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ダイオウイカ、謎の生態
ダイオウイカ(Architeuthis)は、巨大なイカの一種(1属)。世界各地に存在する巨大な頭足類。深海に暮らす体長18メートルの巨大生物である。SF小説や映画に繰り返し取り上げられてきた謎の生物だ。
直径30センチメートルにもなる巨大な目を持ち、ダイオウホウズキイカとともに、生物界で最大とされている。これによりごく僅かの光をも捉え、深海の暗闇においても視力を発揮できる。
2012年3月17日、NHKサイエンスZEROで放送の「深海の謎の巨大イカを追え!」では、ダイオウイカの新しくわかった生態について伝えていた。
北アメリカやヨーロッパ付近の大西洋、ハワイ島付近、日本では小笠原諸島などの広い範囲で発見例があるものの、深海に棲息するためその生態は謎に包まれている。
2006年(平成18年)12月、世界で初めて国立科学博物館の窪寺恒己(動物第三研究室長)らが、ダイオウイカの映像を撮影することに成功した。生態については、とても強い力を持ち、深海で活発に動き回っているということは判明した。生きた個体の体色は赤褐色であることが確認されているが、標本や死んで打ち上げられた個体は、表皮が剥がれ落ち、白く変色する。
天敵はマッコウクジラであると言われる。マッコウクジラの胃の内容物から本種が発見されることも多く、皮膚に吸盤の痕跡が残っていたりもする。ダイオウイカの吸盤には鋸状の硬い歯が円形をなして備えられており、獲物を捕獲する際にはこれを相手の体に食い込ませることで強く絡みつくと考えられている。しかし、マッコウクジラはこの吸盤でしがみつかれて体表を傷つけられても、構わずに丸呑みにしてしまう。弱った個体がサメなどの他の肉食動物の餌にされたり、幼体時の浮遊期にも、稚イカが多くの生物の餌になっていると思われる。
一方、ダイオウイカが捕食する獲物は、オレンジフィッシャーやホキといった魚や、アカイカ、深海棲のイカなどであることが、胃の内容物などから明らかにされている。ダイオウイカの卵はクリーム色もしくは白色をしており、およそ1mm程度である。
ダイオウイカの撮影に挑む
番組ではNHKの取材班と国立科学博物館の窪寺恒己(動物第三研究室長)らが、このダイオウイカを動画にとらえようというプロジェクトが進められている。舞台となるのは、小笠原諸島。撮影チームは、カメラに音響センサーを仕込むなど様々な工夫をこらして、生態の撮影に挑みた。果たしてダイオウイカの姿をとらえることは出来るのか?
カメラには、アカイカ、ヒロビレイカ、カグラザメ、オンデンザメ、バラムツなど、深海の生物の珍しい生態が撮影されていた。しかし、残念ながらダイオウイカの姿は映っていなかった。
ヒロビレイカは腕の吸盤の部分に鉤爪を持っている。そして、発光器を腕の先に持っていて、獲物に光を当てて場所を確認すると、光を消し、思いがけない方向から獲物を襲う姿が捉えられた。
しかし、なぜダイオウイカを撮影できないのだろう?実はダイオウイカの目は非常によい。動画を撮るときにはライトを当てねばならず。深海の中では目のいいダイオウイカを用心させてしまったのだ。
ダイオウイカの眼を分析
窪寺さん達は、ダイオウイカの性質を調べるために、ダイオウイカの標本から目を取り、調べることにした。取り出した目の大きさは直径20cm。生物の中では最大で一番目がよいと言われている。
目を調べてみるとびっくり、目の網膜には視細胞がぎっしり!同様に目がよいといわれている、スルメイカの目の大きさの1000倍もあり、解像度は36倍もある。この感度のよい目で、1000mの深さにわずかに届く光を認識することができる。また視細胞の量から、下から上を見上げ、うっすらと見える、獲物のシルエットを見つけて捕らえることもわかってきた。
どうやって光に敏感なダイオウイカの撮影が可能だろうか?窪寺さん達は、スルメイカに光を当てて反応を観察した。白い光を当てると反応して逃げた。ところが、赤い光だと反応せず逃げなかった。だが、赤い光は水中で、遠くまで届きにくく、ふつうのカメラでは撮影が難しい。
