体かを推測する手がかりになる。中心核の性質はさらに、金星の形成や進化を推理する材料になる。もし固体核であれば、星全体が持つ質量の割合がより中心に集まり、それだけ外から加わる力に強くなる。「外から加わる力」とは、具体的には金星の厚い大気がその主なものになる。地球の90倍もの高い気圧、そして星全体に吹き荒れる高速の風が、金星の非常に遅い自転速度に影響すると考えられている。地球でも風や海の干潮によるこうした影響がわずかに存在し、季節ごとの風向きや気温によって、1日の長さにミリ秒単位の違いが生じている。

 1980~90年代、ソ連の探査機「ベネラ」やアメリカの「マゼラン」が行ったレーダー観測で、厚い雲のヴェールに包まれていた金星の地表の様子が初めて明らかになった。マゼランは1990年から4年間、自転による地形の動きを観測し、そこから「金星の1日=地球の243.0185日」という数値が得られた。

 だが今回の観測研究では、1日はさらに6.5分長いことになる。地球からの長期レーダー観測の最新結果も同様だった。研究発表者であるNils Müller氏(ドイツ航空宇宙センター)は、マゼランの計測は正確だったはずなので、自分の計算が間違っていると最初は考えたという。だが、あらゆる誤差の可能性はチェックして潰した。さらに、ベルギー王立天文台のÖzgur Karatekin氏の検証により、これが短期的な差違ではなく長期的な変化であることがわかったのである。

 また最近では、金星の大気運動は数十年という長周期で変動しているという推測モデルも存在する。先述の通り大気と自転速度には関係があるので、このモデルは自転速度の変動を示していることにもなる。その他では、地球と金星の距離が比較的近くなったときの角運動量のやりとりが関係している可能性もある(ビーナス・エクスプレスのプロジェクト研究員Håkan Svedhem氏は、距離が遠すぎるとしてこれに否定的な見解を示している)。

 将来の着陸探査計画にとっても、金星の自転速度は重要な情報となる。「ビーナス・エクスプレス」の観測で、今後もさらに金星の謎が明らかになっていくだろう。(アストロアーツ 2012年2月13日)

 「あかつき」軌道投入は2015年か2016年
 それにしても「はやぶさ」に続き、粘り強い執念で金星探査を目指している、「あかつき」に対する期待は増すばかりだが、今どの辺を飛行しているのだろうか?

 JAXAは、昨年11月に金星に向けての軌道修正を完了した「あかつき」について、金星軌道再投入の見通しを発表した。使用できる観測機器に制限が出るが2015年に周回軌道に投入するか、観測機器に問題ない軌道ではあるものの経年劣化が心配される2016年に軌道投入するかという2回のチャンスがある。探査機の状態を見ながら、今後も検討が行われることとなっている。

 2011年9~11月にかけて金星に向けての軌道修正や不要となった酸化剤投棄を完了した探査機「あかつき」は、現在2015年に金星に接近する軌道で慣性飛行を続けている。

 探査機が大きな故障もなく2015年に金星にたどり着けば、そのときに金星周回軌道に乗せることはできるが、太陽との関係で当初予定とは異なる極軌道に近い周回軌道に入れる必要がある。「あかつき」の科学観測の目的として「高速大気循環メカニズムの解明」(注)と「雲の近接撮影や雷の観測」があるが、2015年に極軌道に近い周回軌道に投入した場合は「高速大気循環メカニズムの解明」について観測時間に制限が生じる可能性が高く、どの程度の科学的成果が得られるか不明だ。

 別の案としては、2015年には金星スイングバイを行い、2016年に赤道面に近い金星周回軌道に投入することもできる。この場合は得られるデータの精度が悪くなることが予想されるものの、どちらの目的も概ね達成できると考えられる。しかし設計寿命を考えると、探査機の運用上問題が生じるかもしれない。

 2015年の金星接近までにあと7回の近日点通過があり、その際の温度や紫外線環境の影響を調査する必要がある。現在も地上で探査機の温度予測の精度向上を目指した試験が進められている。設計寿命と得られる観測成果を考えると難しい判断を迫られているが、探査機の状態を見極めつつ、観測成果を最大化するような計画を立てていくとしている。(2012年2月3日 JAXA)

参考HP Wikipedia 金星 アストロアーツ 自転速度が変化?金星の1日、20年前より6分長く

ここまでわかった新・太陽系 太陽も地球も月も同じときにできてるの?銀河系に地球型惑星はどれだけあるの? (サイエンス・アイ新書)
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組曲「惑星」 作品32 2 金星 - 平和の神
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