太陽活動に異変、地球寒冷期の前兆か?
 国立天文台と理化学研究所などの国際チームは4月19日、太陽極域の磁場にこれまでの活動周期とは違った現象が観測されたと発表した。地球に寒冷期が到来する兆候にも似ているという。 太陽には南北両極にプラス極とマイナス極があり、約11年周期で同時に両極の磁場が入れ替わる(反転する)。

 現在の太陽は北極がマイナス極、南極がプラス極となっていて、次回は2013年5月の太陽活動の「極大期」(太陽の黒点数が最大になる時期)と同時に反転すると予測されていた。 ところが今年1月の太陽観測衛星「ひので」の観測で、北極では約1年も早く、反転に向けて磁場がゼロ状態に近くなっていることが分かった。

 しかし、南極では反転の兆しはみられず、依然、プラス極のままだ。その結果、北極と南極がともにプラス極となり、赤道付近に別のマイナス極ができるような、太陽全体の磁場が「4重極構造」になる可能性があるという。

Polar-field-reversal

 太陽活動は極大期と極小期を周期的に繰り返しているが、現在の活動周期は予想以上に長引き、約11年周期が12.6年になっている。今回の磁場観測の結果を含めて、これら太陽活動の異変は、地球が寒冷期となった「マウンダー極小期」(1645-1715年ごろ)や「ダルトン極小期」(1790-1820年ごろ)に似ているという。今後の推移を明らかにするため、国立天文台などは今年10月ごろに太陽の北極域の集中観測を実施する予定だ。(サイエンスポータル)

 太陽観測衛星「ひので」、太陽極域磁場の反転を捉えた
 「ひので」は先代の太陽観測衛星「ようこう」の観測成果をさらに発展させることを目標に開発、2006年9月23日に打上げられた。コロナ加熱問題や、太陽フレアなどコロナ内部における爆発現象の発生過程の解明、特にそれらの太陽磁場の微細構造との関係を詳細に掘り下げて調べることが主な目的である。

 実用的な目的としては、宇宙天気予報の基礎を築くことが挙げられる。フレアによって放出された宇宙プラズマは地球磁気圏との相互作用によって磁気嵐を発生させ、これらが人工衛星の故障や宇宙飛行士の健康被害、無線通信障害、送電線の異常電流などの原因となっている。2004年から2008年にかけて、CAWSESという宇宙天気予報のための国際的な取り組みがなされており、そのなかで当機は特に、フレアの発生を予測できるようになるための基礎研究に役立つと期待されている。

 太陽の極域磁場は、太陽活動の源泉である黒点の源となっていると考えられており、その振る舞いは、今後の太陽活動を予想する上でも大変重要。このため、これまで、地上の太陽望遠鏡により極性の反転が観測されていたが、分解能が足りないため平均的な磁場強度と極性がわかるだけで、太陽極域で何が起きているのかわからなかった。

 2007年9月に行われた、「ひので」衛星可視光・磁場望遠鏡の超高空間分解能と高精度偏光解析能力による観測によって、太陽極域に黒点と同じ磁場強度を持つ斑点状の磁場(大きな斑点状磁場)が存在することが初めて明らかとなった。(参考: 国立天文台プレスリリース『「ひので」衛星、太陽極域に強い磁場を発見!』)

 「ひので」衛星は、その後も極域の観測を、太陽活動の極小期をすぎ太陽活動が上昇しつつある4年間にわたり定期的に行った。その結果、予想される時期より約1年早く、北極磁場がほぼゼロの状態に近づいていることが、2012年1月の観測で発見された。すなわち、北極の磁場を担う斑点状の磁場の数が急速に減少し、低緯度から逆極性の斑点が現れた。この結果、現在太陽の北極域では、逆極性の磁場の大規模な消滅と極性の反転が発生していると考えられる。

 この観測の結果から、太陽の北極磁場がまもなくマイナスからプラスに転じると予想される。一方、驚くべきことに、南極では極性反転の兆候がほとんどみられず、安定してプラス極が維持されていることを、「ひので」は確認している。太陽の磁場は、大局的には双極子構造(例えば、太陽の南極がプラス、北極がマイナスの棒磁石のような構造)をしているが、今回の「ひので」の観測結果から、南北の両方がプラス極になる四重極構造になると想定され、「ひので」の観測データを用いた太陽の磁場構造の把握を数値計算によって行っているところである。(2012年4月19日 国立天文台)

 黒点11年周期とは? 
 太陽黒点数が約 11 年の周期で変動することは良く知られているが、この発見は 19 世紀中期のことで ( シュワーベ )、17 世紀初頭のガリレオによる最初の望遠鏡観測から 200 年以上も後のことである。この遅れの原因は、17 世紀半ばからしばらく、黒点がほとんど見えない時期が続いたためであるが、このことは黒点数の周期性には非常に長い周期のうねりがあることを示している。

 黒点は強い磁場が集中して存在する場所で、内部から伸び出した磁力線の束の切り口を表している。黒点数の周期性は、太陽内部で磁場を維持増幅する機構 ( 太陽大気のような電離気体の運動に伴って磁場を維持増幅する機構は、電流を生み出すため、発電機を意味するダイナモ機構と呼ばれる ) が周期性を生み出していることを意味し、見えない太陽内部大気のダイナモ機構を探る手がかりとして重要である。黒点のある場所では、フレアなどの活動現象が付随して起こるため、黒点数周期は太陽の活動周期とも呼ばれる。黒点数周期は太陽輝度の変化と連動していることがわかり、この長周期変動は地球の長周期気候変動との関連を示唆する。

 黒点数の数値化には伝統的に黒点相対数を用いている。これは、チューリッヒ天文台長ヴォルフによって 1849 年に考案されたもので、 R = k ( 10 g + f ) で表される。ここで、g はチューリッヒ分類法 ( 理科年表 2008 年、天 24 参照 ) により分けられた黒点群の数、f は見える黒点の総数、 k は異なる観測者間の補正係数で、ヴォルフの観測 ( 口径 7.5 cm、倍率 64 倍の眼視観測 ) を k = 1 とするものである。

 ヴォルフは当初黒点の総面積を指標として考えたが、黒点面積の正確な測定は難しいため、簡便な代用としたものである。この定義は物理的な根拠から生まれたものではないが、黒点群に大きな重みを付けた点、活動現象の頻度との関連を暗示させるものがあり、先見の明があったと言えよう。実際、黒点やプラージュ(黒点とは逆に温度の高くなるところ)の総面積、太陽電波の強弱ともよく比例することから、黒点相対数は太陽活動の良い目安として広く用いられている。

 また、プロミネンス、X線強度、コロナ輝線でも 11 年周期が現れる。( http://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/database.html の 5303A コロナ緑色の変化図参照 )。黒点では赤道から中緯度にかけての変化しか分からないが、これらのコロナ現象を用いると、同時に極域まで変化を調べられる。ヴォルフの提唱により黒点相対数の国際共同観測は 1855 年から始まり現在に至っている。現在、黒点相対数の集計はチューリッヒ天文台を離れ、ベルギー王立天文台で行われている。 (理科年表HP)

参考HP サイエンスポータル 太陽活動に異変、地球寒冷化の兆候か? Wikipedia 太陽黒点

太陽と地球のふしぎな関係 (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社
徹底図解太陽のすべて―輝きのメカニズムから、地球環境への影響まで (ニュートンムック Newton別冊)
クリエーター情報なし
ニュートンプレス

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