そこで注目したのが、国際宇宙ステーションで使用された超高感度ハイビジョンカメラ。このカメラでは微少な赤い光も感度よく捉えることができる。この夏、この超高感度カメラを潜水艇に付けて、ダイオウイカの棲む深海に近づいて、撮影に挑む。成果が楽しみだ。
ダイオウホウズキイカ
巨大イカとして知られるダイオウホウズキイカやダイオウイカの目玉は、バスケットボールほどの大きさがある。他の大型動物の2~3倍というサイズだが、視界はあまり良くないことが判明した。
2007年、南極のロス海で操業していた漁師がダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)を釣り上げた。体長は8メートル、無傷で捕獲されたイカとしては最大である。その後すぐに冷凍され、ニュージーランド国立博物館で研究者チームが解凍した。
体重495キロのイカを解剖したところ、直径27センチの巨大な目玉が現れ、研究者たちは驚きの声を上げた。同じく巨大イカとして知られるダイオウイカに匹敵するサイズだった。
研究責任者でスウェーデン、ルンド大学の生物学者ダン・エリック・ニルソン氏は、「圧倒的に大きく、他の動物とは比べものにならない」と語る。
ニルソン氏は、ダイオウホウズキイカとダイオウイカ(ダイオウイカの方がやや小型)の目玉が桁外れの大きさに発達した理由や用途について、「ダイオウホウズキイカの生息場所である水深1000メートル付近は暗闇に覆われており、より多くの光を集めるために巨大化したのではないか」という仮説を立てた。
しかし、研究チームが数学的モデルで解析したところ、獲物など水中の物体を識別する能力は、水の光学的性質によって限定されることがわかった。眼が巨大でも視覚的に有利にはならないようだ。
データによると、オレンジ以上の大きさに目玉が発達しても、深海での視界には役立たないという。この結論は、深海に生息する他の動物の眼からも裏付けられるだろう。
ダイオウイカは極度の遠視?
「このイカと同程度のサイズの生物もいるが、目玉はそれほど大きくない。“深海の暗闇でよく見えるため”という推論は的外れだった」とニルソン氏は述べる。
「だが、意味もなく大きくなるとは考えられない。ここまで発達させて維持するのは、身体にとっても負担だろう。何か理由があるはずだ」と同氏は諦めなかった。
研究チームのモデルでさらに分析すると、ダイオウホウズキイカやダイオウイカの特大サイズの瞳孔と網膜は、近くを見る能力には乏しい代わりに、極度の遠視と判明した。イカを捕食するマッコウクジラなどの巨大な物体を遠くから識別できるように進化していたのだ。
ただし、目玉や対象の物体がどれほど大きくても、やはり暗闇での認識は容易ではない。集光能力に優れたイカは、フットボール競技場の長さほど離れたかすかな光を検出できることもわかった。
マッコウクジラが移動するとき、微小な発光生物が押しのけられて、クジラの後ろにかすかな光跡ができる。イカにとっては天然の警告サインだ。ニルソン氏は現在、同じモデルを使って、深海の他の動物に関しても眼の働きや生態を解明しようと考えている。
「現場に行くのは難しいので、モデリングは一つの研究手段になる。このモデルを使えば、他の動物の視覚も理解できるだろう。観察がほとんど不可能な領域の生態系を研究する手法として、これから役立ちそうだ」。
今回の研究は「Current Biology」誌に3月15日付けで発表された。(Brian Handwerk for National Geographic News March 16, 2019)
参考HP サイエンスZERO 深海に謎の巨大イカを追え! National Geographic news 巨大イカ、目玉は極度の遠視
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