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  “逆流性食道炎”若者に増加、ピロリ菌保有率低下が原因か?
 胸が焼け付くように痛む「逆流性食道炎」が増えている。欧米の人に多い病気だが、最近は若い世代を中心に目立つ。背景には胃がんを起こすピロリ菌の保有率の低下や欧米型食生活が関係しているという。

 欧米型の食事はしょうがないと思うが、ピロリ菌を持っていない人が若年層に増えたのが原因…というのは、どういうことだろうか? 

 ピロリ菌というと、よいイメージはない。細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因となりうることが明らかになっている唯一の病原体である。それだけではない。ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生につながることが報告されている。さらに、特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの胃外性疾患の原因となることが明らかとなっている。

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 「ここ数年、逆流性食道炎の患者が本当に増えてきた」。そう語るのは消化器治療が専門の鳥居明・鳥居内科クリニック院長(東京都世田谷区)。内視鏡で食道を見ると炎症を起こしており、かつて多かった胃潰瘍より目立つという。

 胃に入った食べ物は胃酸によって消化されるが、その胃酸が食道に逆戻りして、食道を傷つけ炎症を起こすのが逆流性食道炎だ。原因のひとつは欧米型の食生活。脂っこいものを食べると、消化のため胃酸の分泌が増える。脂肪の多い食事を続けると胃酸が分泌されやすくなり、逆流性食道炎になりやすくなる。

 もうひとつは、胃の粘膜の萎縮を通じて胃酸の分泌を抑える、ピロリ菌の保有率が減っていることだ。40代以上のピロリ菌の保有率は約6~8割と高く、かつての日本人に逆流性食道炎は少なかった。だが衛生管理が行き届いて母子感染が減り、10~30代の保有率は約10~20%と低い(国立感染症研究所調べ)。このため胃酸の分泌が増え、逆流性食道炎になりやすくなったのだ。

 消化器病に詳しい本郷道夫・東北大病院教授によると、日本人の胃酸の分泌は、ピロリ菌の保有率の低下とともに70年代から増えてきたことが確かめられているという。本郷教授は「日本人の胃酸分泌はさらに増えることが予想され、逆流性食道炎はもっと増える」と予測する。(毎日新聞 2012年2月12日)

 ピロリ菌は人にとって本当に有害か
 それにしても、これまで、有害とされてきたピロリ菌だが「逆流性食道炎」という病気については、有益であるというのが、本郷教授の主張。しかし、これには抵抗感を抱く読者も多いだろう。ピロリ菌について、復習してみよう。

 ピロリ菌は、1983年 オーストラリアのロビン・ウォレン(J. Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry J. Marshall)により発見された。胃の内部は胃液に含まれる塩酸によって強酸性であるため、従来は細菌が生息できない環境だと考えられていた。しかし、ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって胃へ定着(感染)している。

 この菌の発見により動物の胃に適応して生息する細菌が存在することが明らかにされた。ヘリコバクター・ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生につながることが報告されている他、特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの胃外性疾患の原因となることが明らかとなっている。細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因となりうることが明らかになっている唯一の病原体である。

 この菌は突然現れたものではなく、古い歴史がある。ピロリ菌の病原因子の遺伝子型を解析した結果、5万8千年前にアフリカで発生し、その後全世界へ広がったと考えられている。この遺伝子型解析は人類の過去の移動を知る上でも有用だ。また、少なくとも19世紀末にはそれらしきものが胃の中で確認されている。

 たとえ感染してもほとんどは病気にはならず、自然な形で人と共存(?)してきたのだ。腸内細菌など口から進入した多くの菌は体内で大切な働きをしている。この菌も何か人に恩恵を与えていることもあるかもしれない。たとえば、ピロリ菌感染者には花粉症が少ないと言われている。しかし、胃がんの多い日本など東アジアのピロリ菌は病原性が強く、有害と考えたほうがよいかもしれない。(ピロリ菌のページ)

 逆流性食道炎とは?
 逆流性食道炎とは、胃酸や十二指腸液が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し粘膜にびらん・炎症を引きおこす疾患名。以下のような症状がある。

 胸焼け(英: heartburn)、みぞおちや上胸部痛などが起こる。食事中・後、横になったとき、前屈したときに喉や口に胃酸が逆流する。胸部違和感、不快感。喉の違和感、声のかすれ。腹部膨満感、嘔吐・多くは過度のおくび(げっぷ)を伴う。

 原因としては、「ストレス・過飲過食・飲酒」、「胃を圧迫する肥満」、「年をとり、胃酸が食道に逆流するのを防ぐ筋肉の衰え」などであったが、今回、「欧米型の食事」、「ピロリ菌保有率」の低下が新しく加わることになるのだろうか。どうも違和感がある。

 予防策としては「脂っこいものを食べ過ぎない」「寝る直前に食べない」「食後は横にならない」などがある。鳥居医師(東京都世田谷区)は「胸の奥に何ともいえない不快感があったり、食べたあとにのどの異変を感じたら、逆流性食道炎を疑い受診してほしい」と話している。

 治療の基本は胃酸の分泌を抑える薬。一部は薬局でも買えるが、病院で医師が処方するプロトンポンプ阻害薬(PPI)が効果的だ。木下芳一・島根大医学部教授は「最近、新しく出てきたプロトンポンプ阻害薬は効果に個人差が少なく、効きやすい。服用をやめると再発しやすいため、数週間は服用を続け、症状の経過を見ることが大事」と話す。(毎日新聞 2012年2月12日)

 胸焼け(heartburn)や消化不良(Indigestion)など、軽症の場合には、対症療法としてアルギン酸ナトリウム(Sodium alginate)、炭酸水素ナトリウム(Sodium Hydrogen Carbonate)、炭酸カルシウム(Calcium Carbonate)などが胃酸過多に対して制酸剤として使用する。

 難治性の逆流性食道炎には、PPIの長期投与が保険上も認められている。 食道裂孔ヘルニアを併発し、症状が著しい例では手術(噴門部形成術など)を行う場合もあるが、一般には施行されないことが多い。原因がはっきりしている場合を除いては、ストレスによって発症する例が大部分を占めるため、薬物療法に加えて根治を目的とした精神科的治療を平行して行う場合もある。治療は長期化する場合が多い。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia ヘリコバクター・ピロリ 逆流性食道炎 ピロリ菌のページ 現状と今後の展望 逆流性食道炎 www.逆食.jp

ピロリ菌の研究 (悠飛社ホット・ノンフィクション)
クリエーター情報なし
悠飛社
胸やけ、つかえ感、胸痛―逆流性食道炎 (NHKきょうの健康Qブック)
クリエーター情報なし
日本放送出版協会

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