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 厳冬の原因は「ラニーニャ現象」  
 ようやく、厳しい寒さも峠を越えた感じがする。今冬の寒さの原因は何だったのだろうか?

 気象庁の異常気象分析検討会(会長、木本昌秀東大大気海洋研究所教授)は2月27日、今冬の厳しい寒さと大雪の原因について見解をまとめた。(1)ラニーニャ現象などで偏西風が蛇行し、寒気が南下しやすかった(2)日本の西で冷たいシベリア高気圧が強まって寒気をもたらし、西高東低の冬型の気圧配置も強まった…などを原因に挙げた。

 見解によると、南米ペルー沖の海面水温が下がるラニーニャ現象により、インド洋東部~インドネシア近海では逆に海水温が上がって大気の対流活動が活発化。偏西風を蛇行させたという。日本付近では南に蛇行したため、大陸から寒気が流入したとみられる。

 シベリア高気圧が強まったのはユーラシア大陸で寒帯前線ジェット気流が北に大きく蛇行したためと考えられるほか、地球温暖化の影響でロシア北西部・バレンツ海の海氷が少なかったことも一因と考えられるという。(2012.2.28 Sankei Biz)

ThermoHaline Circulation

 ラニーニャ現象とは?

 ラニーニャ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて低くなり、その状態が1年程度続く現象。逆に、同じ海域で海面水温が平年より高い状態が続く現象はエルニーニョ現象と呼ばれている。

 太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられている。西部のインドネシア近海では海面下数百メートルまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上っている。このため、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなる。海面水温の高い太平洋西部では、海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発生する。

 ラニーニャ現象が発生している時には、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなる。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなっている。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生する。

 エルニーニョ現象が発生している時には、逆に東風が平常時よりも弱くなり、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まる。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなっる。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移る。

 ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられている。 (気象庁HP) 

 壮大なスケールの海流循環
 日本から離れた場所で起きる、海水温の変化が今年の厳冬に関係するとは、驚きだが、海水の温度や循環は、気象に大きく関係する。

 高緯度地域を暖めている海流の代表に、北大西洋を南から北に流れるメキシコ湾流がある。熱帯から北緯70度にまで達する流れは、高緯度に位置する北米やヨーロッパを温暖な気候に保っている。

 たとえば、日本の札幌(北緯43度)の年平均気温は9.0℃だが、イギリスのロンドンはずっと北(北緯51度)に位置するにもかかわらず9.7℃もある。

 このメキシコ湾流は北上しながら次第に温度を下げ、最後はグリーンランドなどから流れてきた海氷によって冷やされて重くなり、海底深く沈み込む。また、凍結して海氷が作られる場合もあり、その際には塩分が吐き出されるので海水はさらに重くなる。

 こうして沈み込んだ海水は大西洋の深さ3千~4千メートルをゆっくりと(秒速10㎝以下)南へ移動する深層海流となる。この流れはインド洋と南太平洋に別れて北上する。その後はしだいに暖められて上昇し、インド洋北部と北太平洋で表層水になる。やがて向きを変えて南下し、アフリカの南端を回って再び大西洋に戻る。

 この海洋大循環は一巡りするのに約2千年かかる壮大な流れで、熱帯地方の熱を高緯度地域に運び、地球の気候を穏やかなものにしているのである。

 メキシコ湾流が停滞する可能性
 
この海洋大循環が近年弱まりつつあるという。すでにメキシコ湾流の沈み込みが30%程度弱まっており、今後さらに停滞するという予測がある。

 その原因は温暖化によるグリーンランドの氷河の融解である。それによって海表面に淡水が大量に流れ込み、塩分濃度が低下して軽くなるため、海水が沈み込みにくくなる。

 もしこれが進行すると、海洋大循環が停滞してメキシコ湾流が今ほど北にまで流れなくなり、特にヨーロッパが寒冷化するという予測がある。しかし、こんなことが本当に起こるのだろうか?…実は、今から約1万3千年前に実際に起こっていた。

 それは、約10万年続いた最後の氷河期が終わりつつあった約1万3千年前のことである。当時、大西洋では今と同じようにメキシコ湾流が高緯度地域にまで流れ込み、ヨーロッパに温暖な気候をもたらした。

 ところがその後、わずか数十年の間にヨーロッパは急速に寒冷化した。それは、北米大陸で起こったある出来事がきっかけであった。

 当時、現在の五大湖の辺りには氷河が溶けて出来た日本列島ほどもある巨大な湖があり、まだ残っていた氷河によってせき止められていた。それが崩壊して膨大な量の淡水が一挙に北大西洋に流れ込み、海氷面の塩分が薄まったのである。
 
 こうして海水の沈み込みが止まり、メキシコ湾流も停滞した。その結果、ヨーロッパは約千年にもわたって氷河期に逆戻りした。地球が温暖化し、グリーンランドの氷河が溶けつつある現在の状況は1万3千年前と似ている。 (中村陽一環境講座より)

参考HP 気象庁 エルニーニョ/ラニーニャ 国立環境研究所 大気と水の循環 中村陽一の環境講座 温暖化が寒冷化をまねく!?

エルニーニョ・ラニーニャ現象-地球環境と人間社会への影響-
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