脱法ハーブとは何か?
2012年4月7日TBS報道特集「脱法ハーブ」を見た。ハーブはにおいのよい香草である。何か問題があるのだろうか?番組を見ていくうちに、これは「脱法ドラッグ」のことだとわかった。ハーブをこまかく砕いて、違法すれすれのドラッグと混ぜたものである。ハーブ自体は有益なもので私は好きだ。見終わった後、そのよいイメージをぶち壊されたようで不快になった。
売る側は「合法」と呼び、取り締まる側は「脱法」と呼ぶ。ハーブとは言いながら、大麻の成分に似た化学物質が含まれているのだ。「合法」あるいは「ハーブ」という言葉に誘われ、気軽に手を出す若者も多いと言われるが、実態は幻覚や深刻な健康被害を引き起こす危険なものだ。この「脱法ハーブ」は今、日本のみならず世界に広がりを見せている。その実態はどうなのだろう?
脱法ハーブは、見た目は乾燥した植物の粉末だが、火を付けてタバコのように煙を吸うと中枢神経に影響して興奮作用があるほか、幻覚や幻聴の症状が出ることもあり、「簡単に気持ちよくなれる」として、ここ数年で若者を中心に急速に広まった。
しかし、実際には大麻や合成麻薬などとほぼ同じ成分の化学物質が混ぜられているため、使った若者が意識障害を起こすなど、乱用による健康被害が相次いでいる。2012年1月には、東京・渋谷で高校生ら3人がハーブを吸引したあとに吐き気などを訴えて病院に搬送されたほか、中には吸った人が死亡したケースも報告されているという。
なぜ、脱法ハーブがこれほどまん延しているのか?インターネットなどの広告では、「今までにない刺激」「安全で問題ない」といった説明がされているものも多くあり、警察によると、体に悪い影響を及ぼすことをよく認識せずに、いわばファッション感覚や興味本位で購入する人も多くいるということだ。
価格も3グラムで3000円から4000円ほどのため、未成年者などにも広まっている。しかし、最初は軽い気持ちで始めたものの、次第に何度も使うようになる人も少なくないという。脱法ハーブを吸引したことのある30代の男性は「初めは友人に勧められて吸ってみたが、3時間ほど興奮状態が続いて気持ちよくなり自分でも買うようになった。使ったあとに吐き気や頭痛がすることもあり、怖いという気持ちもある」と話している。
脱法ハーブ健康被害で対策強化へ
こうした脱法ハーブは、販売については実態が不透明で、事実上、野放しになっている。店頭やインターネットで販売する業者は数百に上るとみられているが、その詳しい数すら分かっていない。
国内や海外の卸業者から商品を購入すれば販売することができ、新規の業者も増えているという。それでは店での販売自体を取り締まることはできないのか?規制の対象となっている薬物が成分に含まれている場合には、他人に売ったり譲り渡したりすると薬事法に違反する。
このため厚生労働省は、規制の対象となる薬物の種類を増やして対策を強化してきていますが、規制の網がまだ掛かっていない少し成分を変えた商品が次々と出回っているため追いつかないのだ。
また、規制対象の薬物が含まれていなくても、脱法ハーブを吸引する目的で販売することは、法律で禁止されている。しかし、ほとんどの場合、店では「観賞用」「お香」などという名目で販売されている。中には、「吸引するかどうかは個人の責任で店としては関知しない」と話す業者もあり、販売しているというだけで行政や警察がただちに踏み込めない事情がある。
また、例え商品に規制された薬物が含まれていた場合でも、店側は「成分を知らなかった」「薬物が入っていることは分からなかった」と説明するケースがほとんどで、販売業者を取り締まるのは難しいのが現状。このため警察庁は、脱法ハーブを扱う業者への対策を強化するよう全国の警察に指示している。具体的には、自治体などと連携して業者の数や所在地などの実態把握を進める。
そして、販売する商品に少なくとも規制の対象の成分が含まれていないかを確認するよう指導し、含まれると分かっていながら販売していた場合は、積極的に取り締まるとしている。これまでは明確な法律違反がないと取り締まってこなかったが、事前にもっと踏み込んだ対策を取って、脱法ハーブを一掃したい考えだ。
脱法ハーブを巡っては、厚生労働省も、規制の対象の薬物と成分の構造が似ていれば、新たに一括して取り締まりの対象に指定することを検討している。(NHK news web 4月5日)
