広大な空にある、無限のエネルギー
東日本大震災の原子力発電事故により、エネルギー不足の状態が続いている。関西電力は2月21日、高浜原発3号機(出力87万キロワット)を定期点検のため停止した。21日午前11時現在で、国内原子力発電所の稼働状況はわずか4.6%。原発全54基(出力合計4896万キロワット)のうち2基(同226万8000キロワット)が運転しているだけである(北海道・柏崎刈羽)。
太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオエネルギーなど、再生可能エネルギーに期待が寄せられているが、原子力のような高いエネルギー効率のものはなく、多種多様なエネルギーを組み合わせて、電力量を上げなければならない。これまでにも、太陽、風、バイオ、廃熱、水流など様々な種類のエネルギーを利用し、電気エネルギーを生み出してきた。だが、まだまだ利用可能なエネルギーが残されていた。
それが、いつも上空にある強い風、ジェット気流だ。これまでの、風力発電は地上付近の風を利用するタイプばかりだった。地上付近では、風の量が一定しない問題があった。しかし、上空の高いところではいつでも一定の強い風がふいている。これに着目したのが、東京農工大学の長坂研准教授(電気電子工学専攻)。2009年から、浮かせた風車とジェット気流で発電し、地上に電力を届けるしくみを研究している。
現在の風力発電は、地上付近で不定期に吹く毎秒数メートル程度の風を利用するが、風まかせのため、安定した電力供給は望めない。発電所の立地場所も、風の強い地域に限られる。
しかし、ジェット気流を活用できれば、問題は解決する。熱い赤道から冷たい北極に流れ込む空気と、地球の自転により生まれるジェット気流は、日本列島がある北緯30度あたりで絶え間なく西から東に流れている。
ジェット気流の端にあたる標高300メートルあたりでも毎秒30メートル程度の風がある。風船型風車はこの風を活用し、将来は重さ数十キロ、発電能力100キロワットの風車を打ち上げて、空中で発電する計画だ。地上とはワイヤなどで接続し、送電する。土地がほとんどいらず、設置コストも格段に安いのが売りだ。
長坂准教授は、3月までに実物を発注し3~5年間実証実験を行い、実用化に向け課題を探る方針だ。かつて航空会社の乗務員だった長坂准教授は「地下資源の少ない日本にも、空には豊富な天然資源が吹いています」と話す。頭の中には、風船型風車がそこここに浮かんでいる未来の世界が見えている。(毎日新聞 2012.1.3)
ジェット気流で風力発電
東京農工大学の長坂研准教授は未来の風車として、ジェット気流に風車を浮かせて発電する。「風船型風車」の開発を進めている。風車と送電線ワイヤー内にヘリウムガスを入れ、風船の様に浮かせる仕組み。地上300~1000メートルでは毎秒約50メートルの風が安定して吹いており、出力変動の少ない電力を年間を通して安定して得られるという。
風船型風車は上空で浮いて、緩やかに回転する。2本のワイヤーを通じて電力を地面まで送るしくみだ。地上ではわずかなスペースしか取らず、設置場所も選ばない。設置コストも従来の風車と比べて抑えられる。出力0.5キロワット級の従来風車は設置に30万円程度かかるのに対し、風船型だと出力1キロワット級を20万円以下で製造できるという。
実現のカギを握るのは、風車の重量を極限まで軽くした上で構造体の強度や耐久性を高めることと、ジェット気流の中で安定性を保つこと。
重量については構造物にファイバーグラス(高強度のプラスチック素材)など軽量で耐久性の高い素材の使用を検討しており、今後も改善の余地は大いにあるという。 ジェット気流の中での安定性については、室内実験において検証を行った。この結果、一定の気流の中に置かれた円形構造物が回転する場合に垂直方向の力が働く「マグヌス効果」という現象が発生して、一定の揚力が得られることが確認された。
風船型風車が実現すれば、メガソーラーのように複数の風船を浮かせて出力を高めることや、個人が野外で気軽に風船をあげて電気を使うことも考えられるといい、その可能性は未知数。
飛行機の航路を避けなければならないなどの問題はあるが、空には広大な設置スペースが広がっている。長坂准教授は、国内やドイツ・デンマークなどのメーカーにアイデアを売り込みたい考えで、ジェット気流を生かした未来の風車の実現に意欲を示している。(2011/05/17 電気新聞)
低高度のジェット気流で発電する“MARS”
低高度のジェット気流を利用した発電研究は、海外でも取り組まれている。
カナダ、オンタリオのMagenn Power社が開発したMARSは、ヘリウムで浮き、定常的に吹く低高度のジェット気流をとらえて発電する浮揚式の風車だ。既存の発電用風車やディーゼル発電装置より簡単に設置でき、ローコストだが、環境負荷が低く、稼動効率が高いという特徴がある。
発電されたエネルギーは、ケーブルで地上に運ばれる。地上600~1000フィートという非常に低高度のジェット気流(世界中どこにでもある)をとらえ、通常の風車よりも継続的な発電が可能である。風向と地面に平行に設置された軸を縦に回転することで得られる、“マグヌス効果”で発生した揚力が風車を安定させ、一定の空域に固定できるので、カナダのFAA(Federal Aviation Administration)& Transport Canadaのガイドラインに抵触することもない。
MARSは既存の発電用風車と違って、沿岸やオフ・ショアなどの風速の高いロケーションに限らず、電気を使用する街の近隣などに、重機を使わずに簡単に設置することができる。また、リジッドなプロペラを高速回転させないため、鳥やコウモリに対しても安全で、騒音が低く、4マイル/時から60マイル/時以上という、たいへん広い風速域での発電が可能になっている。
ジェット気流を掴め!!高高度風力発電
そして究極の高高度風力発電を計画しているのがサンディエゴにあるスカイ・ウインドパワー社。発電機付きの飛行船型装置を上空1万mのジェット気流中に浮かべる。装置には1対のプロペラが付いていて、逆方向に回転させ、姿勢を安定させる。他にもオーストラリアの工学者であるブライアン・ロバーツ氏と共同でヘリコプターのよな発電機も研究している。これを飛行機が通過しない高度4600mの空域に浮かばせる。GPS技術で垂直・水平方向に誤差1m以内に制御し、1ヶ月に1回ほど地上に降ろし、保守点検を行う。
スカイ・ウインドパワー社によると、発電効率は最大で地上の風車の3倍以上となる90%になるとみています。電力マーケティング協会によると、発電コストは石炭火力発電の半分以下に抑えられるそうだ。あとは同じ装置を一箇所に多数浮揚させ、空中発電所とする。
高高度にふく風が持つエネルギーに関する本格的な研究によると、高度約1600〜4万フィート(約500メートル〜1万2200メートル)の上空には、世界の電気需要の100倍を十分満たせるだけの風力が存在すると推定されているという。
研究を発表したのは、アメリカ政府の援助を受けたスタンフォード大学らの研究者で、すでにこの高高度の風に目をつけて開発されているカイト型といわれる風力発電システムも論文の中で紹介されている。
参考HP ソフトエネルギー 高高度、ジェットストリームを風力発電に Palenqueros 低高度ジェット気流で発電する空飛ぶ風車
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