科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日5分読むだけで、みるみる科学がわかる!
春一番は吹かなかったが…
昨夜から南よりの風が強まり、東北から近畿まで、今年一番暖かな朝となった。東京は最低気温が16度にも達した。風速は台風並で、高知県の室戸岬では、最大瞬間風速34.2m/s、東京都心も21.6m/sを観測した。 (2012年3月31日の午前10時現在)低気圧が発達しながら北日本を通過し、前線が本州を南下した。
「春一番」は、立春から春分の間に吹く暖かい南風(8m/秒以上)。なので、今年はカウントされないが、今日が「春一番」的な強い南寄りの風だった。「春一番」が、記録されないのは、2000年以来12年ぶり。今年は九州で観測されたが、関東、近畿、東海地方では観測されなかった。
この強い風もエネルギーであるが、風力発電で充電したという話は未だに聞いたことがない。もったいない話だ。台風のエネルギーはどのくらいあるのだろう?
台風とは、熱帯地方の海上で発生した熱帯低気圧が発達して、中心付近の最大風速が17.2m/秒以上になったもの。平均的な台風の持つエネルギーは1日に1~10 EJ(エクサジュール:エクサは10の18乗)といわれている。これは、世界最大級のオイルタンカー約10~100隻が積載する石油を燃やしたときのエネルギーに相当する。大型台風の発生から消滅までのエネルギーを計算すると、180 EJ(エクサジュール:エクサは10の18乗)にも達する。
広島に投下された原爆が放出したエネルギーは、55 TJ(テラジュール:テラは10の12乗)、東日本大震災のエネルギー量は2.00 EJ(エクサジュール:エクサは10の18乗)であるから、台風のエネルギーは、原爆や地震をもしのぐ大きさといえる。自然エネルギーがいかに大きいものか思い知らされる。これほどのエネルギーがありながら、人類は利用できないのだから、もったいない。
ちなみに1gの質量の物質が、すべてエネルギーに変わったとすれば、アインシュタインの E=mc2 から、約100 TJ (テラジュール:テラは10の14乗)になる。これらの巨大なエネルギーの利用は、現在の科学技術では難しいかもしれない。しかし、エネルギーの大きさを知っておくことは、将来のエネルギー技術革命に役立つことだろう。
海洋波、地球の巨大エネルギー
アラスカの太平洋側沿岸部の沖合では、大陸棚付近で非常に大きな波が発生する。米電力中央研究所(EPRI)の調査によると、この波を波力発電に応用した場合の年間総発電量は1360TWh(テラワット時:テラは10の12乗)。日本の年間総発電量の1.4倍、アメリカの電力需要量の約30%に相当する。
アメリカの他の沿岸部の波力エネルギーをすべて合わせても、アラスカの太平洋側には及ばない。西はアリューシャン列島から南部のプリンス・オブ・ウェールズ島へと伸びるアメリカ最長の海岸線が一因とみられる。アラスカ沖の吹送距離(フェッチ:波の発生源となる一定の風が海面上を吹き抜ける距離)の長さも、大波力の要因の一つだ。広大な開放水域を吹き抜ける風が、この海岸線に打ちつける強い波を発生させているのである。
EPRIの調査では、シミュレーションで得た結果を検証するため、計測ブイで波力エネルギーを測定。そのエネルギーは、アラスカ沖平均で海岸線1メートルあたり52キロワットに達した。東アメリカの大西洋岸南部の沖合で計測された最大波力の7倍だという。
しかし、波のエネルギーをフル活用するのは簡単ではない。独立系非営利団体として電気事業に関する調査を行っているEPRIは、最新の科学技術を用いた場合に、波力エネルギーをどの程度まで回収して発電に生かせるかを分析した。商用の波力発電技術はそれほど普及していないが、電力に変換する装置のプロトタイプはいくつか実用化されている。波の上下運動のエネルギーで水圧ポンプを作動させるフロート(ブイ)システムなど、その仕組みは多彩だ。これらの装置は、波力の強弱に合わせて設置する場所ごとに適切にカスタマイズする必要がある。例えばジョージア州沿岸部で有効でも、アラスカ沖では最大限の効果を発揮できない。強い波に合わせたアラスカ用の装置を用意しなければならないのである。