マリファナよりもさらにどぎつい効力
「マリファナは過去何千年もの間医療や娯楽のために用いられてきた。ずいぶん乱用もされてきたが、それで深刻な病気になった人はいない。」と述べるのはニューヨーク大学ベルビュー病院で毒物学上席研究員を務めるジェフ・ラポイント博士。博士は「若者たちはこの合法ハーブはマリファナなどよりも、もっと危険なものであることを知るべきです。」と言う。
有名な銘柄の名前から「K2」や「Spice」などとも呼ばれるこれらの合法ハーブの正体はマリファナと同じような恍惚感を与える化学物質で、それらの物質を細かく砕いたハーブに吹きつけたもの。ですが、これら合法ハーブ吸引者の間では心臓発作、動悸、発熱、脱水症状、そして精神病的な発作が増加している。
合法ハーブは2004年から「お香」や「ポプリ」の名目で、ハーブとスパイスのミックスとして販売されてきた。価格は3グラム入りでおよそ$30~40(約2500~3200円)と、マリファナと同じくらいの値段。だが、合法であること、薬物テストで反応が出ないことから支持を得て広まった。
製作者は容易に合法ハーブ内に含まれる化学物質の種類や混合の比率を変えていろいろなヴァージョンを作り出すことができ、しかも簡単に製造できる。
アメリカ合衆国の麻薬取締局は合法ハーブに含まれていた5種類の化学物質(JWH-018, JWH-073, CP-47,497, JWH-200, cannabicyclohexanol)を違法とした。しかし化学式を少しずつ変えた類似物質が次々と開発され、合法ハーブに含まれる化学物質の構成はこの数年でさらに多様化し、現在も増加している。
国立薬物乱用研究所によると、15000のハイスクールの最上級生への調査の結果、11%が2011年に合法ハーブを使用したことがあるとのこと。全米中毒事故管理センター協会は2011年に、2010年の2倍近くにのぼる7000件もの合法ハーブに関する通報を受けた。
元々人間が使用するためのものではない
近年発表された論文では、合法ハーブの使用は精神医学的な既往症のない人々においても精神疾患のリスクを増やす可能性があるとのこと。この論文の著者であり、ボストン大学医学大学院の精神科医であるアシュウィン・レディー博士は「合法ハーブは脳に対する働きかけにおいて通常のマリファナよりも強い効力を持っています。これら合法ハーブの使用によってパラノイアや幻聴、無秩序行動やパニック障害に陥る可能性もあります。こうした精神的な症状は人によって数日から数ヶ月続くこともあります。」と語っている。
現在出回っている合法ハーブはヨーロッパで最初に作られたものだと言われてきたが、実際に開発したのは南カリフォルニアのクレムソン大学の化学者、ジョン・W・ホフマン氏。彼は医療用の目的でマリファナのTHCと同様に脳に作用する物質を作成した。THCとはマリファナのいわゆる「ハイ」な酩酊を作り出す有効成分のこと。
「この薬品は研究用のもので、人間に使用する目的で作られたものではありません。」とラポイント博士は述べる。また、問題をさらに厄介にしているのは、それぞれのハーブにどのようなタイプの化学物質がどれくらい吹きつけられているのかが分からない点だということ。
「あなたはその合法ハーブの製作者がどれくらい、どんな化学物質を使っているのか分からない。つまり、あなたは自分が何を使おうとしているのか、体がどんな反応を示すのかを知ることができないということだ。」とラポイント博士は警告している。
人体での薬効の研究がまだほとんどされていないこと、特に大量摂取、長期間の摂取についてはデータがまだ極めて少ない状態で、実際に何が起こるかは分からないというのが実情。開発者のホフマン氏は合法ハーブの使用者に対して「こんなのやる奴は大馬鹿野郎だ。(People who use it are idiots)」と言っている。
日本でも繁華街などで比較的簡単に購入できるこれら合法ハーブ。安易に使用する前にいったいこれがどのようなものなのか、しっかり考えなくてはならない。(Buzzap!)
参考HP Buzzap! 合法ハーブがマリファナよりも危険であるという理由は? NHK news web 脱法ハーブ健康被害で取り締まり強化へ
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