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 2011年過去最悪、米国の竜巻
 竜巻は世界各地でみられる自然現象で、特に米国、インド、英国、オーストラリアで多く発生する。これらの国では、英国を除き、大陸性気候の影響により、空気中の上層と下層の間で気温の較差が大きくなりやすく、このことが竜巻の発生する基本条件の一つとなっている。なお、英国で竜巻が多いのは、特殊な風の動きのためである。

 日本での竜巻の年間発生数は20個程度でたいした数ではないが、米国海洋気象庁(NOAA)によれば、米国では、年間約1000件の竜巻が記録されている。昨年、2011年は約1900件も記録した。これに加え小型でかなり局地的な竜巻が数千件発生していると考えられている。

 2011年、6月2日の時点で、米国の竜巻による死者数が、523人に上り、過去75年で最悪となった。4月27日、米国5州にまたがって多数の竜巻が発生し、314人が死亡した。 4月27日は、1950年の統計開始以来、最多の犠牲者を出した日となった。5月22日には、ミズーリ(Missouri)州ジョプリン(Joplin)を竜巻が直撃し、138人が死亡した。この竜巻は史上最悪級の風速85m/秒を記録、統計開始以来、最も多くの死者を出した単一の竜巻となった。

Dust-devil

 このような気象現象は地球独自のものなのだろうか? 火星は大気も薄く、地上からの観察で地表がよく見える。そんなに激しい気象現象は起きないと思われがちだが、雲も発生し大砂塵や竜巻なども起こる。意外に活発な気象現象が観測されている。

 火星の竜巻“ダストデビル”
 今回、火星地表面にヘビのような影を落とすダストデビル(塵旋風)を、探査機マーズ・リコナイサンス・オービタ(MRO)の高解像度カメラHiRISEが撮影した。火星のダストデビルは、夏季の地表温度が上がり、周辺の大気よりも高温になると発生する。高度8000~1万メートルまで成長する場合もあるという。

 地表付近の大気が暖められて上昇すると、代わって温度の低い大気が流れ込み、垂直方向に循環が始まる。この中を突風が吹き抜けると、循環していた大気が水平方向に渦を巻いて立ち上がり、ダストデビルが生まれる。今回の大きさは影の長さから、高度800メートル以上と推測されている。

 場所によっては、多数のダストデビルが発生し跡を地表に残すことがある。NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタが約250キロ上空から撮影した写真では、明るく見える砂丘群の上を竜巻状のダストデビルが横切り、その部分だけ砂の下にある比較的色の濃い地面があらわになっている。(National Geographic news)

 火星の気圧
 火星の地表面気圧は約6hPaである(地球の平均気圧は1013hPa)。大気の主な成分は二酸化炭素だが、季節による変動が大きい。

火星の両極には二酸化炭素の氷(ドライアイス)とその下の水の氷でできた極冠がある。この極冠のドライアイスが季節によって昇華したり、凍ったりをくり返して火星の大気に二酸化炭素を放出したり、吸収したりするため、火星の大気の量は季節によって大きく変動する。

 火星の大気量の変動は、気圧にして30%にも及ぶ。地球では、どんなに強い台風の目でも気圧の低下は10%にも及ばない。このように大きな大気量の季節変動は、金星や地球のように大気のある他の地球型惑星では見られない現象だ。

 火星は夏至のときよりも冬至のときに大きく気圧が上がっている。これは、火星の公転軌道が楕円であることがひとつの原因。もし、火星の公転軌道が円ならば、夏至の時と冬至の時には同じくらいのドライアイスが昇華して、火星の大気を増やすはずだが、火星の公転軌道は楕円であり、冬至の頃に近日点を迎える。そのため、北極冠の夏至のころよりも、南極冠の夏至(つまり冬至)のころのほうが、極冠が受ける太陽の熱が大きくなり、より多くのドライアイスが昇華し、二酸化炭素が大気にもどる。火星の南極冠は、夏には大気を吐き出し、冬には吸収する、風神の風袋のような役割を果たしている。

 火星の気温
 地球の160分の1の気圧しかなく、熱容量の大きい海もない火星の気温は「熱しやすく冷めやすい」のが特徴。そのため地表面の温度差は非常に大きく、夜昼間の温度差は赤道上で100℃、極・赤道間の温度差は120℃もある。

 地球と同じで場所や季節、時間(昼と夜)によって変化します。ユートピア平原に着陸したバイキング1号では最高気温-30℃ 最低気温-81℃。赤道付近では最高で0℃になるところもあるが、寒い世界のようだ。

 地球で記録された最低気温は1983年南極のボストーク基地で-89.2℃。昭和基地では最低月平均気温とし-45.3℃(1982年)、また旭川でも竏窒-41.0℃(1902年)が記録されている。火星の真夏の気温は、地球でも全くなじみがないという温度ではないが、年平均気温で考えると南極の昭和基地でも-10.3℃程度なので、地球は火星に比べて非常に温暖な惑星と言うことができる。地球では、海と大気がふとんのように、季節の温度変化や夜間の冷却をおさえている。

