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天皇陛下 心臓手術成功
2月12日宮内庁は、天皇陛下(78)が心臓の冠動脈バイパス手術を18日に東大病院(東京都文京区)で受けられると発表した。11日に冠動脈の流れを詳しく調べる検査を受け、血管の内部が狭くなる「狭窄(きょうさく)」の症状が昨年より進行し、狭心症と診断された。医師団と陛下が相談の上、手術に踏み切ることを決めた。
2月18日には、東京大学医学部付属病院(東京都文京区)で約4時間にわたる心臓冠動脈のバイパス手術を受けられ、手術は予定通り終了した。同病院で宮内庁の金澤一郎皇室医務主管らが記者会見し、手術の経過などを発表した。陛下は術後の出血もほとんどなく、午後5時すぎには皇后さまや長女の黒田清子さんらとも面会した。
天皇陛下 心臓手術成功
2月12日宮内庁は、天皇陛下(78)が心臓の冠動脈バイパス手術を18日に東大病院(東京都文京区)で受けられると発表した。11日に冠動脈の流れを詳しく調べる検査を受け、血管の内部が狭くなる「狭窄(きょうさく)」の症状が昨年より進行し、狭心症と診断された。医師団と陛下が相談の上、手術に踏み切ることを決めた。
2月18日には、東京大学医学部付属病院(東京都文京区)で約4時間にわたる心臓冠動脈のバイパス手術を受けられ、手術は予定通り終了した。同病院で宮内庁の金澤一郎皇室医務主管らが記者会見し、手術の経過などを発表した。陛下は術後の出血もほとんどなく、午後5時すぎには皇后さまや長女の黒田清子さんらとも面会した。
2月20日、宮内庁によると、天皇陛下は、集中治療室から病室に移られ、術後の経過は引き続き順調だという。ご飯に加えておかずも食べている他、立ち上がったり、ベッドの周りを少し歩いたりと、リハビリも始められている。今後は、軽い運動など心臓の機能を回復するための本格的なリハビリを進めていく予定で、このまま順調に回復されれば、あと約10日で退院できる見込み…。手術が無事にすんで、ホッとしたところだが、冠動脈バイパス手術とは何だろうか?
冠動脈バイパス手術とは、老化などで冠動脈の血管内部が狭くなったり、詰まったりした箇所を迂回(うかい)するように、患者本人の血管をつないでバイパスをつくり、血液がきちんと流れるようにする手術である。全身麻酔をかけ、胸部を切開して行われる。血管の狭くなった部位が複数ある場合や、血管を人工的に広げる網状の筒(ステント)が入りにくいときの措置。バイパス用の血管は患者本人の腕や胸の動脈を移植することが多い。一般的には手術後3週間から1カ月程度の入院が必要とされる。
執刀医は“神の手”持つ名医・天野篤教授
天皇陛下の心臓の冠動脈バイパス手術で執刀医を務めた天野篤順天堂大教授は、「ゴッドハンドを持つ男」といわれる。
心臓外科の名医として世界的にも知られている。中でも心臓を動かしたまま行うバイパス手術「オフポンプ術式」の第一人者で、映画やテレビでは医療演技の監修・指導をするなど多才だ。東大病院で行われた天皇陛下の手術後会見。執刀医の天野篤教授は、あえてすぐに「成功」という言葉を使わなかった。
「陛下が希望された公務と日常生活を取り戻すのが成功と言ってよい時期。その日が来ることを楽しみにしています」天野氏は、3年浪人して日大医学部に入学した“雑草派”。高校時代に父親が、心臓弁膜症の手術を受けたことをきっかけに心臓外科医を志したという。
イタリアで学んだバイパス手術の技術を、天野氏に1対1で伝授したが、須磨氏によると、「手術回数を重ねるうちにみるみる上達した。乾いたスポンジが水を吸うようだった」という。
天野氏が注目されたのは高い技術力に加え、バイパス手術のなかでも心臓を止めずに手術する「オフポンプ術式」の第一人者だったことだ。心臓を動かしたまま手術するため体への負担が少なく、陛下の手術にも採用された。
東大医学部が中心となってきた陛下の医療体制のもとで、執刀医に天野氏が異例の起用をされたのは、そうした実績があったためだ。
心臓外科医を主人公にした同20年公開の映画「チーム・バチスタの栄光」(監督・中村義洋)やテレビドラマで医療監修・指導も行った。心臓医療をPRし、1人でも多くの患者を診る機会を増やしたいと、テレビの医療番組にも積極的に出演している。(SANSPO 2012.2.19)
心臓バイパス手術:年間1万5000件
天皇陛下が今回受けることになった心臓バイパス手術は、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送る冠動脈の悪い部分を避けるように別の血管をつないで新しい道(バイパス)を作るものだ。
心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を果たしている。伸び縮みを繰り返す心臓の筋肉に血液を送るのが冠動脈だ。3本の大きな血管が心臓を取り巻くように走り、このうち右には1本、左は「左前下行枝」と「左回旋枝」の2本に分かれる。
冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、血流が低下して心筋に負担がかかり、胸が苦しくなるなどの発作が起きる(狭心症)。さらに、完全に詰まると筋肉が壊死してしまう(心筋梗塞=こうそく)。天皇陛下は、狭心症(無症候性心虚血)と診断されている。
心臓バイパス手術には、足の静脈の一部を切除して大動脈と冠動脈の詰まった先をつないだり、胃の横を通る「胃大網動脈」から冠動脈に血液を流す方法などがある。医師団によると、今回の手術では肋骨(ろっこつ)の内側にある左右の「内胸動脈」を使う予定だが、細い場合は別の血管を使う可能性もある。