EPRIは現代の技術の限界を考慮したうえで、電力として回収可能な波力エネルギーは理論上、アラスカ沖の領海外大陸棚で総エネルギーの29%、領海内大陸棚で46%に留まるとの結論を出した。一方、大西洋岸南部の場合は領海外大陸棚で78%、領海内大陸棚で67%という。効率はアラスカが劣るが、波力エネルギー自体が膨大なので、総量は大西洋岸南部の15倍になるとみられている。
「ただし、実際に回収できる量は限られている」と、EPRIで水力発電プログラムの責任者を務めるポール・ジェイコブソン氏は指摘する。海上交通路、出漁区域、環境保全区域(発電用の装置や係留具によって海洋生物が危険にさらされる可能性がある区域)など、さまざまな制限により、多くの海域で発電プロジェクトの実現性は低い。
また、水中の送電線で電力を人々に送り届けるという方法が、本当に現実的なのかという点も重要だ。
波力発電を本格的に検討する際には、「最大の効果が期待できるアラスカ一帯は、国内で最も人口密度が低い」という皮肉な現実も立ちはだかる。(National Geographic News March 14, 2012)
火山噴火、地球の巨大エネルギー
火山が放出する地球内部の熱が、新たなエネルギー源として世界的に注目されている。
アイスランドの地熱エネルギーは暖房や給湯の熱源となり、国全体が消費する電力の30%以上をカバーしている。しかし、火山噴火のエネルギーを安全に利用する術はまだない。「非常に残念だ。エイヤフィヤットラヨークトルで2010年3月に発生した1回目の噴火では、直後に放出されたエネルギーが1GWh(ギガワット時:ギガは10の9乗)を超え、ピーク時は6GWh(ギガワット時)に達していた」とアメリカ、カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)の火山学者アシュリー・デービーズ氏は言う。
1GWh(ギガワット時)は、ニュージャージー州ジャージーシティにあるハドソン発電所(Hudson Generating Station)のような大型発電所の発電量に相当する。ハドソン川を隔ててマンハッタンの対岸に設置されたこの発電所では、石炭、天然ガス、石油を燃やして約75万世帯分の電力を供給している。6GWh(ギガワット時)ともなると、匹敵するのはワシントン州のグランド・クーリー・ダムにある巨大水力発電所だけだ。
だが、火山のエネルギーはこれだけではない。噴火に伴う地震や噴出時の力学的エネルギー、溶岩の熱量も存在する。NASAは衛星画像から火山の放熱を測定しているが、太陽系の惑星でも同じ手法で解析している。「宇宙の火山と比べると、地球の火山も小さく見える」とデービーズ氏は語る。木星の衛星イオで2001年に起きた噴火の熱量は78TWh(テラワット時)だった。全米の発電所による総発電能力の78倍に相当する。
1時間の噴火で石油4600万バレル分のエネルギーを放出しており、全世界が1日に消費するエネルギー量の約半分になる。
エイヤフィヤットラヨークトルは2010年4月にも噴火、その規模は3月を上回った。氷冠に覆われていた噴火口はNASAの衛星でもとらえきれなかったが、それでも60メガワットのエネルギーが測定された。1時間で換算するとガソリン6238リットル分となり、年間走行距離1万6000キロの約4年分に相当する。
当時は蒸気と灰の雲が形成され、ヨーロッパの航空網は麻痺してしまった。「東も西も火山灰が覆い尽くしていた」とデービーズ氏は振り返る。(National Geographic News March 14, 2012)
参考HP Wikipedia エネルギーの比較 National Geographic news 海洋波、地球の巨大エネルギー 火山噴火、地球の巨大エネルギー
![]() | 自然エネルギーの可能性と限界?風力・太陽光発電の実力と現実解? |
クリエーター情報なし | |
オーム社 |
![]() | 自然エネルギーが日本経済復活の起爆剤になる |
クリエーター情報なし | |
洋泉社 |
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。
��潟�<�潟��