 火星の水蒸気
 火星の大気中には、ごくわずかの水蒸気も含まれている。水蒸気圧は地球の南極上空の500分の1程度しかないが、このごくわずかの水蒸気によって、火星でも雲や、霜が観測されている。火星の雲は明け方や夕方に現れ、昼間は消えてしまう。

 火星の大気の主成分である二酸化炭素と、わずかに存在する水蒸気は、両方とも温室効果気体。現在でも火星大気中の二酸化炭素の量は、地球大気中の二酸化炭素の量よりも多くなっている。もしも、火星大気中にさらに水蒸気が存在すれば、温室効果の強化には有利になる。

 火星の気候は、二酸化炭素と水蒸気が大気中に存在して、温室効果が有効に働く温暖な気候系と、二酸化炭素と水蒸気が永久凍土のかたちで地中に存在して、温室効果が有効に働かない寒冷な気候系の両方が可能。火星の表面には、液体の水が流れた川の跡のようなものがたくさん見られる。

 もしそれが本当に川の跡なら、昔の火星は川があるほど温暖な気候だったことになる。火星は、過去の温暖な気候系から、現在の寒冷な気候系へと移行したのかもしれない。火星が本当に過去において温暖で、表面に液体の水が存在したのかどうかを明らかにするためには、地中の二酸化炭素と水の量の観測が必要である。液体の水の存在は、そこに生命が発生していた可能性を示しているため、今、大きな注目を浴びている。(火星の大気と気候)

 ダスト
 火星の大気中には常に、大きさが1000分の数ミリの大きさの粘土や酸化鉄の微粒子(ダスト)がある程度以上存在している。地球では大気による散乱で空が青く見えるが、火星ではダストによる散乱で空は橙色から暗赤色に見える。(もし将来、火星に人間が住むようになったら、火星人が思っている「空色」は地球人にとっての「ピンク色」を指す言葉になるかもしれない。)ダストは太陽光を吸収してあたたまり、その熱で大気をあたためている。このダストによる加熱が、火星大気を鉛直方向に安定な大気にしている。

安定な大気とは、対流が起こりにくい大気のこと。地球の場合、地表付近に暖かい空気があって、上空に冷たい空気がやってくると、暖かい空気は上に昇ろうとし、冷たい空気は下に降りようとするために対流が起こる。対流によって空気が上昇するところに雲が発生する。

 火星の大気が安定だということは、雲ができにくい大気だということになる。コンピュータによる数値計算では、火星の大気では対流の起こる範囲は狭く、時間も限定されているという結果がでている。おそらく、火星で朝夕に観測される雲は、狭い範囲で限定された時間に起こった対流の結果なのだろう。そして、ダストの存在は、火星に惑星規模の大砂嵐という、他の惑星では見られない現象を引き起こしている。(火星の大気と気候)

 火星の砂嵐
 火星の砂嵐は、これを無視しては火星の気象を語れない程重要な現象だ。局地的な砂嵐は年に100回程度起こっているが、時として惑星規模の大砂嵐が発生することがある。

大砂嵐は起こっても年2回、全く起こらない年もある。大砂嵐は発生の時期と場所が決まっている。南半球の春から夏にかけて、以下の場所で発生した砂嵐が惑星規模の大砂嵐にまで発達する。

・ヘラスの北西端とノアキスの間の傾斜面
・クラルス水路の西、南、あるいは南東に面した傾斜面
・大シルチスの東の低地イシディス平原

 大砂嵐が発生する場所はいずれも東や南東向きの傾斜地で、大砂嵐の発生に関して地形の影響が大きいことを示唆している。この大砂嵐発生のメカニズムはまだはっきりとは解っていないが、現在一番有力な考えでは、以下のように説明している。

 まず南半球の春から夏にかけて大気中のダストの量が増大することが観測されている。南半球ではこの時期、南北の温度差が増大するため、その温度差を解消するために大気の流れが激しくなり、そこで極地嵐が頻発するようになる。この極地嵐によって、大気中のダストの量が増加する。大気中に大量に浮遊するダストは太陽光を吸収して大気を暖める。ダストによる大気の加熱は、惑星の大気の循環を強化する方向へ効いていく。

 ここに地形による効果が重なって、両者が強めあうような場所で砂嵐が発生する。砂嵐が発生した場所ではさらに大量のダストが大気中に巻き上げられることになり、さらに大気を加熱し、惑星大気の循環を強化する。このようにして、ダストは赤道地方や北半球にまで運ばれて、惑星規模の大砂嵐にまで発達する。(火星の大気と気候)

参考HP AFPBBnews 2011年米竜巻被害、過去75年で最悪 National Geographic news ヘビのような火星のダストデビル 平塚市博物館 火星の大気と気候

2035年 火星地球化計画     (角川ソフィア文庫)
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惑星気象学入門――金星に吹く風の謎 (岩波科学ライブラリー)
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