バイパスを作る際には、直径1~2ミリという細い血管を、髪の毛より細い糸で縫合する。心臓を動かしながら進める方法と、心臓のポンプ機能を人工心肺に置き換え、心臓を止めて進める方法の2通りがあり、どちらを選ぶかは患者の血管の状態から判断する。陛下の手術は人工心肺を使わず、心臓を動かしながら行う予定。
心臓バイパス手術は、日本で行われる心臓手術では最も多い。日本胸部外科学会によると、年間約1万5000件行われ、成功率は98~99%。心臓外科医の須磨久善医師は「(血管が詰まった状態を)放っておけば命取りになるが、命綱をつなぎ直すという意味で手術による効果は高い」と話す。会見した永井良三・東京大病院循環器内科教授は「きちんとした技術で臨めば心配する手術ではないが、心臓なので万全の態勢を取る必要がある」と述べた。(毎日新聞 2012年2月12日)
執刀医は“神の手”持つ名医・天野篤教授
天皇陛下の心臓の冠動脈バイパス手術で執刀医を務めた天野篤順天堂大教授は、「ゴッドハンドを持つ男」といわれる。
心臓外科の名医として世界的にも知られている。中でも心臓を動かしたまま行うバイパス手術「オフポンプ術式」の第一人者で、映画やテレビでは医療演技の監修・指導をするなど多才だ。東大病院で行われた天皇陛下の手術後会見。執刀医の天野篤教授は、あえてすぐに「成功」という言葉を使わなかった。
「陛下が希望された公務と日常生活を取り戻すのが成功と言ってよい時期。その日が来ることを楽しみにしています」天野氏は、3年浪人して日大医学部に入学した“雑草派”。高校時代に父親が、心臓弁膜症の手術を受けたことをきっかけに心臓外科医を志したという。
「誰よりも向上心が強かった」。平成3年に新東京病院(千葉県松戸市)で、順天堂大の天野篤教授を指導した須磨久善医師(61)=須磨ハートクリニック院長=は振り返った。
イタリアで学んだバイパス手術の技術を、天野氏に1対1で伝授したが、須磨氏によると、「手術回数を重ねるうちにみるみる上達した。乾いたスポンジが水を吸うようだった」という。
昭和58年の日大卒業後は、バイパス手術の受け入れが多い亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院などで経験を積み、実力を買われて平成14年に順天堂大の教授に就任。同18~22年の5年間で約3000件の手術を手がけ、世界最高水準の医師が集まる米国胸部外科学会(STS)の正会員にもなった。「ゴッドハンド」と呼ばれるゆえんだ。
天野氏が注目されたのは高い技術力に加え、バイパス手術のなかでも心臓を止めずに手術する「オフポンプ術式」の第一人者だったことだ。心臓を動かしたまま手術するため体への負担が少なく、陛下の手術にも採用された。
東大医学部が中心となってきた陛下の医療体制のもとで、執刀医に天野氏が異例の起用をされたのは、そうした実績があったためだ。
東大病院の手術室で、患者は天皇陛下。普段とは大きく異なる環境だが天野氏は、20年以上の親交がある南淵明宏・大崎病院東京ハートセンター長(53)に「“アウェー”でやることには慣れている」とメールで自信をみせたという。
心臓外科医を主人公にした同20年公開の映画「チーム・バチスタの栄光」(監督・中村義洋)やテレビドラマで医療監修・指導も行った。心臓医療をPRし、1人でも多くの患者を診る機会を増やしたいと、テレビの医療番組にも積極的に出演している。(SANSPO 2012.2.19)
心臓バイパス手術:年間1万5000件
天皇陛下が今回受けることになった心臓バイパス手術は、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送る冠動脈の悪い部分を避けるように別の血管をつないで新しい道(バイパス)を作るものだ。
心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を果たしている。伸び縮みを繰り返す心臓の筋肉に血液を送るのが冠動脈だ。3本の大きな血管が心臓を取り巻くように走り、このうち右には1本、左は「左前下行枝」と「左回旋枝」の2本に分かれる。
冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、血流が低下して心筋に負担がかかり、胸が苦しくなるなどの発作が起きる(狭心症)。さらに、完全に詰まると筋肉が壊死してしまう(心筋梗塞=こうそく)。天皇陛下は、狭心症(無症候性心虚血)と診断されている。
心臓バイパス手術には、足の静脈の一部を切除して大動脈と冠動脈の詰まった先をつないだり、胃の横を通る「胃大網動脈」から冠動脈に血液を流す方法などがある。医師団によると、今回の手術では肋骨(ろっこつ)の内側にある左右の「内胸動脈」を使う予定だが、細い場合は別の血管を使う可能性もある。
バイパスを作る際には、直径1~2ミリという細い血管を、髪の毛より細い糸で縫合する。心臓を動かしながら進める方法と、心臓のポンプ機能を人工心肺に置き換え、心臓を止めて進める方法の2通りがあり、どちらを選ぶかは患者の血管の状態から判断する。陛下の手術は人工心肺を使わず、心臓を動かしながら行う予定。
心臓バイパス手術は、日本で行われる心臓手術では最も多い。日本胸部外科学会によると、年間約1万5000件行われ、成功率は98~99%。心臓外科医の須磨久善医師は「(血管が詰まった状態を)放っておけば命取りになるが、命綱をつなぎ直すという意味で手術による効果は高い」と話す。会見した永井良三・東京大病院循環器内科教授は「きちんとした技術で臨めば心配する手術ではないが、心臓なので万全の態勢を取る必要がある」と述べた。(毎日新聞 2012年2月12日)
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